あ♥@マブスファン

マブス専門NBAブログ(不定期)

【23-24 RS-55】キャブス戦雑感

 

 キャブスといえばドノバン・ミッチェルのチームーーではなく管理人的にはクレイグ・ポーター・ジュニアのチームなんですが、その彼がGリーグに送られた今日の試合。前回対戦でミッチェルに加えてダリアス・ガーランドも欠場しており、その穴を埋めていたルーキーなんですが、それが見られないっていうのはちょっと残念です。そして今日もエクサムは欠場。一体復帰はいつになるのやら。

 

■前半

 第1Qからお互いに苦しいオフェンスから始まります。個人のディフェンス力が高いキャブスなのでオーバーヘルプはしてくれない。こう書くと前回のペイサーズと一緒なんだけど、スクリーンを使えば普通にスイッチしてくれます。ただドンチッチ対ジャレット・アレンとかでもしっかり守ってくるので、やっぱり個人のディフェンスで解決している雰囲気です。

第1Qマブス FG 10/23(43.5%) 3P 1/5(20.0%)

 成功率よりもそもそもスリーを打てていないことが気になります。これはやっぱりオーバーヘルプしてくれないって部分が効いているんだろうね。

第1Qキャブス FG 9/24(37.5%) 3P 4/12(33.3%)

 一方でマブス以上にオフェンスで苦しんでいたキャブス。インサイドを固く守るライブリーのおかげで2Pは効果的に守れたマブスですが、いつも通りキャブスにスリーを打たせます。そしてキャブスはきっちりスリーを打つけど思ったように入らないっていうね。まあこれはどのチームでも起こりうる話なんですが、

第1Qスコア 24対23(マブス1点リード)

 結果としてはほぼ同点。苦しいオフェンスの中で、それ以上に苦しそうだったキャブスオフェンスに救われたのがマブスだとしたら、苦しい中でディフェンスで耐えきったのがキャブスでした。そしてその努力は第2Qに報われます。

第2Qキャブス FG 11/15(73.3%) 3P 7/10(70.0%)

 打ちまくっていたスリーが入りまくって、最大15点差のリードになりました。まあでも、さすがに入り過ぎだ。最初はマブスのディフェンスの悪さからスリーを打たせてしまっていたんですが、最終的にトランジションから目の前にディフェンスがいようが関係なくプルアップで打って沈めていきました。ここまで来るとどうしようもない。ということで、センターをクリバーにしてアウトサイドに対して強く守るようにしたマブス。で、これが機能したことで傷口を塞いでいきました。

前半スコア 56対60(キャブス4点リード)

 塞ぐどころか15点差から4点差まで追いつきました。

第2Qマブス FG 11/22(50.0%) 3P 6/11(54.5%)

 第1Qはドンチッチ、第2Qの頭はカイリーの個人技アタック中心となったことでよりインサイドに収縮したがったキャブス。これによってオープンスリーが打てて決められたことが一つの要因です。そしてオフェンス面でもスリーを打ちづらくなったこと、センターがクリバーになったことでアレンのゴール下を得点源にしようとしたキャブス。結果的にペースが落ちて、第2Q前半のようにリズムよくスリーが打てなくなり停滞しました。ということで分かりやすくクリバーとペースコントロールで点差を縮めたマブスと、自分を見失ったようなキャブスでした。

 

■後半

 スリー連打が上手く行かなくなったことで、第1Qの戦い方に立ち返ったキャブス。エバン・モーブリーがプレーメイクに関わるんですが、こっちの方が見ていて面白い。モーブリーがスクリーンからダイブしてボールを貰うと、シューターだったりゴール下のアレンだったりにパスを回し、時に自分でシュートを打ちました。

 ただここの連携を消しまくったドンチッチ。身体能力的にゴール下のアレンを止めるのは厳しいものの、自身のフィニッシュ力を信じていないせいかパスをしたがるモーブリーに、読みの良いパスカットが効きました。ということでまた苦しくなったキャブス。そうなるとミッチェル頼りの傾向が強くなっていきます。

ドノバン・ミッチェル 31PTS 7REB 6AST 7TO

 3P 7/11で63.6%と決めまくったミッチェル。プルアップでガンガン決めてくるので、やはりスコアラーとしての能力は疑いようがありません。ただ7TOでいうのがね。第4Qが特にミッチェル依存が酷く、オフェンスはお手上げ状態だったJBビッカースタッフでした。眠くてしょうがなかった。

 試合全体を通して引き出しの少なさを感じたビッカースタッフ。前回の相手がペイサーズだったからっていうのもあって余計にそう感じたのかもしれません。第2Qに最大リードを広げてから、その点差を維持するようなオフェンスを先んじて打てず、あっという間に点差を詰められたところもそうだし、第3Qにモーブリーをポイントセンターにしたオフェンスが上手くいかないとすぐミッチェルに頼り出すし。ミッチェルはターンオーバーするし。

 一方でシューターには徹底してスリーを打たせたり、トランジションのポジショニングは適切だったり、モーブリーのボールの貰い方も非常にスムーズだったりと、意外と細かいところがしっかりしているのが面白い。引き出しは少ないものの、それぞれに再現性をしっかり追及していることが伺えます。ただミッチェルが絡んだオフェンスになると、そのディティールの部分がどうもテキトーに感じます。それがミッチェルの7TOに繋がっているようにも思うわけで、

エースとHCの相性が悪い

 こう見えるわけです。ただ面白いのが、ミッチェルはジャズ時代にこういう細かい部分に対応出来るPGっぷりがあったってことです。そしてオフェンスを作り込むことはそれなりにしているビッカースタッフなので、普通に考えれば相性が良さそうなんだよね。ミッチェルのこととなると盲信してしまうビッカースタッフなのか、あるいはそういう細かいプレーが嫌いなミッチェルなのか。

 采配の悪さから接戦に持ち込んでしまったように見えるキャブスでしたが、その悪さは既に第2Q後半から表れており、ぶっちゃけマックス・ストゥルースが捻じ込んでくれなきゃ第4Q後半は丸々ガベージタイムでおかしくないような内容でした。

マックス・ストゥルース 21PTS 4REB 4AST

 第3Qまで影が薄かったものの第4Qに大爆発。最終盤の大接戦時にインバウンズパスを取りこぼしてしまうという、チームの致命的なミスを演出に使いました。ストゥルースが決めなかったらどうしてたんだって感じなんですが、それまであまり入っていなかった彼を起用したってことは、やっぱりビッカースタッフの采配勝ちなのか?

 第4QのFG5本全てがスリー、それをパーフェクトで決めたストゥルース。その割にシーズンの3P%は33.3%なんだね。そういやヒートでも安定して決めるっていうよりはたまーに大爆発するシューターって感じだったのを思い出しました。今日の試合を直接勝利に導いた選手なので、文句なしの活躍と言えるでしょう。ギリギリファウルされてるんじゃね? ってぐらいにクローズアウトされても決めていたしね。

アイザック・オコロ 9PTS 6REB 5AST

 何気に活躍していたオコロ。エースキラーディフェンダーとして強力なものの、シュート力に難がありスペーシングの管理が難しく、差し引きで若干マイナス寄りな選手だと思っていましたが、今日は2/4でスリーを決めています。実は今シーズン3P 39.1%とのこと。偉いな。これだけ入ると寧ろ使い勝手の良い選手に思えてきます。

ドンチッチ 45PTS 9REB 14AST 3STL 1TO

カイリー 30PTS 6REB 3AST 3TO

 ペイサーズ同様個人で守りきりたい様子のキャブスディフェンスだったので、やはりアテンプトはハンドラーに偏りました。ただペイサーズとはレベルの違うディフェンダー相手にドンチッチは58.6%、カイリーは50.0%の確率でシュートを沈めました。その上でドンチッチはインサイドの連携を上手く止めていたので、これがキャブスオフェンスが停滞した要因にもなっています。5STLぐらいしたのかと思っていたけど、思ったより少ないな。

 カイリーの3TOも責めるほどでは全然ないよね。そもそもチームとして今日は5TOとびっくりするぐらい少なかったし、エース二人で75点取って、その上でまだ何かを求めるっていうのもちょっと違う気がします。

PJワシントン 11PTS 2REB 2AST 3STL 1BLK

 オールラウンドに活躍した今日のPJ。FG 5/8で62.5%、2Pは4/5で80.0%と非常に効率良く点を取っています。トレード後から一貫してPJにはスクリーンからのスリップアクションをさせたがるキッドですが、今日は迷いなくシュートに行くシーンが多かったし、キックアウトパスを捌くシーンもありました。まんまモーブリー、もっと言えばパウエルやドードーと同じプレー。これをグラントにもさせていたわけですが、スクリーンからの動きはPJの方が良いものの、スリーの精度ではグラントが圧倒しているので……どうなんだろうね。ディフェンスはPJの方が良い。というかこの試合を見たら、ますますペイサーズ戦であんな情けなかったのか分からない。

 

 論理的に崩すよりもゴリ押しで戦い続けたキャブス。ドンチッチやセンターを引き出したりも特にせずに突っ込んでくるので、マブスディフェンスの良い部分が目立ちました。みんながキャブスみたいなオフェンスをしてくれれば苦労はないんだけどね。

