あ♥@マブスファン

マブス専門NBAブログ(不定期)

【23-24 RS-54】スーパーディフェンダー・ネムハード

 

 第1Q序盤からドンチッチにベネディクト・マサリンをマッチアップさせて守っていたペイサーズ。ですが08:20のポゼッションから、カイリーについていたアンドリュー・ネムハードがスイッチして、ドンチッチのマークマンになりました。193センチ86.6㎏と、どう考えてもマサリンより守れなさそうな彼をドンチッチにつけた意図とは。盛り上がってきました。

 

 ネムハードがついた最初のポゼッションで、ドンチッチは再びライブリーのスクリーンでミスマッチを作ろうとします。しかしこれを軽やかに躱しミドルを外させます。トランジションとなり、ゴール下でボールを貰ったターナーの上からもぎ取るライブリー。なんか普通にライブリーのことが苦手そうなターナー。ということで一転マブスの速攻のチャンスになるわけですが、ドンチッチのパスがハリバートンにカットされ、走り出したJGが置き去りにされます。アウトナンバーになった状態でターナーにコーナースリーを打たれますが、外してくれて助かったマブス

 07:45あたりのポゼッションでカイリーがボールをプッシュしますが、それにマークするのはネムハード。ということでネムハードはドンチッチ担当ではなく、ハンドラー担当に任命されたようです。JGのだいぶムービング気味なスクリーンに引っ掛かりました。それを見てハリバートンがカイリーから離れられなくなった為、フリーになったJGにパスが渡りスリーが決まります。その後もペイサーズ側のシュートが決まろうが決まるまいが、ハイペースでボールをプッシュしたマブスは得点を重ね、ペイサーズタイムアウトを取りました。

 このボールプッシュの部分でも注目したいところがあり、それはペイサーズトランジションディフェンスです。07:03からの展開で、カイリーは物凄い速さでコーナーへ走って行きました。画面から完全に消えるぐらいにね。そしてそのカイリーにボールが渡るんですが、その頃には既にディフェンダーが四人戻っています。

優れたトランジションディフェンス

 言ってしまえば早く戻るっていうだけなんだけど、この四人のディフェンダーのフロアバランスは普段から徹底していることが伺えます。カイリーにはネムハードがマークしているんですが、仮にそこが抜かれたとしてもゴール下への侵入を防げるように、シアカムがカイリーとゴールの間に立っています。トランジションディフェンスが悪いチームだと、例えばこの状況でJGに対して、ハリバートンネムハードの二人が寄ってしまい、フリーになったカイリーにシアカムが飛びついたところでカウンタードライブされてすこ抜きされるっていうことが起こり得ます。今までこの部分がグダグダだったり、そもそも戻ってすらいないチームとばかり試合していたので、ペイサーズの良さが余計に際立ちました。

ペイサーズトランジションポゼッション 19.0(リーグ19位)

 トップレベルのペースを誇るペイサーズですが、その割に相手のトランジションの回数は寧ろ少ない方です。相手ポゼッションの割合で見ると16.6%でなんとリーグ23位とかなり低い。つまり比較的簡単に点が取れるトランジションオフェンスを許していないということです。まあこれはペイサーズ側のシュートが高確率で決まるからっていうからくりがあるんだけど。ただこのトランジションディフェンスの徹底っぷりを見ると、それだけではないように思ってしまいます。ディフェンスが良いからこそ数字に表れないっていうね。

 

 だいぶ話が逸れた気がしますが、タイムアウト明け。マブスはライブリーをギャフォード、カイリーをTHJに変更します。ドンチッチがハーフコートを越える前からしつこく絡むネムハード。PJがスリップアクションからボールを貰うとフローターを沈めます。ここはシアカムのミスっぽい。

 05:25のポゼッション。相変わらずネムハードにつかれるドンチッチの脇で、PJとのスクリーンでミスマッチになりTHJがスリーを沈めます。04:55あたりのポゼッションではドンチッチのところへギャフォードがスクリーンに行きます。これに僅かに引っかかったネムハードはドンチッチの少し後ろから追いかけますが、ドンチッチにヘルプに寄ったターナーの裏を走るギャフォードにロブパス。初めてドンチッチがセンターのスクリーンでミスマッチを作りました。

 ここまでのペイサーズの守り方は、スクリーンに対してはスイッチせずにオーバーで守り、ハンドラー対センターの形を作らせないことを徹底していました。ドンチッチ対ターナーのような、スピードのミスマッチになると必然的にオーバーヘルプ気味にしなければ守れなくなるので、そもそもミスマッチにならないようにしようって感じ。

