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マブス専門NBAブログ(不定期)

【23-24 RS-44】ドンチッチの73点

 

 今シーズン初となるホークス戦の雑感です。ライバルウィークということで昨日はセルツ対ヒート、キングス対ウォリアーズ等の熱い試合があったわけですが、その系譜の試合になります。2018年にドラフトされて新人王を争い、三年目に先んじてカンファレンスファイナルに出場したヤング。その年はクリッパーズに二年連続のプレーオフ一回戦負けを喫したドンチッチですが、翌年は逆にマブスがカンファレンスファイナル出場、ホークスは一回戦でヒートに敗退と一進一退の勝負をしています。いつかマブス対ホークスのファイナルとか見てみたい。

 そんな今日の試合ですが、結果は多くの人が知っているとおり。

148-143

 オーバータイムなしで互いに140点超えの超ハイスコアリングゲームを制したマブス、というかドンチッチでした。

73PTS FG 25/33(75.8%) 3P 8/13(61.5%) FT 15/16(93.8%) 

10REB 7AST 4TO

 超人的なパフォーマンスを見せつけたドンチッチ。この得点は歴代3位。センター、というかチェンバレンを除けばコービーの81点に次いで歴代2位の数字です。リバウンドでも奮闘し、アシストもしっかり残しています。これで4TOしかしていないっていうのは驚異的だ。

 

 四日前にエンビードが70点試合を記録して騒がれていましたが、あっさり塗り替えてしまったドンチッチ。特筆すべきはエンビードはぶっちゃけ70点取らなくても勝てそうだったのに対して、ドンチッチは73点取らなければ勝てなかったということ。結果は5点差ですが、ファウルゲームで得た2点を加味すると、73点ではなく70点だったらオーバータイムにもつれ込んでいたかもしれないわけです。勝つ為に必要だったから取った73点というわけです。必要だからって普通は取れないよ。

 裏を返せばドンチッチが73点取らなければ勝てなかったかもしれない今日の試合。なぜそれだけ点を取らなければならなかったのか、今日はそんなところに触れてみましょう。

 

■崩壊していたディフェンス

 今シーズン18勝27敗と大きく負け越し、プレーイン当落線上を戦っているホークス。どうやらトレイ・ヤングとジェイレン・ジョンソンをコアとして再建に向かいたいとのこと。しかしTDLの締切が近づきつつある今の段階で一つもトレードが成立していません。チームワーク的に大丈夫か? と思ってしまう。

ホークスOFF/DEFレーティング 116.7/119.8

 リーグ14位のオフェンスと、27位のディフェンス。ちなみにホークスよりDEFレーティングが悪いチームはピストンズ、ウィザーズ、ホーネッツと、プレーオフで勝ちに行くにはあまりに酷いディフェンスです。ちなみに26位のペイサーズはリーグ1位のオフェンス力で賄っています。そんなホークスと同じくディフェンスの悪いマブスなのでお互いに守れない展開が続くのは予想出来るわけですが、今日の試合でのマブスのOFF/DEFレーティングは139.6/133.6とどちらも異常な高さです。分かりやすくホークスのディフェンスを崩壊させたし、崩壊させられています。これを平凡なオフェンス力のホークスにやられたっていうのがね。

守れなかったから、ドンチッチが点を取るしかなかった

 まあ一人の選手がハイスコアを取る試合なんて大体味方が決めなさすぎるか、全然守れないかのどちらかです。

ドンチッチ以外 75PTS FG 26/52(50.0%) 3P 11/22(50.0%)

 めちゃくちゃ決めています。だからやっぱり、明確に守れなかったことが原因と言えるでしょう。守れないといっても具体的に何が守れなかったのかって話なんですが、今日に関しては何も守れていませんでした。ドライブで抜かれるし、スクリーナーのダイブは止められないし、アウトサイドでも打たれまくりの決められまくり。そもそも守る気あんのかってぐらいでした。

 

■ホームズの起用

 ぶっちゃけドンチッチの73点よりこっちの方が印象的な試合でした。ドンチッチなら遅かれ早かれやりそうな気がしたし。

 今まで頑なにライブリー、パウエルの代役センターとしてグラントを起用していたキッドが、第2Qにホームズを起用しました。しかもドンチッチと同じ時間帯に! 第2Qにホームズを起用っていうのは何度かありましたが、ドンチッチと一緒に使うっていうのは物凄い久々です。この時点で胸騒ぎがしていましたがなんと第4Qにもホームズを起用、目ん玉飛び出るかと思ったぞ。