 そしてクレイグ・ポーター・ジュニアがいた前回対戦では彼とジョージ・ニヤング、ディーン・ウェイドあたりが絡む面白いバスケをしていたので、今日のオフェンス展開を見て余計にCPJが恋しくなります。ニヤングは今日も活躍していたけど、別にニヤングじゃなくていい感あったし。早く戻ってきてくれ、CPJ。

【23-24 RS-54】ペイサーズ戦雑感続き

 

■第2Q

 第1Qと同じラインナップを継続するペイサーズに対して、マブスはドンチッチ、ハーディ、JG、クリバー、ライブリーのラインナップに変更します。ドンチッチにはルーキーのベン・シェパードをつけるカーライル。

 最初のプレーでライブリーとドンチッチのP&Rを仕掛けます。するとシェパードは割とあっさり剥がれてくれますが、ペイサーズのヘルプディフェンスでゴール下までは侵入させてくれません。どう考えてもリーグ最低レベルのディフェンスチームとは思えない連携を見せるペイサーズ。ドンチッチがミドルを外すとP&Rでマッコネルがライブリーを狙い、ミドルを決めました。

 11:10あたりのポゼッション。再びP&Rを仕掛けるマッコネルに対して、クリバーがファウルしないようにプレッシャーを掛けます。苦しくなったマッコネルがジェイレンにパスしたところをライブリーがスティール、速攻でファウルされますがトランジションテイクファウルにはならず。

 続くポゼッションでP&Rを仕掛けるドンチッチ。ライブリーがシェパードを剥がしてミスマッチになりましたがここをファウルで止めます。大胆にシェパードの方にぶつかりにいったライブリーだったのでイリーガルスクリーンをコールされると思いましたがそこでは吹かれませんでした。このプレーに限らず、全体的にスクリーンの部分はかなり判定が緩い審判。ペイサーズのホームだからか?

 ただシェパードもスクリーンに対してがむしゃらに追うので無力化するには至らないマブス。ということで次は彼に対してJGとライブリーの2枚スクリーンで剥がしにいこうとしました。これでようやく剥がれてくれて、ライブリーにダグ・マクダーモットがつく形になったところでロブパスを選択。これをシェパードと二人でコンテストして、止めるペイサーズでした。ペイサーズのディフェンスに対応出来ていたんですが、その先の展開まできっちり用意しています。そして10:00からのポゼッションでJGのスクリーンがオフェンスファウルに。ずっと怪しいスクリーンを掛け続けていたので、ペイサーズファンとしてはようやく吹かれたかって感じだろうね。

 タイムアウト明け、ターナーを戻したペイサーズ。そのターナーを活かすようにインサイドのポジションチェンジを促しまくったマッコネルでしたがライブリーが留まり続けます。そしてトッピンがよく分からないパスを出してライブリーがスティール。普段はこれで空けてくれるってことなのか? いずれにせよトッピンがスタメンに置かれない理由をちょっと垣間見れたポゼッションでした。

 ライブリーをギャフォードに変えたマブス。それに対してペイサーズハリバートンネムハード、ターナーを戻しました。するとまたネムハードがドンチッチを見ます。嫌になるね。ただここでギャフォードのスクリーンが比較的有効に効くので、ネムハードに後手を踏ませて1on1で点を取るドンチッチ。でもやっぱりミスマッチを作らせてはくれないので、ここからマブスはドンチッチ以外のところで仕掛ける作戦に出ます。カワイソレーション。

 その最初のポゼッションはハーディとギャフォードのP&R。ハーディについてるマクダーモットを剥がしてターナーのミスマッチを狙うわけですが、ここをあっさり対応するマクダーモット。いやネムハードにも効いたのに、なんでマクダーモットには効かないんだよ。ということでここはハーディのハンドラーとしての質が明確に出たプレーでした。決めたけどね。そしてギャフォードになったことで、オフェンスでは積極的にリムアタックを狙うようになったターナー。まあこれがライブリーとギャフォードの差って感じです。

 マブスはスタメンを全員戻し、ペイサーズはマクダーモット→マサリンに戻しました。スタメン+シアカムがトッピンのペイサーズ。そしてマサリンが戻るとドンチッチ対マサリン、カイリー対ネムハードにマッチアップを変更しました。カイリーにどうにかして欲しいキッドに対してのアンサーというわけです。先手を取り過ぎだ。

 ただマブスとしてはスクリーン対応の上手いこの二人を避けてプレーを作っていきます。トッピンのスクリーン対応の悪さをついてPJがスリーを打ちますがトランジションで豪快なダンク。ターナーもよく走るな。続いてJGもボールをスティールされると、全然上手く行かなかったのでドンチッチが個人技で解決しようとします。

 ギャフォードのスクリーンで一瞬剥がれたと思っても、すぐに追いついてくるマサリン。レベルは違うけど、マティス・サイブルっぽい。というわけで一度のスクリーンじゃ剥がれてくれないので、繰り返しギャフォードがマサリンを止めて、プルアップスリーにこぎつけたドンチッチ。これを外しますがJGがOREBを確保します。これによりディフェンスが一度乱れた状態から始まったので、今度はギャフォードの一回のスクリーンで剥がれてくれたマサリンでした。ということでミスマッチになったギャフォードにパスを出しますが、パスが短かった。ただシューティングファウルになります。

 そこからドンチッチが下がった時間がありましたが、これが割と上手く行きます。完全にカイリーの個人技頼りのオフェンス。ギャフォードがスクリーンに行こうが、ネムハードが奮闘しようが構わずシュートを打って決めます。そしてここがペイサーズのディフェンスの悪さを象徴するようなシーンでもありました。

個人で守れるディフェンダーがいない

 スクリーン対応、ヘルプ&ローテ、トランジションディフェンスとチームディフェンスはきっちりしているのに守れないっていうのは、単純に個人のディフェンス力の問題に思えます。チームディフェンスのレベルは高いけど、極端に個人レベルのディフェンス力が足りない。まあその分オフェンスに力を入れているから勝っているわけで、優勝するには中々難しい取捨選択が必要になりそうです。

 で、ドンチッチが戻ってギャフォード→クリバーをセンターにすると、カイリーの個人技ではなくミスマッチを突くオフェンスに戻すマブス。ウィングにボールを任せるドンチッチですが、PJがハンドリングミスしたり、THJがプッシュショットを外したり、その度にファストブレイクで点を取られて散々な結果でした。ということでドンチッチの個人技頼りに……と思ったらこれを継続します。

 ギャフォードがクリバーになったことでP&P主体になるわけですが、ここの対応に手こずるペイサーズ。今までは頑張ってオーバーで追いかければよかったわけですが、その前にロールするのかポップするのか判断が必要になったことで、クリバーのスクリーンに引っ掛かり始めます。そしてスクリーンの対応が遅れるとヘルプしてくれるペイサーズなのでパスがまた回り始めるんですが、ここでシュートを落とすチームメイト。

47対51(ペイサーズ4点リード)

 ドンチッチがいる時はこうなって、

55対60(ペイサーズ5点リード)

 カイリーに任せていた時はこうなって、

60対67(ペイサーズ7点リード)

 ドンチッチを戻したら最終的にこうなりました。ぶっちゃけカイリー個人技の時間をもっと伸ばしていれば逆転出来ていたような気はするんですが、脳筋と論理のうち後者を選んだキッド。その結果点差を離されたわけですが、まあそうしないとチームって成長しないしね。

 

■第3Q

 前半から引き続きハンドラーにはネムハードをつけたがるペイサーズと、どうにかしてネムハードを剥がしてミスマッチにさせたいマブス。ここをマブスは戦術と力技で解決していきました。カイリーについているネムハードをライブリーとJGのスクリーンで、カイリー対ハリバートンにずらすとミドルを打つカイリー。これを外します。

 実はハリバートンもスクリーン対応が上手い。上手いといってもネムハードみたいに隙間に潜り込んだり、マサリンみたいに引っ掛かった後に追いつくスピードがあったりするわけではありません。普通にスクリーンには引っ掛かるし、そこから正面に立つことも出来てはいませんでした。ただスクリーンで剥がされた後、シュートに対してチェックに行くのが上手く、ファウルしないようにハンドラーと適度に距離を取りながら、シュートを打つ寸前で手を伸ばしていきます。

三者三様のスクリーン対応

 これが見ていて非常に面白いです。ネムハード&マサリンはハンドラーに自由を与えないように守るのに対し、ハリバートンは割と自由にさせているけどシュートに必ずチェックに行って、外させる守り方をしています。

 ハリバートンディフェンダーとしても優れていますが、アグレッシブに守り過ぎるとファウルトラブルになってしまうリスクもあります。だからそのリスクを考えてディフェンダーと適度に距離を取ることは正しいし、かといってウィングスパンが長く普通にシュートに行くと触られるっていうね。オフェンスとディフェンスを天秤に掛けた賢いファウルマネジメントだと思います。

 ということでハリバートンを狙うのもそれほど有効ではないので、やっぱりズレを作りたいマブス。10:00あたりのポゼッションでPJがシアカムの腕を掴んでネムハードにぶつけに行きます。シアカムの体がネムハードに当たり、一瞬出遅れたところをカイリーがプルアップで打ち、スリーを沈めます。これが力技の部分。これでオフェンスファウル取られないんだから少々めちゃくちゃしても吹かれない今日の試合。

