オールスターブレイクっていうのは、選手にとっては休息期間であると同時に、チームとしてはトレードで獲得した選手とシーズン中にじっくりチーム練習が出来る貴重な期間でもあります。だからオールスター明けにチームの状況が変わったり、もっと言えば勝率が大きく変わることもあります。NBA.comでもオールスター前後っていうフィルターがあるぐらいだし。
マブスで言えばギャフォードとPJという新加入選手がどういう風にチームに溶け込むのかが確認できる試合であり、いわばここからがトレード後のシーズン本番と言えます。そんなマブスがどう変化したのか。そしてロイス・オニールとサディアス・ヤングがサンズでどう活躍するのか、注目の一戦……と思ったらヤングは欠場か。ブラッドリー・ビールもいないし。
■オールスター明けの変化
最初に感じたのはディフェンスの変化でした。守れないというか、守る気を感じないディフェンスだったマブスでしたが、しっかりヘルプとローテーションを実行していました。最初のポゼッションではヌルキッチを起点にデビン・ブッカー→左ウィングでスペースを貰ったケビン・ディラントとパスを繋ぎますが、PJがすかさずKDに詰め寄ります。そこでKDはドライブを選択して、最終的にミドルを決めるわけですが、目立ったのはPJとライブリーでした。
身長2mには見えないサイズがあるPJ。サイズの割にローテーション早いなーと思っていたんですが、ウィングスパンが219センチとのこと。だからデカく見えるのか。
ウィングの身体+センター並みのウィングスパン
これがデカいのに動けているように見える理由に感じます。デカいのに動けるんじゃなくて、普通のウィングだけど普通以上にデカく見えるっていうイメージ。似たようなタイプがジェイレン・マクダニエルズかな。まあマクダニエルズはもっと動けるんだけど。ということで最初のポゼッションからディフェンスで見せたPJ。でもこれってオールスターブレイク前からそうだったよね。ヘルプもローテーションもしっかりしてくれていたので、これがチーム練習の賜物とは思えないプレーでした。
そしてライブリーですが、こちらはオールスターブレイクの影響を多少受けているように見えます。ヌルキッチとのツーメンゲームを仕掛けようとしたブッカーに対するショーディフェンスで動きを封じ、KDにパスを捌くとすかさずヌルキッチとのボックスアウトに奮闘、KDのミドルに対してもしっかりチェックに行くと八面六臂の活躍でした。
元々ショーディフェンスの曖昧さがかなり目立っていたライブリー。中途半端なプレッシャーでハンドラーの動きを止めきることが出来ず、ミスマッチになったセンターにパスを捌かれることが多かったんですが、きっちりヌルキッチへのパスをケアしていました。ここはシーズン開幕から徐々に改善してきていましたが、ここの受け渡しがスムーズになったのは好印象です。ここはシーズンを通して見ないと分からない部分。
マブスの最初のオフェンスはPJがドライブしてヌルキッチにスティールされるというよく分からないオフェンスでした。ターンオーバーからブッカーがプルアップスリーを沈めます。
迎えたポゼッションではドンチッチとPJのツーメンゲーム。ボールを交換しながら空いているインサイドにPJが入ったり、ドンチッチのドライブに合わせてアウトサイドに飛び出したりと、ここでもポジショニングの良さが光ります。まあドンチッチが外したんだけど。
10:55。ここのトランジションからのポゼッションで、エリック・ゴードンの酷さが目立ちました。そもそもその前の、ブッカーがプルアップスリーを沈めたポゼッションでも凄く気になったんですが、ゴードンが走ってないっていうね。トランジションオフェンスのセオリーは数的有利を作ることなので、シューターが如何に早くコーナーに辿り着けるかっていうのは超重要、というか大前提なんだけど、そもそも走ってすらいないってどういうことだよ。
そしてこのポゼッションでは走ったは良いものの、既に左コーナーにいたグレイソン・アレンのところへ走って行くもんだからコートが広がらない。これによってスペースが確保できず、ブッカーが一瞬立ち止まってしまいました。ゴードンがちゃんと右コーナーにいたら余裕でファストブレイクが成立していたように見えます。その後のプレーでなんとか挽回出来たから良かったものの、それもアレンに助けられたようにしか見えない。
1/24サンズFBP/OPP FBP 24/6
前回対戦ではファストブレイクで点を取られまくり、マブスは取れませんでした。それが今回はサンズのFBPが11点、マブスが21点と逆になっています。そして1/24の試合ではゴードンが欠場で代わりにビールが出ており、こう見るとビールがゴードンになったから負けたように見えます。そのぐらい今日のゴードンはエネルギーのないプレーをしていました。
ゴードン 16PTS 1REB 1AST 2STL 1BLK
FG 50.0%に加えて3P 57.1%と高確率で決めたゴードン。このボックススタッツを見ると文句のつけようがないんだけど、数字以上に悪い部分が目立ちました。当然+/-も最下位なんだろうなーと思ったら、そうではないっていうね。やっぱり+/-は信用ならない。とはいえ3.2ミリオンしか貰っていない選手なので、敗北の責任をゴードンに押し付けるのは違うよね。46.7ミリオン貰って試合に出ないビールが悪い。
■ギャフォード
第1Q中盤にライブリーをベンチに下げ、代わりにギャフォードが出場します。オールスター前から変わらぬ活躍を見せるPJに対して、ギャフォードはどういうプレーしたのか。
