「マブスオフェンスの改善点」の続きです。まずは今シーズンのマブスに起こったオフェンスの変化を見ていきましょう。ちなみに基本的に比較は21-22シーズンとしていきます。去年と比較してもいいんだけど、メンバーが入れ替わり過ぎているからちょっと難しい部分があります。
■ファストブレイクポイントの増加
21-22シーズンFBP 10.0(リーグ28位)
23-24シーズンFBP 15.1(リーグ8位)
そもそも全然ファストブレイクを狙わなかった21-22シーズン。ウェストのプレーオフチームと比べると圧倒的に低いです。唯一ジャズは10.1でほぼ一緒。リーグ全体の傾向と逆行しています。ちなみに22-23シーズンは11.0とやや増えましたがリーグ29位です。そこから一気に割合を増やした今シーズン、ウェストでは4番目にファストブレイクで得点しています。当然ですがペースも95.64から100.83と大幅増、リーグ最下位から9位まで上げました。
ペースを上げることがリーグのトレンドになっている昨今ですが、それにはメリットもデメリットもあります。メリットはディフェンスがセットする前にシュートに行きやすくなる、つまりハーフコートオフェンスに比べてフリーになりやすいってこと。だから得点の底上げを狙うならペースアップっていうのは単純且つ効果的です。デメリットは相手もファストブレイクを狙いやすいってこと。ファストブレイクで得点した直後はオフェンス側の選手が相手コート側にいることが多いので、戻りを早くしなければ同じことをされてしまいます。だからファストブレイクでの得点は走り合いのきっかけになることが多いです。
ペースアップ=得点も失点も増えやすい
21-22シーズンのマブスが徹底して遅いペースでプレーしていた理由は主に二つ。一つがペースアップによる失点を防ぐ為っていうと、もう一つが走り合いになると単純に疲れるからです。もしもマブスのペースが早かったら、ブロックのフル出場なんて絶対に出来ませんでした。また、こういう事情から若くて体力のある選手が多いチームはペースが速いバスケになりがちです。だから、
ペースアップ=正解ではない
あくまでそれぞれのチーム事情に合わせたペースが重要ってことです。実際22-23シーズンに優勝したナゲッツの当時のペースは98.74でリーグ24位でした。そこでマブスにとってこのペースアップが正解かと言われると、管理人は正解だと思います。思いますが、
21-22シーズンFBP失点 12.0(リーグ12位)
23-24シーズンFBP失点 16.8(リーグ27位)
ファストブレイクの得点が増えた代わりに、当然失点も増えました。上昇した得点と失点を差し引くと+0.3なので、こう見ると本当に正解なのかなって感じです。
■ドンチッチの話
21-22オンコート/オフコートのFBP 6.4/5.0
23-24オンコート/オンコートのFBP 11.2/5.6
分かりやすくドンチッチがいる時間のFBPが4.8点も増えたマブス。比較するとほぼ80%、つまり2倍近く増えています。かなり劇的な変化だ。
21-22ドンチッチのFBP 1.1
23-24ドンチッチのFBP 3.0
個人で見ればほぼ3倍に増えています。しかし実際に増えた得点は1.9点、4.8点と比較すると大体40%なので、イコールFBPが増えた要因の40%がドンチッチ自身の得点、残る60%は他のチームメイトの得点ってことです。
■でもねー
今でこそペースアップに肯定的な管理人ですが、初めて「マブスのペース上がってるよ!」っていうネットの記事を見た時は否定的でした。というのも、ペースが上がったらドンチッチが疲れるじゃんって思ったからです。
ただでさえオフェンスの負担が大きいドンチッチなので、ディフェンスではいつもコーナーというかゴール下というかって感じの場所でサボっています。そうしないと今のオフェンスの質は保てなさそう。昨シーズンからそんな状態なのに、そこから更にペースを上げたらドンチッチが本来得意とするハーフコートのオフェンスの質がガクッと下がるんじゃないかと思うわけです。あと、そもそも走り回るのがめちゃくちゃ嫌そうなドンチッチ。よくファウルが貰えなかった時に審判に抗議する彼ですが、ただ走りたくないことの言い訳じゃないのかと管理人は思っています。
そんな理由でペースを上げることには否定的でしたが、面白い数字を見つけました。それはドンチッチの平均移動速度です。
21-22オフェンス時平均速度 4.20
23-24オフェンス時平均速度 4.17
なんとペースは上がったのに、オフェンス時の平均移動速度は下がっています。ちなみに4.17という移動速度はとんでもなく遅いです。まともに出場している選手でフィルターすると、ドンチッチより遅い、というか動かない選手は大半がセンターとなり、ガードの選手はほぼいません。コーナーシューターと言われている選手より動かないとはね、と思ったらグラントとKCPが出てきた。というわけで、
ドンチッチの負担を増やさずにFBP増加に成功
言い換えればドンチッチの負担を増やさずに得点力を上げたってことです。
今シーズンのドンチッチは、ヨキッチのように華麗なタッチダウンパスを捌くシーンが増えましたが、ファストブレイクの時にいつもそういったパスをしているわけではありません。ターンオーバーになりやすいしね。通ればいいんだけど。
リバウンドを確保したドンチッチは今まで自分でハーフコートに運ぶことが多かったんですが、今シーズンは他の選手にボールを任せることが多いです。大体はカイリー、THJ、エクサム、ハーディ。それらの選手がドンチッチを置き去りにして速攻の起点になるわけです。ちなみにJGはあっという間にコーナーまで走っちゃうのでタッチダウンパス以外では直接渡せません。
■結論
ペースアップによって得点力が上がったマブス。このペースアップがポジティブな変化かと言われると、管理人はそうだと思いますが、見方によっては微妙です。
21-22マブスのFB得点/失点 10.0/12.0
23-24マブスのFB得点/失点 15.1/16.8
21-22シーズンのファストブレイクでの得失点差が-2.0、今シーズンは-1.7。得点アップの影響で得失点差で見るとやや改善していますが、依然としてマイナスです。少なくともペースアップしたから勝てるってわけではありません。ただドンチッチ以外の選手のオフェンスパターンを増やすという点では、見事に成功しています。これが、管理人がペースアップをポジティブに見ている理由です。
とはいえドンチッチの移動速度が下がった要因は、他の選手のFBPが増加しただけではありません。実際ドンチッチ自身のFBPも増えているんだから、少なくとも21-22シーズンに比べると確実にファストブレイクで走っています。つまり今シーズンのドンチッチは、以前よりファストブレイクで走っている分だけ他のプレーでサボっているわけです。じゃあどこでサボっているのか、それが次の記事のテーマになります。
ちなみにって話ですが、4.20から4.17に下がった要因のひとつにプレータイム増っていうのがあります。だから実際には去年とそんなに変わっていない。でも重要なのは得点が増えたのに、ドンチッチの負担は増えてないってことです。