 08:50のポゼッション。ドンチッチとカイリーが同時に出ていることでドンチッチ対マサリンの形が多いペイサーズに対して、P&Rを仕掛けます。最初のスクリーンには上手く対応したマサリンでしたが、もう一度掛け直すと剥がれてくれてターナーとのミスマッチに。ドンチッチがファウルドローします。08:28のところでもう一度同じプレーが起こりますが、今度は一発でマサリンを剥がしたライブリー。再びのミスマッチで過剰に反応したペイサーズの隙を見て、コーナーのカイリーにパスを捌きスリーを沈めました。

 第1Qはここを躱しまくったマサリンでしたが、ライブリーはスクリーンの掛け方を修正しています。ポイントは足幅を広くしてよりマサリンが引っ掛かりやすくなったっていうのが一つ。そしてもう一つ、分かりやすくマサリンに体を寄せに行っているってことです。今日の審判の緩さを見て、ハーフタイムにもっとぶつかりに行っていいって言われたんだろうね。ということで第1Qはマサリンを剥がせなかったライブリーが、第3Qに剥がせるようになりました。これならディフェンス力の違いからギャフォードを出す意味がなくなるんですが、ペイサーズはそのライブリーのディフェンスを突いて行きます。

 ターナーのポップアクションを増やしたことでライブリーを引き出し、手薄になったインサイドを攻めるペイサーズ。そうするとライブリーの代わりにPJがインサイド担当になるんですが、ここの連携が悪かった。

75対82(ペイサーズ7点リード)

 ライブリーを起点にオフェンスでアジャストしたのに、点差は縮まりませんでした。ミスマッチを作ることが出来た反面、守れなくなるっていうね。ザ・チェスマッチって感じです。というわけで比較的スイッチ気味に守れるギャフォードに変更されます。

 ギャフォードになるとさすがにマサリンじゃ引っかかってしまうと感じたのか、すぐさまドンチッチ対ネムハードにマッチアップ変更するペイサーズ。そしてギャフォードのスクリーンには一瞬引っかかるネムハードなので、ミスマッチからロブパスが成立、ただここはターナーとシアカムのサイズで解決させました。ただOREBからJGのコーナースリーが決まります。

 05:10あたりのポゼッション。カイリーの代わりに入ったTHJがギャフォードを使ってネムハードを引き剥がしてパスを出しますが、これがズレてターンオーバーに。第2Qにドンチッチが出したところと同じ場所にパスを出したTHJでした。03:17のところでもパスミス

81対89(ペイサーズ8点リード)

 スクリーンを使ってミスマッチを作るところまでは上手く行っていますが、その後の凡ミスが多かったマブス。03:17のところだけは何の関係もないミスですが、オフェンスでもディフェンスでもコミュニケーションがまだ取れていない感が強いです。これをプレーオフでやられるとガッカリするんですが、そうならない為にレギュラーシーズンで試しているってことだ。

 第3Qの残り時間はマッコネルを投入し、ギャフォードを狙う作戦に出たペイサーズ。ギャフォードを引き出した後、マサリンネムハードにプレーを促すわけですが、それとは関係なくプルアップでスリーを沈めるマサリンでした。しかし面白いのが、マサリン対ギャフォードの1on1だとやられまくるところ。VSセンターだと頼りないギャフォードですが、一方でフォワードのマサリンを止めまくりました。ホームズっぽい。ホームズほど横の動きが早いわけじゃないのにね。一方でネムハードにはやられるギャフォード。何でも出来るな。

91対100(ペイサーズ9点リード)

 第3Qの最終的なスコアはこれ。結果として点差は離れましたが、ここはギャフォード相手に淡々と決めきったネムハードの良さが際立ちました。あとマッコネルのゲームメイクね。

 

■第4Q

 このまま点差が離れるとガベージに突入してしまうマブス。ということでドンチッチを下げて、カイリーにオフェンスを任せました。

100対104(ペイサーズ4点リード)

 ペイサーズを攻略するには脳筋が一番と証明した第4Qでした。一方で点差が縮まったってことはペイサーズのオフェンスを止められたってことですが、その要因はマッコネルに翻弄されなかったクリバーと、やらかしまくったトッピン。ここまで追いつくのにもう少し時間が掛かると思っていましたが、僅か3分半で点差が縮まったのはトッピンのおかげだろうね。ただタイムアウト明けにスリーを決めます。プレーメイクに関わらなければハイスペックな男。

 ライブリー以外をスタメンに戻したマブス。まあわざわざ相手に攻めやすいところを作る理由もないしね。ギャフォードがセンターになったことでよりインサイドを固めないとターナーにやられるわけですが、そこでペイサーズはスリーを連発、決めまくりました。これを見てギャフォード→クリバーにしたっぽいキッド。クリバーのガードディフェンスに全てを掛けたわけですが、インサイド担当になったPJが耐えられなかった。別にギャフォードとクリバーを並べればよかったと思うんですが、PJを使いたかったのかな。

PJワシントン 2PTS 6REB 1AST 4TO

 かなりボールを回して貰ったPJでしたが期待には応えられず、FG 1/6でした。マブスに来てから3P%が19%と、スペーシング的にかなりマズい選手です。PJがマブスに来てから今までの対戦してきたチームは基本的に守り切れないのでコーナーのPJを捨てる作戦に出ていました。その結果スリーを打たざるを得ない状況になり、逆にスリー以外のオフェンスがあまり見られませんでした。ペイサーズはそんなPJにもディフェンスをつけてくれていたので、ギャフォードと同じく今日が本当の意味で何が出来るか発揮出来る機会だったんですが、まあ良いとは言えないよね。シュートの精度は勿論だけど、4TOっていうのがちょっとヤバいです。しかも単純なハンドリングミスやパスミスなので結局彼が何が出来るのか分からなかった、というかこの試合だけ見たら何も出来ていなかったんだけど。管理人的にはトレード獲得後、信用しきれなかったギャフォードが株を上げて、逆に元々株が高かったPJが評価を落とした試合でした。

THJ 11PTS 3REB 1AST 4TO

 同じく4TOしたのがこの人。最近スリーが絶不調でしたが、今日は3/6と効率良く決めています。ただし2Pは1/6。今シーズンは妙に2Pを決めていたので、寧ろ懐かしい数字に思えてきます。ミスマッチを作った後のパスミスが多く、それが4TOという数字になっているので、そもそも個人の凡ミスをしまくったPJとはだいぶ質が違うんですが、明らかにおかしいパスミスもあったので何とも言えない。PJよりはマシだけど、良いとは言えない感じです。

 そして今日は珍しくディフェンス面での活躍が光った試合でもありました。ペイントエリアの攻略を重視しているペイサーズだったので、アウトサイドディフェンスの悪さよりもミスマッチでもインサイドで奮闘するフィジカルさが際立ちました。珍しいよね。ちょっとハーディじゃ苦しい部分。

マブス アシスト 15

 全体的にアシストが少なかったマブスですが、まあペイサーズがそういうディフェンスをしていたからね。意地でもミスマッチにならないようにスクリーンを躱して、オーバーヘルプを避ける守り方でした。だからマブスもオーバーヘルプさせる為にミスマッチを作ろうとしたし、そこはライブリーとギャフォードが解決したんだけど、その後の展開があまりに拙かった。でもまあ、そうだよね。トレード後まだ10試合もプレーしてないチームで、しかもローテーションも大きく変わったのに問題なくオフェンス出来る方がおかしいよ。トレード後に対戦したチームがみーんなドンチッチにダブルチームに行くから、簡単に崩壊してくれてオフェンスの連携の課題が見えにくかっただけだったように思います。その課題を突き付けたのがリーグ最低レベルのDEFレーティングのペイサーズっていうのが面白いけど。

 ということでカーライルとキッドの熱いアジャスト合戦でした。単純にこの二人のアジャスト合戦も面白かったし、サイズがないことを武器にしたディフェンダーの存在っていう、バスケ面で新しい知見が得られたし、大満足です。しかしペイサーズは本当にチームディフェンスが良かったな。ペイサーズがウェストのチームだったらどうなるんだろうとか、ちょっと思っちゃいました。

【23-24 RS-54】スーパーディフェンダー・ネムハード

 

 第1Q序盤からドンチッチにベネディクト・マサリンをマッチアップさせて守っていたペイサーズ。ですが08:20のポゼッションから、カイリーについていたアンドリュー・ネムハードがスイッチして、ドンチッチのマークマンになりました。193センチ86.6㎏と、どう考えてもマサリンより守れなさそうな彼をドンチッチにつけた意図とは。盛り上がってきました。

 

 ネムハードがついた最初のポゼッションで、ドンチッチは再びライブリーのスクリーンでミスマッチを作ろうとします。しかしこれを軽やかに躱しミドルを外させます。トランジションとなり、ゴール下でボールを貰ったターナーの上からもぎ取るライブリー。なんか普通にライブリーのことが苦手そうなターナー。ということで一転マブスの速攻のチャンスになるわけですが、ドンチッチのパスがハリバートンにカットされ、走り出したJGが置き去りにされます。アウトナンバーになった状態でターナーにコーナースリーを打たれますが、外してくれて助かったマブス

 07:45あたりのポゼッションでカイリーがボールをプッシュしますが、それにマークするのはネムハード。ということでネムハードはドンチッチ担当ではなく、ハンドラー担当に任命されたようです。JGのだいぶムービング気味なスクリーンに引っ掛かりました。それを見てハリバートンがカイリーから離れられなくなった為、フリーになったJGにパスが渡りスリーが決まります。その後もペイサーズ側のシュートが決まろうが決まるまいが、ハイペースでボールをプッシュしたマブスは得点を重ね、ペイサーズタイムアウトを取りました。