早速ドンチッチとのP&Rが始まるのかと思いきや、オフスクリーンからゴール下に居座るギャフォード。このスクリーンアクションからロブパスを貰いたいってのは分かりますが、いまいち噛み合わずにOREB役みたいになります。03:05にドンチッチとP&Rするポゼッションがありましたが、ここもギャフォードのダイブのタイミングが噛み合わない。まあそれは別に良いです。問題はその続き。
ドンチッチがギャフォードとのP&Rからパスを選択し右コーナーのDJJにボールが渡ります。エクストラパスの判断がよろしくないDJJなのでTHJにチェストパスじゃなくバウンドパスとよく分からないチョイス、普通にサンズのローテーションが間に合います。ただTHJに対して、元々DJJをマークしていたゴードンも飛び出したので一瞬フリーになったDJJにボールを戻すとカウンタードライブしました。ペイントエリアに侵入したところでDJJがクリバーにパス、スリーを打てなかったので今度はクリバーがドライブ、KDにマークされたクリバーはペイントエリアに触れることすら出来ずに変なフローターを打って外します。
インサイドを支配するギャフォード
DJJ、クリバーのカウンタードライブの間、ずっとドライブコースに突っ立っていたギャフォード。その結果マークマン+ユーバンクス&ギャフォードのトラップディフェンスみたいになり、DJJとクリバーはゴール下に侵入出来ませんでした。ウッドを思い出すなあ。ということで大変邪魔だったギャフォードは第2Q頭に下げられます。
第2Q07:40辺りでもう一度出場したギャフォード。さすがにインサイドのポジショニングについて修正があるかと思いましたが、相変わらずインサイドを支配しまくります。JGのカッティングに対してコースを空けてボールを貰うような動きをしてはいたので指示はあったんだろうし、やろうともしたんだろうけどゴードンにスティールされます。そのゴードンにトランジションスリー決められるし。
そもそもがシュート力がなくてインサイドのスペースを潰しやすいセンターというポジションは、ダイブする前のポジションをゴールから離したり、逆にスクリーン役として活用したりと使い方を工夫する必要があります。工夫すれば逆にドライブコースを無理やり作ることが出来ますが、逆にその工夫がないとただインサイドのスペースを潰すだけになってしまいます。それっていうのはちゃんとオフェンスの選手のポジショニングを把握していないと出来ないんだけど、ギャフォードはそういうところがだいぶ弱そうに見えました。ホームズが恋しい。ということでギャフォードは下げられ、クリバーをセンターにしました。恐らくライブリーはプレータイム制限があるんだろうね。パウエルはいよいよ控えの控えって感じか。
■どうしたもんかね
カイリーがシュートを外したところから始まった第3Q。サンズのトランジションオフェンスで目立つのはボールをプッシュするアレン……ではなくノロノロ左コーナーに走るゴードンでした。どうしたもんかね。
ゴードンオフェンス時平均速度 3.95
気になって調べてみたけど、やっぱりかって感じです。この数字はリーグで下から13番目。一試合しか出ていない選手等、全選手の中でね。
ビールオフェンス時平均速度 4.27
別にビールも動いている方では全くない、というかサンズ自体が走りまくるチームじゃないけど、確実に差を感じます。その分ディフェンスで動いてくれればいいんだけど、こっちも3.47で全選手中下から22番目っていうね。ちなみにKDは下から20番目、ドンチッチは下から9番目で、2試合以下しか出場していない選手を除くとレブロンと0.09差で最下位。
極めつけは10:45のポゼッション。アレンがライブリーにブロックされたシュートが目の前を転がりますが、飛びつく素振りもなくアウトオブバウンズになった後にボールを確保、審判に渡してディフェンスに戻ります。ここまで来ると本人のやる気もだけど、チームのカルチャーに問題があるとしか思えないよね。
最終スコア 113対123(マブス勝利)
相変わらずヌルキッチがいないと酷いオフェンスになるサンズ。ぶっちゃけ見てられなさで言えば今のウィザーズより酷いんだけど、今日は輪をかけて酷かったように思います。ハーフコートオフェンスでスター頼みなのは相変わらず、それに加えて速攻で点を稼ぎまくったのが前回対戦でしたが、そこから速攻の得点をゴッソリ削ったのが今日の試合って感じでした。
前回サンズ
ターンオーバーからの得点 21
ファストブレイクポイント 24
合計45点と大盤振る舞いだったわけですが、これが今回はターンオーバーからの得点が13点、ファストブレイクポイントが11点の合計24点。前回のサンズの最終得点が132点だったので差し引くと……なんか本当に速攻の悪さが足を引っ張っただけのように見えるな。改善したといってもマブスは相変わらず守れているわけではないし。ただマブスのターンオーバーが14→10と減っているので、トレードで獲得した選手+前回欠場していたカイリー、ライブリーがいたから勝てたとも言えます。管理人には前回欠場していたゴードンがいたから勝てたとも言える試合に見えました。
ブッカー 35PTS 5REB 8AST
45点取った前回ほどではないものの、大活躍したブッカー。ぶっちゃけあんまり好きな選手じゃなかったけど、これだけ苦しそうに点を取る選手は中々いないよね。試合を重ねる毎に彼へのリスペクトが増しています。今日はヌルキッチの代わりにオニールを起用していたサンズでしたが、やっぱりブッカーが勝手にミドルを決めるのであんまり関係なかった気がします。オニールはスリーが打てるのでスペーシング的にはヌルキッチより良いんですが、今日はスリーが2/8なのでそれほど良くもないっていう。勝率以上に不安な要素がてんこ盛りのサンズ。どうしたもんかね。