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マブス専門NBAブログ(不定期)

【24-25 RS-25】ケンリッチ・ウィリアムスの第1Q

 今シーズンのサンダーは歴代最高レベルのディフェンスだという記事をどこかで見ました。DEFレーティング103.4は当然の如くリーグトップで、昨シーズンからなんと7.6も低い数字です。ちなみにDEFレーティング2位のロケッツも昨シーズンより7.4も良くなっているんですが、プレーイン圏外だったチームが成長したロケッツと、そもそも去年カンファレンス1位だったチームでは事情が全く違います。中々に意味が分からない変化だ。

 前回対戦で欠場していたドンチッチ、サンダー側はハーテンシュタインが復帰したということで、より本来のロスター同士の戦いに近い試合になりました。気が早いけどプレーオフ前哨戦とも取れる今回の試合です。

 

■第1Q

 スクリーンに対してブリッツするサンダーに、コーナーへのスキップパスでアンサーするドンチッチ。綺麗なキャッチ&シュートが外れたところを2ndチャンスでカイリーが決めるというスタートです。そこからもブリッツに対しては判断力に優れるドンチッチとライブリーのホットラインで得点を作る良い滑り出し。ドンチッチが最後にここの対応で完敗したのっていつだろう。去年ロケッツに一回やられていたっけ。

 ただスクリーンを使わないと物凄く苦しそうなドンチッチ。ステップバックで打とうとしてウォレスにブロックされます。ドライブに切り替えるけどスピードで振り切れずに中途半端なレイアップ。

 ドンチッチには常にフェイスガードするサンダーディフェンスに、マブスは試合を通して苦しめ続けられました。ステップバックが使えないっていうだけでも痛いのに、駆け引きで抜いてもついてくるとかどうなってんだ。ブリッツを多用していることも含め、ドンチッチにやらせないっていうのが狙いのサンダーでした。

 その分ドライブやビッグのポジション取りのところでインサイドヘルプを必ず用意していたサンダーなので、コーナーへの展開は出来ていました。そこから先はウィング次第ってところで、クレイと復帰したナジの踏ん張りどころ。

 対するサンダーのオフェンスは、ハーテンシュタインがいることでビッグをハイポストに置いた形から展開するプレーが増えました。ハーテンシュタインのショートレンジをどこまで信用して良いのかは分からないけど、ハンドラー(それもほぼSGA)のドライブアタックしか起点がなかった昨シーズンとは違うという事を示しています。まあ途中からハイポストでプレーを作るってより、ただのスクリーナーになってはいたけど。でもちゃんと剥がしてくれるスクリーナーがいるっていうのは大事。

 で、意外だったのはSGAのスリー。日本語解説の話で初めて知ったんだけど、今シーズンのSGAはめちゃくちゃスリーを打っているらしい。前回のマブス戦は1本しか打ってなかったぞ。

 確率は2.0/6.1の32.6%と全然良くはないんですが、守る方からすればめんどくさそうに見えました。今まではある程度引いて守っていても「どうせドライブしてくるんでしょ」って読めたけどさ。まあそれが分かっていても止められないってのはありつつ、これが「ドライブするかも読めない」ってなると相当面倒だよね。ちなみに今日は5/9で決めています。なんやねん。本数も確率も。

 

 サンダーがブリッツしてくれる分にはライブリーのショートロールもアウトサイドも活きたマブス。しかしブリッツを止めてドートのチェイスに託すディフェンスになると、途端に苦しくなります。ライブリーとグライムズの二人で剥がそうとすると、グライムズがイリーガルスクリーンでターンオーバー。ライブリーのスクリーンが、まるで何もないかのように躱される。

 ということで早々にギャフォードが投入されました。ドートにマークされたドンチッチがクレイ&ギャフォードの絡みにパスを捌き、どちらもシュートが決まったので再びオフェンスが機能します。ディフェンス面を除けば相性の良いトリオ。

 この試合は、意外とこの三人のボロが出ませんでした。それはギャフォードをあーだこーだするまでもなくディフェンスを崩せるし、SGAは決められるしって部分もあり、ドンチッチがインサイドヘルプを頑張っていたからでもあります。まあ頑張るとキックアウトを追いかけられないんだけど、そこは割り切るしかないよね。ドンチッチにはインサイドヘルプ→キックアウトへのスティールでどうにかして欲しい部分です。

 インサイドヘルプのところで言うと、カイリーが非常に秀逸なディフェンスを見せていました。カイリーがチャージドローを狙ってコースに入ると真っすぐリムアタック出来なくなったカルーソは歩幅が狂い、苦しくなったところをブロックします。ブランソンやTHJといった、かつてマブスにいたチャージドロー職人のディフェンスの良さって中々言葉では語りにくいんだけど、これを見たらその有効性が一目で理解出来そうな、教科書的なプレーだったと思います。あんまり試合とは関係ない話。

 ドンチッチのブリッツ対応、ライブリーの弱すぎるスクリーン、意外とボロが出ないギャフォード、それにハーテンシュタインやSGAと語りたくなる部分が色々ある第1Q。色々あるのに、最後にその全てを掻っ攫ってしまったのがケンリッチ・ウィリアムスでした。あんなに濃密な12分だったのに、もう悲しいぐらいにケンリッチのことしか思い出せない。そのぐらい、あらゆるところに顔を出しまくっていたケニー・ハッスル。

 

■どこにでもいる男

 ハーテンシュタインの代わりに投入されたケンリッチは、空いたスペースに動いてパスを呼ぶとSGAにスキップパスを出させてカルーソにスリーを打たせます。スリーを打ったらすかさずOREBに飛び込みボールを確保すると、SGAに預けてスクリーンに行き、スクリーナーとして空いたスペースをまた埋めます。今度はケンリッチにボールが渡り、そうすると中継役として見事にトップのカルーソへと捌きました。そして外すカルーソ。決めろよ、と思ったらまたロングリバウンドに絡みに行きます。ウォレスが取って、最終的にSGAがシュートを沈めました。これがワンプレーの密度かよ。