 このボールプッシュの部分でも注目したいところがあり、それはペイサーズトランジションディフェンスです。07:03からの展開で、カイリーは物凄い速さでコーナーへ走って行きました。画面から完全に消えるぐらいにね。そしてそのカイリーにボールが渡るんですが、その頃には既にディフェンダーが四人戻っています。

優れたトランジションディフェンス

 言ってしまえば早く戻るっていうだけなんだけど、この四人のディフェンダーのフロアバランスは普段から徹底していることが伺えます。カイリーにはネムハードがマークしているんですが、仮にそこが抜かれたとしてもゴール下への侵入を防げるように、シアカムがカイリーとゴールの間に立っています。トランジションディフェンスが悪いチームだと、例えばこの状況でJGに対して、ハリバートンネムハードの二人が寄ってしまい、フリーになったカイリーにシアカムが飛びついたところでカウンタードライブされてすこ抜きされるっていうことが起こり得ます。今までこの部分がグダグダだったり、そもそも戻ってすらいないチームとばかり試合していたので、ペイサーズの良さが余計に際立ちました。

ペイサーズトランジションポゼッション 19.0(リーグ19位)

 トップレベルのペースを誇るペイサーズですが、その割に相手のトランジションの回数は寧ろ少ない方です。相手ポゼッションの割合で見ると16.6%でなんとリーグ23位とかなり低い。つまり比較的簡単に点が取れるトランジションオフェンスを許していないということです。まあこれはペイサーズ側のシュートが高確率で決まるからっていうからくりがあるんだけど。ただこのトランジションディフェンスの徹底っぷりを見ると、それだけではないように思ってしまいます。ディフェンスが良いからこそ数字に表れないっていうね。

 

 だいぶ話が逸れた気がしますが、タイムアウト明け。マブスはライブリーをギャフォード、カイリーをTHJに変更します。ドンチッチがハーフコートを越える前からしつこく絡むネムハード。PJがスリップアクションからボールを貰うとフローターを沈めます。ここはシアカムのミスっぽい。

 05:25のポゼッション。相変わらずネムハードにつかれるドンチッチの脇で、PJとのスクリーンでミスマッチになりTHJがスリーを沈めます。04:55あたりのポゼッションではドンチッチのところへギャフォードがスクリーンに行きます。これに僅かに引っかかったネムハードはドンチッチの少し後ろから追いかけますが、ドンチッチにヘルプに寄ったターナーの裏を走るギャフォードにロブパス。初めてドンチッチがセンターのスクリーンでミスマッチを作りました。

 ここまでのペイサーズの守り方は、スクリーンに対してはスイッチせずにオーバーで守り、ハンドラー対センターの形を作らせないことを徹底していました。ドンチッチ対ターナーのような、スピードのミスマッチになると必然的にオーバーヘルプ気味にしなければ守れなくなるので、そもそもミスマッチにならないようにしようって感じ。

スクリーン対応がディフェンスの鍵

 なんで如何にも守れなさそうなネムハードをハンドラーにつけていたのかと思っていたんですが、彼はこのスクリーン対応が抜群に上手い。ハンドラーとスクリーナーとの僅かな隙間に体を滑り込ませて、ドンチッチにべったり張り付いていました。それこそJGが体当たりしてようやく引っかかったって感じです。

 最初にドンチッチをマークしていたマサリンも、実は結構上手かった。ただそれなりにサイズがあるのでどうしてもスクリーンに引っかかってはしまうんですが、引っかかった後ハンドラーの正面に移動する時のスピードが早かったです。サイズの大きさ故に対応が悪くなってしまう部分を、スピードという身体能力で解決していました。ただドンチッチぐらいのハンドラーになると、一歩でも遅れると決定的なシュートチャンスになってしまうので担当を変えられたって感じだと思います。あとシンプルに1on1でやられまくってたしね。

 そのネムハードのアンサーがギャフォードの起用。サイズこそライブリーに劣るものの、さすがのスクリーンの分厚さを見せました。ライブリーのスクリーンには何もなかったかのように躱したネムハードでしたが、ギャフォードのスクリーンに一瞬引っかかった結果、04:55のポゼッションでドンチッチの後手に回らせることが出来たというわけです。タイプの違うセンターを使い分けた良いアジャストでした。それでも追いついてくるから凄いよね。

 マサリンには効いたものの、ネムハードには無力に近かったライブリーのスクリーン。対してネムハードにも通用したギャフォードだったので、この試合で言えばギャフォードを使うメリットの方が大きかったように思います。ただディフェンスはやっぱりライブリーの方が良いし……難しい判断だ。まあぶっちゃけペイサーズを守り切るなんて無理そうだったので、やっぱりギャフォードの方が良さそうだと思いました。

 04:30のところでシアカムのスリーが外れたシーン。シュートチェックに行ったギャフォードはそのままフロントコートに走り出しました。THJがターナーのボックスアウトをしていたところを見ての判断だったんだろうけど、これはマジで偉い。結果的にドンチッチのアウトレットパスが逸れたのでシュートは外れたんですが、感心する運動量でした。そして誰よりも早くギャフォードのところへ走ったハリバートンもね。ワンテンポ遅れてきたシアカムとターナーに囲まれて危うくボールをロストするところでしたが、これがファウルになりました。

 今までもギャフォードはちゃんと走っていたんだけど、ぶっちゃけ対戦してきたチームがアレだっただけに褒めにくかったんだよね。わざわざギャフォードである必要なくない? みたいな。だからようやくギャフォードの武器が際立った今日の試合でした。

 その後、なぜかロッカールームに下がったドンチッチ。カイリーがハンドラーになります。ペイサーズターナーがジェイレン・スミスに、ネムハードがTJマッコネルになりました。スクリーン一枚で簡単に剝がれてくれるマッコネルなので、ペイサーズはヘルプディフェンスを強めます。その結果オープンが徐々に作られてきてマブスのパスが回るようになりました。こうなりたくなかったからスクリーン対応の良いネムハードを起用したように見えるカーライル。まあでも、マッコネルの反応が普通な気がするけどね。別に特別悪いとは思わないし。

 03:30のポゼッション。ギャフォードの逆のスペースへ侵入するカイリー。ディフェンダーを引き付けてクリバーにキックアウトしますが、ここはローテーションが間に合います。するとクリバーがカイリーにもう一度ボールを戻し、ハリバートンがカイリーとTHJの二人を見る形に。カイリー→THJのパスからもう一度戻すと読んだハリバートンがスティール、ライブターンオーバーになり自ら押し込みます。カイリーとTHJを同時に守ったハリバートンでした。まあシアカムのローテーションがあったからなんだけど。極端なまでにスイッチとオーバーヘルプを嫌ったペイサーズでしたが、普通にローテーションがスムーズなのは何故だ。

 ところで、カイリーはなぜかスクリーンの逆を使いたがるよね。スクリーナーじゃなくなったギャフォードはやっぱりインサイドのスペースを潰すので、ゴール下への侵入が難しくなりました。そしてリバウンドを取られると確実にファストブレイクからの得点に繋げてくるマッコネルなので、結果的に同点になりました。フェイクとして有効っていうのは分かるけど、スクリーンを使うからロブパスのコースが生まれるわけで、やっぱりインサイドのスペーシングのマネジメントはだいぶ怪しそうなカイリー。続く。

【23-24 RS-54】ペイサーズ戦雑感

 

 今シーズン初対戦のペイサーズ戦。また守れないチームとの対戦かって感じで全然期待していなかったんですが、結果的には非常に面白い試合でした。どれぐらいかと言うと、マジック戦より面白かったです。かなり濃い内容だったので自然と何度も見返してしまいました。

 マブスペイサーズは初対戦ですが、実はペイサーズの試合を見るのはこれが三度目。インシーズントーナメントでのセルツ戦、レイカーズ戦を見ていたのである程度情報はあったんですが、流し見だったので当時の感想としては「ペイサーズのオフェンス凄いけど、全然守れてないなー」ぐらいでした。ただこの試合でペイサーズというチームの見方がだいぶ変わりました。

 

ペイサーズの特徴

OFF/DEFレーティング 120.6/118.8

 現時点でOFFレーティングが120を超えているのはセルツとペイサーズのみ。ペイサーズはセルツの121.2に次ぐ2位です。反面DEFレーティングはリーグ26位、下にいるのはホーネッツ、ホークス、ウィザーズ、ピストンズと優勝には程遠いチームたちです。

リーグ最高レベルのオフェンスと、最低レベルのディフェンス

 マブスも似た特徴のチームですが、オフェンスがペイサーズほど振り切っていない代わりに、ディフェンスも下に振り切っているわけではないので、NETレーティング的には極端には変わりません。

ペース 102.72

 そしてそのオフェンスを象徴するのがペースの早さです。この数字はリーグ2位。いや2位かよ。ちなみに1位はウィザーズの103.66で、現状唯一103代のチームです。そしてペースが102代のチームは、ペイサーズの他だとスパーズとホークス。ハーフコートオフェンスに問題がある弱小チームは、ファストブレイクで点を取らないと勝てなくなるのでペースが早くなる特徴があります。ただペイサーズはペースをマネジメント出来ているからOFFレーティングが高いです。

EFG 58.3%(リーグ1位)

3P% 38.2%(リーグ5位)

PITP 57.2(リーグ1位)

%PTS PITP 46.1%(リーグ7位)