スクリーン対応がディフェンスの鍵

 なんで如何にも守れなさそうなネムハードをハンドラーにつけていたのかと思っていたんですが、彼はこのスクリーン対応が抜群に上手い。ハンドラーとスクリーナーとの僅かな隙間に体を滑り込ませて、ドンチッチにべったり張り付いていました。それこそJGが体当たりしてようやく引っかかったって感じです。

 最初にドンチッチをマークしていたマサリンも、実は結構上手かった。ただそれなりにサイズがあるのでどうしてもスクリーンに引っかかってはしまうんですが、引っかかった後ハンドラーの正面に移動する時のスピードが早かったです。サイズの大きさ故に対応が悪くなってしまう部分を、スピードという身体能力で解決していました。ただドンチッチぐらいのハンドラーになると、一歩でも遅れると決定的なシュートチャンスになってしまうので担当を変えられたって感じだと思います。あとシンプルに1on1でやられまくってたしね。

 そのネムハードのアンサーがギャフォードの起用。サイズこそライブリーに劣るものの、さすがのスクリーンの分厚さを見せました。ライブリーのスクリーンには何もなかったかのように躱したネムハードでしたが、ギャフォードのスクリーンに一瞬引っかかった結果、04:55のポゼッションでドンチッチの後手に回らせることが出来たというわけです。タイプの違うセンターを使い分けた良いアジャストでした。それでも追いついてくるから凄いよね。

 マサリンには効いたものの、ネムハードには無力に近かったライブリーのスクリーン。対してネムハードにも通用したギャフォードだったので、この試合で言えばギャフォードを使うメリットの方が大きかったように思います。ただディフェンスはやっぱりライブリーの方が良いし……難しい判断だ。まあぶっちゃけペイサーズを守り切るなんて無理そうだったので、やっぱりギャフォードの方が良さそうだと思いました。

 04:30のところでシアカムのスリーが外れたシーン。シュートチェックに行ったギャフォードはそのままフロントコートに走り出しました。THJがターナーのボックスアウトをしていたところを見ての判断だったんだろうけど、これはマジで偉い。結果的にドンチッチのアウトレットパスが逸れたのでシュートは外れたんですが、感心する運動量でした。そして誰よりも早くギャフォードのところへ走ったハリバートンもね。ワンテンポ遅れてきたシアカムとターナーに囲まれて危うくボールをロストするところでしたが、これがファウルになりました。

 今までもギャフォードはちゃんと走っていたんだけど、ぶっちゃけ対戦してきたチームがアレだっただけに褒めにくかったんだよね。わざわざギャフォードである必要なくない? みたいな。だからようやくギャフォードの武器が際立った今日の試合でした。

 その後、なぜかロッカールームに下がったドンチッチ。カイリーがハンドラーになります。ペイサーズターナーがジェイレン・スミスに、ネムハードがTJマッコネルになりました。スクリーン一枚で簡単に剝がれてくれるマッコネルなので、ペイサーズはヘルプディフェンスを強めます。その結果オープンが徐々に作られてきてマブスのパスが回るようになりました。こうなりたくなかったからスクリーン対応の良いネムハードを起用したように見えるカーライル。まあでも、マッコネルの反応が普通な気がするけどね。別に特別悪いとは思わないし。

 03:30のポゼッション。ギャフォードの逆のスペースへ侵入するカイリー。ディフェンダーを引き付けてクリバーにキックアウトしますが、ここはローテーションが間に合います。するとクリバーがカイリーにもう一度ボールを戻し、ハリバートンがカイリーとTHJの二人を見る形に。カイリー→THJのパスからもう一度戻すと読んだハリバートンがスティール、ライブターンオーバーになり自ら押し込みます。カイリーとTHJを同時に守ったハリバートンでした。まあシアカムのローテーションがあったからなんだけど。極端なまでにスイッチとオーバーヘルプを嫌ったペイサーズでしたが、普通にローテーションがスムーズなのは何故だ。

 ところで、カイリーはなぜかスクリーンの逆を使いたがるよね。スクリーナーじゃなくなったギャフォードはやっぱりインサイドのスペースを潰すので、ゴール下への侵入が難しくなりました。そしてリバウンドを取られると確実にファストブレイクからの得点に繋げてくるマッコネルなので、結果的に同点になりました。フェイクとして有効っていうのは分かるけど、スクリーンを使うからロブパスのコースが生まれるわけで、やっぱりインサイドのスペーシングのマネジメントはだいぶ怪しそうなカイリー。続く。