 ドンチッチ対SGAのアイソになると、インサイドヘルプで潰そうと近寄るケンリッチ。そこをドンチッチがギャフォードに捌いてダンク……は出来なかったけどファウルになりました。ここはドンチッチがよく見ていたシーン。更にドンチッチはミスマッチを作ってライブリーへのロブパスを見せたりなんかして。ここもドンチッチよりサイズがありながらフェイスガードでついて行けるケンリッチのディフェンスの良さが伺え、その上を行ったドンチッチという高度なやり合いが見られます。

 そしてトランジションからドンチッチがノールックでライブリーへパスをする場面。完全に見ていなかったライブリーなので、ターンオーバーになってしまいます。日本語解説だと「ドンチッチに合わせるのは難しい」みたいなことを言っていたけど、ライブリーがこのシチュエーションでパスを取る準備が出来ていないって珍しいんだよね。ノールックで来たパスをキャッチするなんて今まで何度もしてきているし、ましてトランジションで先陣切って走っているわけだから「ボールを貰える状況じゃない」なんて本来あってはならない、というか「だったら何の為に走ってんだ?」ってなるよね。そんな不思議なシーンでした。そしてそのライブリーの裏には、ぴったりと張り付くケンリッチが。

 カルーソのOREBからスリーを沈めると、続くディフェンスでペイントエリア内を忙しなくうろうろするケンリッチ。どんだけ動くんだよってぐらいドライブコースとライブリーの間を行ったり来たりして、コーナーのクレイのドライブコースを潰しに行こうと飛び出しました。あんだけヘルプポジションに動いて、更にライブリーのカバーまでしようと思っていたのかよ。

 ライブリーのスクリーンにショーディフェンスするケンリッチ、スリップするライブリーにボールが渡ると、すぐさまペイントエリアに戻ります。ライブリーがウィングへパス→コーナーへのエクストラパスという鉄板ムーブを見せますが、コーナーのディンウィディーへのクローズアウトが早かったジョー、スリーを外させます。

 ここのショーディフェンス→ライブリーのマークに戻るケンリッチの早さがあったから、ジョーが本来のマークであるコーナーへ素早くクローズアウト出来たんだよね。ショーディフェンスはプレッシャーの掛け方と戻りの早さが肝だと思っていますが、そのどちらの面を取っても素晴らしかったケンリッチのディフェンスでした。ギャフォードがこのぐらい動けたらショーディフェンスも有効なんだけどね。マブスだと現状そこはパウエルの専売特許になっています。

 リバウンドからこぼれ球を確保してのSGAへのアウトレットパスも出たぞ。コーナーからナジが仕掛けるとヘルプポジションを取ってゴール下に入れさせなかったぞ。タフなフローターを決めたナジは偉い。

 早い展開からトップでボールを貰い、エクストラパスで下がり気味に守りたいライブリーのいるウィングに繋げるケンリッチ。カルーソがようやくスリーを決めます。ライブリーへのボックスアウト、トランジションからジョーのスリーへのスクリーンアシストと常に仕事をしながら、1Q終盤に差し掛かったところでビッグプレーを残します。

 ジョーの外れたスリーを拾ったドンチッチが、ライブリーへアウトレットパスを捌くシーン。今度はノールックを取れなかった時とは違い、完全にライブリーが先頭を走っています。ノードリブルでダンクまで行ける距離に捌かれたパスは、爆速で駆けつけるケンリッチが触ったことで防がれてしまいました。これはたまげたね。再びサンダーオフェンスになったところでSGAがスリーを打ち、そのOREBに参加するケンリッチ。君、思いっきり倒れてたよね。

 残り20秒のところから展開されたマブスオフェンスは、コーナーのO-MAXからの仕掛け。思ったより鋭いカウンタードライブを見せたO-MAXでしたが、目の前にいたのはケンリッチ。オフェンスチャージを取られ……たかと思ったらSGAがファウルしたらしい。真正面に立っていたから、SGAが余計なことしなければ確実にターンオーバーだっただろうね。ともあれ2点を守り切ったケンリッチでした。

第1Qケンリッチ

3PTS 1REB 1AST 2STL

 たった4分の出場で2STLを記録したケンリッチ。うち一つはこぼれ球を拾ったところなので何とも言えませんが、ノールックパスのミス、更に最後のオフェンスチャージを加味したとすれば、最低でも3つはこの人のところからターンオーバーを誘われたマブスでした。

 画面のあらゆるところにケンリッチがいるもんだから、なんかもうケンリッチしか試合に出てないんじゃないかと思ってしまいそうでした。ケニー・ハッスルの名の通り、速攻にリバウンドにとあらゆる場面でハッスルしまくっていたケンリッチ。ひとつひとつは、まあ大したことないとは言わないけど、どんな選手だって試合のどこかで絶対に絡むプレーです。ただこれらを毎ポゼッション続けられるっていうのが凄いよね。

 彼のプレーの中には誰にも出来ないプレーはなく、スター選手と呼べる要素はないけど、その代わりに誰よりも頑張れる。NBAに限らずGリーグや海外リーグなんかにもいそうな、言ってしまえばどこにでもいそうなプレーをする選手だけど、それを武器としてNBAレベルで戦える選手は中々いないぜ。そんなコートのどこにでも顔を出すケンリッチの話でした。

 去年のプレーオフでも思ったけど、サンダーはなんでもっとケンリッチを使わないのかね。正直ケンリッチに比べたら、ハーテンシュタインなんて全然良くないのに。