%FGA 3PT 38.7%(リーグ14位)

%PTS FT 13.2(リーグ30位)

 これらはペイサーズのオフェンス面で気になった数字。リーグで最も効率良くFGを決めているわけですが、FG全体を占める3PAの割合はリーグ中位で、スリーを打ちまくっているわけではありません。代わりにペイント内の得点がリーグ1位、得点の割合もリーグ7位なので、スリーはあくまで効率の良い2点を取る為の手段と捉えている節が見受けられます。それだけインサイドの得点を重視しているのに、FTの得点の割合はリーグ最下位っていうのが面白いよね。

 ちなみにOFFレーティングリーグ1位のセルツは%FGA 3PTが47.3%でぶっちぎりの1位。その上で3P%も38.3%でリーグ4位なので、スリーを打ちまくって決めまくっているからレーティングが高いと言えます。

STL 7.9(リーグ同率5位)

BLK 5.7(リーグ9位)

 スティールとブロックはどちらも優秀な数字を残しているのにディフェンスが悪いペイサーズ。分かりやすくボックススタッツでは分からない悪さが潜んでいるわけですが

DREB% 69.7%(リーグ27位)

OPP PTS PAINT 59.2(リーグ29位)

 DREBの確保率及びペイント内の失点がリーグ最低レベルの数字です。リバウンドはともかく、ブロックがリーグ9位でこれだけ失点するっていうのはちょっと不思議に見えます。

DIFF% +3.0%(リーグ30位)

2P DIFF% +2.2%(リーグ26位)

3P DIFF% +0.7%(リーグ20位)

 DIFF%というのは普段よりどれだけ相手のシュートの成功率が変わるかっていう数字で、高いほど守れず低いほど守れるってことですが、ペイサーズは全体のDIFF%はリーグ最下位です。そしてその内訳が主に2Pに対するディフェンスの悪さっていうね。まあこの数字を見ると、単純に選手の能力的に守れないって感じに見えます。

 これらの数字は今日の試合について語る上で関わってくる部分なので最初に書いていますが、そんなに気にしないでください。

 

■第1Q

 ペイサーズの最初のシュートはベネディクト・マサリンのプルアップスリーから始まりました。マサリンはドンチッチがマークしている時に限りプルアップで打っているっぽいので、これは相手を見てのシュートチョイスっぽい。

 マブスのオフェンスになると、そのマサリンがドンチッチをマークしました。JGがスクリーンに行きますがここはタイリース・ハリバートンとの連携で上手く凌ぎます。ドンチッチはドライブでマサリンを躱してフローターを沈めました。

 続くペイサーズのオフェンスはフリースローラインあたりでボールを貰ったマイルズ・ターナーとライブリーのマッチアップ。ターナーは仕掛ける素振りを見せますがすぐに諦めてハリバートン→アンドリュー・ネムハードへとボールを繋ぎます。ネムハードがボールを持つとターナーがスクリーンを掛けに行き、JGを剥がした後でオフボールで動くマサリンにパスしました。ここをドンチッチがローテーションしに行くとカウンタードライブでペイントエリアに侵入、ライブリーと二人で捉えてシュートを外させました。そのトランジションターナーとのミスマッチになったドンチッチがプルアップでスリーを打ち、沈めます。

 ボールを貰うとすぐさまプッシュするパスカル・シアカムをライブリーが止めますが、パスを貰ったターナーを止めきれずアンドワンになりました。実はアンドワンの回数でもリーグ1位なペイサーズ。その後PJがシアカムにバックコートでスティールされたり、そのPJのインバウンズパスがネムハードにカットされたりと酷かったんですが、それはどうでもいい。

 10:20からのポゼッションでライブリーからボールを貰おうとするドンチッチ。ライブリーのスクリーンに対してマサリンは素早く抜け出し、ミスマッチになるのを防ぎました。ただコンテストされたシュートを決めるドンチッチでした。

 

 次のペイサーズのオフェンスもそうですが、やはりペイント内で得点を取ることに拘っているのが見えます。それに対してライブリーがインサイドに留まるように守るマブス。これはいつも通りですが、気になるのはターナーが1on1でライブリーに仕掛けようとしないこと。徹底してここを避け、コンビプレーに徹していました。チームでディフェンスを崩す意識が見える部分です。そしてペイサーズのディフェンスですが、ドンチッチにマサリンを徹底マークさせているのも注目ポイントです。

 そして08:20からのポゼッションからこの試合は管理人的に盛り上がりを見せるんですが、既に結構長くなっているので一旦区切ろうと思います。

【23-24 RS-53】サンズ戦雑感

 

 オールスターブレイクっていうのは、選手にとっては休息期間であると同時に、チームとしてはトレードで獲得した選手とシーズン中にじっくりチーム練習が出来る貴重な期間でもあります。だからオールスター明けにチームの状況が変わったり、もっと言えば勝率が大きく変わることもあります。NBA.comでもオールスター前後っていうフィルターがあるぐらいだし。

 マブスで言えばギャフォードとPJという新加入選手がどういう風にチームに溶け込むのかが確認できる試合であり、いわばここからがトレード後のシーズン本番と言えます。そんなマブスがどう変化したのか。そしてロイス・オニールとサディアス・ヤングがサンズでどう活躍するのか、注目の一戦……と思ったらヤングは欠場か。ブラッドリー・ビールもいないし。

 

■オールスター明けの変化

 最初に感じたのはディフェンスの変化でした。守れないというか、守る気を感じないディフェンスだったマブスでしたが、しっかりヘルプとローテーションを実行していました。最初のポゼッションではヌルキッチを起点にデビン・ブッカー→左ウィングでスペースを貰ったケビン・ディラントとパスを繋ぎますが、PJがすかさずKDに詰め寄ります。そこでKDはドライブを選択して、最終的にミドルを決めるわけですが、目立ったのはPJとライブリーでした。

 身長2mには見えないサイズがあるPJ。サイズの割にローテーション早いなーと思っていたんですが、ウィングスパンが219センチとのこと。だからデカく見えるのか。

ウィングの身体+センター並みのウィングスパン

 これがデカいのに動けているように見える理由に感じます。デカいのに動けるんじゃなくて、普通のウィングだけど普通以上にデカく見えるっていうイメージ。似たようなタイプがジェイレン・マクダニエルズかな。まあマクダニエルズはもっと動けるんだけど。ということで最初のポゼッションからディフェンスで見せたPJ。でもこれってオールスターブレイク前からそうだったよね。ヘルプもローテーションもしっかりしてくれていたので、これがチーム練習の賜物とは思えないプレーでした。

 そしてライブリーですが、こちらはオールスターブレイクの影響を多少受けているように見えます。ヌルキッチとのツーメンゲームを仕掛けようとしたブッカーに対するショーディフェンスで動きを封じ、KDにパスを捌くとすかさずヌルキッチとのボックスアウトに奮闘、KDのミドルに対してもしっかりチェックに行くと八面六臂の活躍でした。

 元々ショーディフェンスの曖昧さがかなり目立っていたライブリー。中途半端なプレッシャーでハンドラーの動きを止めきることが出来ず、ミスマッチになったセンターにパスを捌かれることが多かったんですが、きっちりヌルキッチへのパスをケアしていました。ここはシーズン開幕から徐々に改善してきていましたが、ここの受け渡しがスムーズになったのは好印象です。ここはシーズンを通して見ないと分からない部分。

 

 マブスの最初のオフェンスはPJがドライブしてヌルキッチにスティールされるというよく分からないオフェンスでした。ターンオーバーからブッカーがプルアップスリーを沈めます。

 迎えたポゼッションではドンチッチとPJのツーメンゲーム。ボールを交換しながら空いているインサイドにPJが入ったり、ドンチッチのドライブに合わせてアウトサイドに飛び出したりと、ここでもポジショニングの良さが光ります。まあドンチッチが外したんだけど。

 

エリック・ゴードン

 10:55。ここのトランジションからのポゼッションで、エリック・ゴードンの酷さが目立ちました。そもそもその前の、ブッカーがプルアップスリーを沈めたポゼッションでも凄く気になったんですが、ゴードンが走ってないっていうね。トランジションオフェンスのセオリーは数的有利を作ることなので、シューターが如何に早くコーナーに辿り着けるかっていうのは超重要、というか大前提なんだけど、そもそも走ってすらいないってどういうことだよ。

 そしてこのポゼッションでは走ったは良いものの、既に左コーナーにいたグレイソン・アレンのところへ走って行くもんだからコートが広がらない。これによってスペースが確保できず、ブッカーが一瞬立ち止まってしまいました。ゴードンがちゃんと右コーナーにいたら余裕でファストブレイクが成立していたように見えます。その後のプレーでなんとか挽回出来たから良かったものの、それもアレンに助けられたようにしか見えない。

1/24サンズFBP/OPP FBP 24/6

 前回対戦ではファストブレイクで点を取られまくり、マブスは取れませんでした。それが今回はサンズのFBPが11点、マブスが21点と逆になっています。そして1/24の試合ではゴードンが欠場で代わりにビールが出ており、こう見るとビールがゴードンになったから負けたように見えます。そのぐらい今日のゴードンはエネルギーのないプレーをしていました。

ゴードン 16PTS 1REB 1AST 2STL 1BLK

 FG 50.0%に加えて3P 57.1%と高確率で決めたゴードン。このボックススタッツを見ると文句のつけようがないんだけど、数字以上に悪い部分が目立ちました。当然+/-も最下位なんだろうなーと思ったら、そうではないっていうね。やっぱり+/-は信用ならない。とはいえ3.2ミリオンしか貰っていない選手なので、敗北の責任をゴードンに押し付けるのは違うよね。46.7ミリオン貰って試合に出ないビールが悪い。

 

■ギャフォード

 第1Q中盤にライブリーをベンチに下げ、代わりにギャフォードが出場します。オールスター前から変わらぬ活躍を見せるPJに対して、ギャフォードはどういうプレーしたのか。

 早速ドンチッチとのP&Rが始まるのかと思いきや、オフスクリーンからゴール下に居座るギャフォード。このスクリーンアクションからロブパスを貰いたいってのは分かりますが、いまいち噛み合わずにOREB役みたいになります。03:05にドンチッチとP&Rするポゼッションがありましたが、ここもギャフォードのダイブのタイミングが噛み合わない。まあそれは別に良いです。問題はその続き。

 ドンチッチがギャフォードとのP&Rからパスを選択し右コーナーのDJJにボールが渡ります。エクストラパスの判断がよろしくないDJJなのでTHJにチェストパスじゃなくバウンドパスとよく分からないチョイス、普通にサンズのローテーションが間に合います。ただTHJに対して、元々DJJをマークしていたゴードンも飛び出したので一瞬フリーになったDJJにボールを戻すとカウンタードライブしました。ペイントエリアに侵入したところでDJJがクリバーにパス、スリーを打てなかったので今度はクリバーがドライブ、KDにマークされたクリバーはペイントエリアに触れることすら出来ずに変なフローターを打って外します。

インサイドを支配するギャフォード

 DJJ、クリバーのカウンタードライブの間、ずっとドライブコースに突っ立っていたギャフォード。その結果マークマン+ユーバンクス&ギャフォードのトラップディフェンスみたいになり、DJJとクリバーはゴール下に侵入出来ませんでした。ウッドを思い出すなあ。ということで大変邪魔だったギャフォードは第2Q頭に下げられます。

 第2Q07:40辺りでもう一度出場したギャフォード。さすがにインサイドのポジショニングについて修正があるかと思いましたが、相変わらずインサイドを支配しまくります。JGのカッティングに対してコースを空けてボールを貰うような動きをしてはいたので指示はあったんだろうし、やろうともしたんだろうけどゴードンにスティールされます。そのゴードンにトランジションスリー決められるし。

 そもそもがシュート力がなくてインサイドのスペースを潰しやすいセンターというポジションは、ダイブする前のポジションをゴールから離したり、逆にスクリーン役として活用したりと使い方を工夫する必要があります。工夫すれば逆にドライブコースを無理やり作ることが出来ますが、逆にその工夫がないとただインサイドのスペースを潰すだけになってしまいます。それっていうのはちゃんとオフェンスの選手のポジショニングを把握していないと出来ないんだけど、ギャフォードはそういうところがだいぶ弱そうに見えました。ホームズが恋しい。ということでギャフォードは下げられ、クリバーをセンターにしました。恐らくライブリーはプレータイム制限があるんだろうね。パウエルはいよいよ控えの控えって感じか。

 

■どうしたもんかね

 カイリーがシュートを外したところから始まった第3Q。サンズのトランジションオフェンスで目立つのはボールをプッシュするアレン……ではなくノロノロ左コーナーに走るゴードンでした。どうしたもんかね。

ゴードンオフェンス時平均速度 3.95

 気になって調べてみたけど、やっぱりかって感じです。この数字はリーグで下から13番目。一試合しか出ていない選手等、全選手の中でね。

ビールオフェンス時平均速度 4.27

 別にビールも動いている方では全くない、というかサンズ自体が走りまくるチームじゃないけど、確実に差を感じます。その分ディフェンスで動いてくれればいいんだけど、こっちも3.47で全選手中下から22番目っていうね。ちなみにKDは下から20番目、ドンチッチは下から9番目で、2試合以下しか出場していない選手を除くとレブロンと0.09差で最下位。

 極めつけは10:45のポゼッション。アレンがライブリーにブロックされたシュートが目の前を転がりますが、飛びつく素振りもなくアウトオブバウンズになった後にボールを確保、審判に渡してディフェンスに戻ります。ここまで来ると本人のやる気もだけど、チームのカルチャーに問題があるとしか思えないよね。

最終スコア 113対123(マブス勝利)

 相変わらずヌルキッチがいないと酷いオフェンスになるサンズ。ぶっちゃけ見てられなさで言えば今のウィザーズより酷いんだけど、今日は輪をかけて酷かったように思います。ハーフコートオフェンスでスター頼みなのは相変わらず、それに加えて速攻で点を稼ぎまくったのが前回対戦でしたが、そこから速攻の得点をゴッソリ削ったのが今日の試合って感じでした。

前回サンズ

ターンオーバーからの得点 21 

ファストブレイクポイント 24

 合計45点と大盤振る舞いだったわけですが、これが今回はターンオーバーからの得点が13点、ファストブレイクポイントが11点の合計24点。前回のサンズの最終得点が132点だったので差し引くと……なんか本当に速攻の悪さが足を引っ張っただけのように見えるな。改善したといってもマブスは相変わらず守れているわけではないし。ただマブスのターンオーバーが14→10と減っているので、トレードで獲得した選手+前回欠場していたカイリー、ライブリーがいたから勝てたとも言えます。管理人には前回欠場していたゴードンがいたから勝てたとも言える試合に見えました。

ブッカー 35PTS 5REB 8AST

 45点取った前回ほどではないものの、大活躍したブッカー。ぶっちゃけあんまり好きな選手じゃなかったけど、これだけ苦しそうに点を取る選手は中々いないよね。試合を重ねる毎に彼へのリスペクトが増しています。今日はヌルキッチの代わりにオニールを起用していたサンズでしたが、やっぱりブッカーが勝手にミドルを決めるのであんまり関係なかった気がします。オニールはスリーが打てるのでスペーシング的にはヌルキッチより良いんですが、今日はスリーが2/8なのでそれほど良くもないっていう。勝率以上に不安な要素がてんこ盛りのサンズ。どうしたもんかね。

【雑談】ドニー・ネルソンからの脱却-4

 

 と言いつつ22-23シーズンレビューです。オフェンス、ディフェンス、リバウンドと様々な課題があったマブス。そこでニコ・ハリソンGMはどういう方針で補強を進めていったのか、見ていきましょう。

 

■選手の放出、獲得

 22-23シーズンは様々な動きがあった年で、一纏めにすると混乱するのでまずはオフシーズンの動きから見ていきましょう。ちなみに細かい動きは省略します。

獲得選手

クリスチャン・ウッド

ジェイデン・ハーディー

ジャベール・マギー

 トレイ・バーク、スターリング・ブラウン、ボバン・マリヤノビッチ、マーキース・クリスの四人と一巡目指名権1枚でロケッツからウッドを獲得しました。ほぼ戦力としてカウントされていなかった選手たちなので、実質一巡目指名権1枚で弱小チームの主力ビッグマンを獲得。マブスの話は一旦置いといて、よくロケッツは応じたなと当時思いました。だって仮にも自チームの主力を、実質一巡目指名権1枚に変えたんだから。どんだけ指名権欲しかったんだよっていう思いと同時に、当時弱小だったロケッツにすら見放されたウッドに対して、ちょっときな臭さを感じていました。

 ハーディの獲得は結果的にスティールだよね。ドラフトしたキングスじゃあ持て余すから、今後のアセットを増やす方向に動きたかったって事情と噛み合った感じです。もしもハーディが失敗していたら二巡目指名権を3つ失うことになっていましたが、今のところその価値はありそうです。これでブランソンみたいに注目されて契約延長に失敗したらほんとに笑うんだけど、まだそこまでの選手じゃないかな。

 今まで散々酷評してきたマギー。そもそも起用していない且つ最終的にウェイブしたので間違いなく失敗なんですが、まあ意図は分からなくもない。その前にウッドを獲得していなければね。

放出選手

ジェイレン・ブランソン

 二巡目でドラフトされたことにより無制限FAだったブランソン。これによって無理やり引き留めることが出来ませんでした。まあこれはしょうがないことと割り切るしかなく、ここからハリソンはブランソンの代わりになるハンドラーを探す為、シーズン中に動きまくったわけです。

 

■シーズン推移

 10月に6試合を消化したマブスはOFF/DEFレーティングが119.0/110.9と一見すると好調な滑り出しに見えました。ターンオーバーが12.8とマブスとしては多かったものの、まあ新体制になったばかりだし、ということで全然言い訳は出来ます。ぶっちゃけオフェンスの好調は、10月に平均36.7PTSという数字を叩きだしたドンチッチの好調に引っ張られている気がしますが、6試合じゃ何も分からない。

11月OFF/DEFレーティング 109.9/110.8

 ところが11月になると急にOFFレーティングが悪化しました。

10→11月マブス FTA 31.8→22.8

 はい。フリースリーが貰えなくなって得点力が落ちました。ちなみに成功数で見ると23.8→16.3と7.5点も下がっています。このシーズンの最終的なFTAは25.1なので、やっぱり10月が貰い過ぎというか、サンプル数が少ない故の結果だったように見えます。

11月ドンチッチ 32.0PTS

 その影響を受けたかのように見えるドンチッチですが、実はFTAは11.5→11.1とほぼ変わっていません。なぜか成功数が9.0→7.7に下がっているけど。

 ドンチッチの得点が下がったのはFGAが25.5→21.5と4本も減らしたことが影響しています。フリースローの成功数が下がり、そこから更にFGAが4本減ったにしては超高水準を保っているんですが、これは3P%の向上が原因です。ドンチッチは10月に3Pを2.0/8.8の22.6%と酷い数字を残していましたが、11月は2.6/7.2の36.6%と劇的に改善しています。全体的に自分が打つシュートを減らして、代わりに効率的に得点するようになったと言えます。なのにアシストが8.7→8.5に減っているっていうのは面白い。

10→11月3PM/3PA 13.7/38.0(36.0%)→13.5/39.9(33.8%)

 ドンチッチの3PA減&3P%向上に反して、チーム全体のアテンプトは増加しました。自身がシュートを打たない代わりにチームメイトにシュートを打たせるように促したということですが、3P成功数は寧ろ減るっていうね。

11月レジー・ブロック 3P 0.8/4.3(19.6%)

 10月は41.4%でスリーを決めていたブロックが、この月は外しまくります。この頃のブロックはワイドオープンも外しまくっていたのが印象的です。ちなみにドードーも33.8%と低調でした。ドードーは10月の成功率が32.1%だったからこれでも改善しているっていうね。NBAに来てから毎シーズン3P%を改善していた男がここに来て大ブレーキ。ちなみにTHJも3P%が29.3%と酷い数字だったんですが、ぶっちゃけ目立つのは2Pの37.8%の方です。幾ら何でも外し過ぎだ。

FTAが戻る&スリーが入らない

 これがOFFレーティングの低下に繋がっているように見えます。そりゃ今まで高確率で決めてくれていたブロックとドードーが外しまくったらそうだよね。これを偶然と見るかどうか。

12月マブスOFF/DEFレーティング 118.2/115.9

 再び10月に近いOFFレーティングに復帰したマブス。ドンチッチが平均35.1PTSという、チームと同じく10月に近い数字を残しました。この月はFGAが前月比+1.1本と増えましたが、実は7.2本に減らした3PAが7.2→8.8と+1.6本も増えています。だけど成功率は42.4%と驚異的な数字。全体のアテンプトとしては大きな変化はないものの、その内訳はスリーに偏り、その上で決めまくった結果平均得点が上昇しました。

11→12月3PM/3PA 13.5/39.9(33.8%)→16.6/44.1(37.8%)

 アテンプトを4本以上増やしたマブス。10月から比べると6本と大幅に増やしています。ドンチッチの他にTHJとウッドがそれぞれ前月比+2本のアテンプトになっており、彼らに限らずチーム全体として確率高く決めたことが成功率向上に繋がっています。ブロックはこの月37.5%、ドードーは36.7%とそこそこな数字。

11月ブロック コーナー3/その他3 41.1%/58.9%

12月ブロック コーナー3/その他3 62.5%/37.5%

 これは成功率ではなく、スリーの内訳です。11月は約60%がコーナー以外からのアテンプトで、12月は逆に約60%がコーナーからのアテンプトになっています。そしてコーナー以外だと成功率が良くないブロックなので「コーナーでブロックに打たせる」回数を増やせたことが復調の要因に見えます。

 ただ気になるのアテンプトが減っていること。ブロックは3PAが4.3→4.0と、こう見るとあんまり変わっていないように見えるけど、

11月ブロックトータル3PA/出場時間 56本/334分

12月ブロックトータル3PA/出場時間 64本/459分

 これを出場分数単位の3PAにすると11月は0.167本/分に対し、12月は0.139本/分と大幅に減っています。ちなみにドードーも5.7→5.5本と3PAが減っていますが、同じように計算すると11月は0.201本/分、0.191本/分とそこまで変わっていません。だから今まで以上にスリーを打つシチュエーションを限定したことで、成功率が改善したと言えます。

 それは置いといて、これまで去年並みをキープしていたDEFレーティングが急激に悪化しました。オフェンスに関してはシュートタッチっていう要素が影響しやすいんですが、ディフェンスの方はそれだと説明がつきません。

11→12月THJトータル出場時間 328→522分

11→12月ドードートータル出場時間 463→314分

 11月に平均23.4分出場していたTHJが32.6分と急激にプレータイムが伸びました。行き詰っていたオフェンスのテコ入れっていうのが理由に見えますが、同時にドードーのプレータイムが減りました。まあ彼は欠場した試合があったので、その影響っぽい。

11→12月JGトータル出場時間 298→117分

 同時にJGのプレータイムも激減しました。さすがに覚えてないけど、出場試合が14→5試合になっているから怪我だろうね。ということでTHJが重用されていたのは、マブスの強力なディフェンダー二人の穴埋めっていう側面が強そうです。その結果オフェンスは良いけど守れないチームになりました。

12月マブス 11勝6敗

 結果としては勝てましたが、試合内容を見ると大きな変化がありました。

11→12月マブス平均失点 106.4→113.6PTS

 失点が7.2点も増えました。被FGAは前月比81.6→86.5と約5本も増え、3Pについても被アテンプトが30.1→32.2に増えました。その割に3P成功数は変わっていないので、寧ろ11月のOPP 3P%が37.4%だったことが問題だと言えます。だからアウトサイドディフェンスは元に戻ったものの、逆にインサイドがスカスカになったってこと。おまけに被FTAも21.9→25.1と、こちらも明らかに増えています。FTMが17.5→18.8とアテンプトの伸びに対してさほど伸びていないので、実際の数字以上にディフェンスのまずさを感じます。

11→12月OPP TO 16.3→13.1

 何より大きい変化は、相手のターンオーバーを誘うことが出来なくなったってことです。-3.2っていうのはちょっと酷いね。

ドードー&JGがTHJになって守れなくなった

 当たり前だろって感じなんですが、ここの補強をしていなかったことがこの月から響いてきます。フランキーなんかは守れる選手でしたが、相変わらず安定しないオフェンスで困るし、ベルタンスは守れないとすぐファウルするし。ぶっちゃけTHJにミニッツを与えたのは苦肉の策としか思えない。実際選手が揃っていた11月のTHJの出場時間は23.4分だったしね。

 これが如実に表れたのが12/28のニックス戦。ドードー、JG、クリバーの欠場でTHJのプレータイムが42分と危険な領域に突入しました。その結果ドンチッチの劇的フリースロー外しからのフローター捻じ込みによるオーバータイム突入、60点を残して勝利しました。

ウィングの層の薄さが露呈した12月

 シューターとしてチームオフェンスのオプションになれるものの入らない時はとことん入らず、ディフェンスでもフィジカルの強さ以外は怪しい部分が多いので、スタメンに置くには信用しきれず本来はベンチからのオフェンスオプションとして起用したいTHJ。そのTHJ以外にスカスカのウィングを支えられる選手がいないことが、23-24シーズンにも通ずるディフェンスの悪さに繋がっています。

 だからこの時点で早急にウィングの補強が必要だったマブスでした。若しくはフランキーやハーディという将来的に役に立ちそうな選手たちにプレータイムを与えて、勝利よりも育成に焦点を当てる、いわゆるプチ再建の方向に舵を切ってもよかったのかもしれません。そこでGMハリソンが取った行動というのが、

ケンバ・ウォーカーの獲得

 カンパッソにマッキンリー・ライトを抱えた状態で、更にハンドラーのケンバを獲得しました。ケンバ自体はこれまで補強したハンドラー陣の中で最も信用出来そうな選手だったし、実際それなりに活躍しましたが、今はそこじゃないだろとしか思えませんでした。

チームの問題を把握出来ていなかったハリソン

 ハリソンはシーズン開幕前のインタビューで、THJに対して面白いコメントを残していました。怪我から復帰したTHJを「新しいFA選手がやってきたようだ」と評したのです。なるほどねーと当時思っていました。THJのオフェンス能力が火力不足の一助になるという趣旨のコメントだと思っていましたが、全然信用してないじゃんって感じです。若しくは「THJのディフェンスが良い」とも言っていたハリソンなので、THJ復帰でウィングディフェンダーの層は問題ないと思ったのか。

 そもそもドンチッチに次ぐハンドラーとしてはディンウィディーが既にいたし、ハンドラーじゃないけど単独でもそれなりにオフェンス力があるウッドも獲得して、更にTHJもいるのにまだオフェンス面の補強をするの? って感じです。どうにもブランソンの残像に囚われ過ぎていたように思います。

 

 そんな守れない12月から継続して守れなかった1月のマブス。相変わらず欠場が多かったドードー&JGに加えて、更にウッドの欠場も重なったことでオフェンスでも低調になりました。

1月マブスOFF/DEFレーティング 114.6/119.1

 この月は欠場の選手が多かったことで、オフェンスでもディフェンスでもアイデンティティを喪失していました。ドンチッチがいてもいなくても守れなかった22-23シーズンですが、この月からその傾向が強くなりました。今まではオフェンスで苦しくなってもディフェンスで耐えられた部分で耐えられなくなり、勝率も悪化します。

1月マブス 6勝9敗

 仮にプレーオフに出場出来ても優勝するには色々と足りなかったマブス。寧ろシーズン開幕より悪化してるっていうね。ということでTDLが近づいてきたってこともあり、何かしら補強に動きそうだったハリソンでしたが、今回はここまです。

【雑談】ドニー・ネルソンからの脱却-3

 躍進と共に、優勝するには課題も山積みだと痛感させられたマブスの21-22シーズン。ではこの時マブスが抱えていた課題とは何か見ていきましょう。

 

■21-22シーズンの課題

①ディフェンスシステムの欠陥

②ドンチッチ以外のオフェンス力

③リバウンド力

 まず①のディフェンスシステムの問題。ボールマンに人数を掛けてドライブを防ぎ、ボールムーブに対しては時にパスを出すよりも先に予測でローテーションするシステムはハンドラーのドライブに頼るチームに対しては滅法強いディフェンスでした。反面ボールマンに人数を掛け過ぎるあまりオフボールで動く選手のペイントタッチを許しがちで、元々エースの強みがドライブではないウォリアーズにはここを突かれました。まあここはキッドもゲーム中に修正していたけど、そしたら逆にカリーをワイドオープンにすることもあり、色々と上手く行きませんでした。

 じゃあこのディフェンスシステムを諦めた方が良いのかって話ですが、それはちょっと話が違います。当時のマブスのウィング陣は、ドードーとフランキーを除けば1on1で強いディフェンダーがいませんでした。ただ強力なマンディフェンスがない代わりに、パスコースを読むIQと運動量に優れており、チームディフェンスできるタイプのディフェンダーが多く、これがキッドと上手く嚙み合いました。

個人のディフェンス力を補うシステム

 5人が全員エリートディフェンダーじゃなくても、チームディフェンスが出来る選手が揃っていれば守れるということを示しました。そしてチームディフェンスが出来ない選手が一人ぐらいなら何とか補えるっていうこともね。

 それにこのシステムを導入してたった半年で形になったっていうことも見逃せないところです。バックスでは4年掛かっても出来なかったのにね。それだけ難しいディフェンスなんだから、もっと時間を掛ける必要性を感じました。あとドンチッチがもうちょっとディフェンスで踏ん張れたらね。その上で守れないっていうなら、そこでHC交代って話になるのが筋ってものだ。

 

 ただドンチッチがディフェンスを頑張ることで、②のオフェンス問題が更に根深くなるわけです。ドンチッチが幾らディフェンスを頑張ったとしてもガードのスピードに追い付くのは厳しいし、ビッグマンの高さには勝てません。それはドンチッチが悪いって話じゃなく。それにディフェンスで頑張り過ぎた結果オフェンスの質が下がったら本末転倒なわけで、結局ディフェンスは現状維持しつつ、オフェンス力の向上に舵を切るのが正解に見えます。

 じゃあどうやってオフェンス力の強化を図るのかって話ですが、一番簡単なのはペースアップ。実際今シーズンもそうやってオフェンスは成功しているし。

21-22ペース 95.64(リーグ30位)

 ぶっちぎりでペースが低かったマブス。FBPも10.0でリーグ最下位……かと思ったら28位でした。なんでだよ。いずれにせよ速攻でのイージーシュートが足りなかったことは、よりオフェンス面でドンチッチへの依存を強めてしまう結果となりました。ここは増やしたいところですが、敢えて増やさなかったし、増やせなかった。

 増やさなかった理由はポゼッションを減らして点の取り合いを避け、守り合いで戦いたかったというキッドの方針のように思います。まあドンチッチというハーフコートオフェンスで強いハンドラーがいるし、ドンチッチは走るの嫌そうだし、ここは納得出来る部分ではあります。ただその結果、特にプレーオフでドンチッチがオフェンスで苦しむことが増えたので、やはり速攻は増やしたくなります。ただそれが出来なかった事情っていうのが実はあり、

21-22プレーオフ平均出場時間

ジー・ブロック 39.3分

ドリアン・フィニ―スミス 38.2分

 プレーオフでドンチッチ以上にヘビーミニッツを与えられた二人。ブロックとドードーはこのプレータイムでもディフェンスでは全力で走り回ることを求められていました。これでファストブレイクにも走っていたら、いよいよディフェンスでは一歩も動けなくなりそう。実際ブロックは段々足が動かなくなっていたし。ドードーは最後まで走っていたけど、それは奴がおかしいだけな気がします。だからこれを見て「じゃあファストブレイクでも走れるように出場時間を減らせばいいじゃん」っていうのは簡単ですが、それは難しかった。

マキシ・クリバー 25.4分

ドワイト・パウエル 13.8分

ジョシュ・グリーン 7.6分

フランク・ニリキナ 10.4分

ダビス・ベルタンス 10.7分

 これは控えのウィング、センター陣。クリバーはしっかり重宝されているものの、他の選手にはミニッツが与えられませんでした。JGやフランキーはディフェンスではしっかりブロック&ドードーの穴埋めが出来たものの、スリーが入りませんでした。そうするとスペーシングを確保できず、結果としてドンチッチに負担が掛かってしまう。

JG 3P 0.3/1.4(22.7%)

フランキー 3P 0.5/1.7(30.0%)

 これじゃあちょっときついよねって感じです。そのJGとフランキー以上にミニッツを与えられたベルタンスですが、こっちは逆にディフェンスが出来ないことがネックになりました。元々ディフェンスが出来ないという前評判から見ていると、サイズの割に素早くローテーションしてくれていて思ったよりはだいぶ守れていたんですが、どうにも止められないとすぐにファウルしてしまうベルタンス。

ブロック ファウル数 2.7

ベルタンス ファウル数 1.4

 仮にブロックと同じミニッツが与えられていた場合、ファウル数は5.1となり、毎試合ボーナスフリースローに悩まされていたと思います。実際悩まされたしね。

3&Dウィングの層が薄かった

 ブロックは39.7%、ドードーは42.6%の確率でスリーを決めながら、ディフェンスでも奮闘してくれました。ただ本来それに続くはずのウィングであるJG、フランキーは3の部分で問題があり、ベルタンスはDの部分で問題があった為、仕方なく働いてもらうしかなかったという事情がありました。だからオフシーズンに補強方針として、

ブロックとドードーの負担を減らすウィングを補強する

 こう動くことで二人のミニッツを減らし、代わりにファストブレイクで走ってもらうことでオフェンスの改善を狙うことは可能でした。それはつまりドンチッチのオフェンスの負担を減らすことにも繋がるわけです。


 ③のリバウンドについてですが、これは確かに最も分かりやすい課題ではありました。リバウンド魔人のルーニーにボコボコにされたしね。そしてそれをビッグマンの補強で解決しようとするのも合ってはいるけど、それはウィングの補強を後回しにしてまでするべきことだったのかと言われたら、個人的には間違っていると思います。

21-22RS DREB% 73.3%(リーグ10位)

21-22RS OPP2ndチャンスポイント 13.1(リーグ17位)

 そもそもDREB%はチーム上位だったマブス。73.3%はウェストだと5位なのでDREBの確保率が問題かと言われると、別にって感じです。ただ2ndチャンスポイントで見るとリーグ17位っていうね。だから他のチームに比べて、OREBを取られるとどうしようもないってことです。これがOREBでやられてる感が強い原因だろうね。

OREBを取らせないけど、取られるとどうしようもない

 「ビッグマンが欲しい!」っていう人は後者を嫌ってのことなんだと思うし、気持ちは分かります。ただビッグマンがパウエルとクリバーのチームでリーグ10位のDREB%っていう強みにも目を向けて欲しくなります。二人はサイズがない代わりに走れるセンターなので、やはりサイズの割に高いDREB%からの速攻っていうシチュエーションを増やしてほしいと思う管理人です。というのはレギュラーシーズンの話。

21-22PO DREB% 70.6%(11位)

21-22PO OPP2ndチャンスポイント 14.2(13位)

 プレーオフになるとDREB%、2ndチャンスポイントのどちらも悪化しました。ちなみに()の順位はプレーオフチームの中での順位なので、明確に問題を抱えていると言えます。

対ウォリアーズDREB% 72.6%

対ウォリアーズOPP2ndチャンスポイント 14.4

 まあ良くはないよね。この内勝利した試合の2ndチャンスポイントが9.0に対して、負けた試合の平均は15.8なので、確かにOREBで負けたように見えます。

対ジャズDREB% 71.6%

対ジャズOPP2ndチャンスポイント 14.5

 実はウォリアーズ以上にリバウンドで苦しんだジャズ。まあゴベアがいたしね。この内勝った試合の2ndチャンスポイントは11.3に対して、負けた試合は21.0。

21.0

 そんなことがあり得るのかって数字ですが、これでシリーズは勝ってるんだよね。これに比べたらウォリアーズ戦でのリバウンド問題なんて屁みたいなものです。とはいえリバウンドが課題なのは明白。だからやはりビッグマンは必要になります。でもそれはパウエルみたいにチームディフェンスを実行出来る選手じゃないと、リバウンド以前にディフェンスが崩壊します。そのパウエルすらガードを追えないからプレーオフでは干されたし。

 そう考えるとわざわざサイズに拘る必要ってあるの? って思ってしまいます。リバウンドに強いウィングでいいじゃん。そういう意味でカイル・クズマに非常に興味があった管理人。

 

 大まかに3つの課題があった21-22シーズン。管理人的にはオフェンス問題が最も根深く、且つ簡単に解決出来る問題だと思っていました。控えレベルでもいいから3&D選手を連れてくれば、ウィングの層が厚くなってブロック&ドードーのプレータイムを減らせて、余った体力で走ってくれるようになるって感じで。でもそうはならなかったんだよね。次回に続く。