 パウエルの欠場っていうのは一つの要因だとは思いますが、今日に関してはパウエルがいたとしても使っていた気がする管理人。だっていつもはライブリー、パウエルの代役をグラントに任せていたんだから。明らかに今までとは違う起用法をしたキッド。何か明確な意図があったと考えざるを得ません。そんな今日のホームズですが、

ホームズのレーティング 146.9/156.3

 めちゃくちゃ点が取れるけど、全然守れませんでした。これは管理人が試合を見た時の印象と一致しています。センターとしては動けるホームズですが、ガードにターゲットされるとさすがに追いきれないし、センター対決だとサイズ的に物足りない。ちなみに、

個人のOFF/DEFレーティング

グラント・ウィリアムス 126.2/112.5

デリック・ライブリー 147.5/117.5

 DEFレーティング的に一番守れていた二人。ライブリーはリムプロテクションっていう個人技で守っている感はあったけど、グラントはどうやって守ったんだ? ってことで思い返してみたら、インサイドに侵入してきたハンドラーに簡単に寄っちゃうライブリーに対して、グラントは細かく動いて連携を邪魔することに集中していたような気もする。実際ホークスに限らず、ライブリーは裏のスペースにパスを通されてダンクみたいなシーン結構あるしね。ヤングと他の選手とのツーメンゲームを、ヤングの個人技に仕向けたグラント。まあそれでも点は取られていたけど「得点パターンを減らす」ことは出来ていたイメージ。ということでグラントだけはいつも以上にホークスのオフェンスを機能不全にさせていた今日の試合です。いつもは逆なのにね。

 個人技で守ったライブリー、連携を消したグラントに対して、全然守れなかったホームズ。だからディフェンス面での起用ってわけではなさそう。

ホームズの起用=オフェンスのテコ入れ

 こんな印象です。実際OFFレーティング146.9はJG、ライブリーに次いで3番目。グラントとは20.7も開きがあります。そんなホームズは今日の試合でスクリーンアクションからフリーになり、カッティングしてきたJGに見事なアシスト、同じシチュエーションからドライブしてゴール下を押し込み、OREBを確保して決めきる等いい仕事をしました。でもそれはオンボールのプレーの話で、実際はドンチッチのドライブコースを確保するペイントエリア付近のスクリーンプレーが目立ちました。ここを確率良く決めたドンチッチ。これがOFFレーティングの高さに繋がっている印象です。

 ホームズがここまで出来るとは、なんてことは思いません。だってそういうプレーの上手さで生き残っている選手なんだから。ライブリーみたいにスクリーンで押し負けて足が動いて、踏ん張ったところでオフェンスファウルを取られることもない。持ち前のスピードで素早く分厚いスクリーンを掛けてくれます。そんな彼がリーグ最高レベルのP&Rスキルを持つドンチッチとコンビを組んだら、そりゃそうなるでしょって思います。

 

■キッドのアジャスト

 ファウルトラブルでプレータイムが伸びなかったライブリーの代役として、グラントとホームズのどちらを起用するか、選択を迫られた今日の試合。ディフェンス面で貢献してくれるグラントと、オフェンス面で貢献してくれるホームズ。そこでキッドが選択したのがホームズでした。それは言い換えれば、

オフェンスの改善を重視したキッド

 ビビったね。キッドといえばディフェンスのコーチ、どうやって止めるのかをいつも考えていた彼がディフェンスを捨てた起用をしたんだから。そしてこれは、

守りきるのを諦めたキッド

 こんな風にも見えました。相手のオフェンス、しかもリーグ14位のホークスのオフェンスに白旗を挙げたってわけだ。その分攻め勝つことを選んだような今日のホームズの使い方でした。それがドンチッチの73点の裏にあったテーマのように感じます。

 しかし、まさか昨シーズンのあのメンツでもどうにかして守ろうと試行錯誤していたキッドが匙を投げるとはね。随分丸くなったもんだ。

 

■仮説

 仮説ですが、もしかしたらキッドはシーズン開始当初からオフェンスを重視した起用をしていたのでは? と今日の試合で思った管理人。実際開幕10試合はゆるゆるのディフェンスと高火力なオフェンスでそこそこ勝っていました。ただあまりに守れなかったから、更なるステップアップの為に自慢のディフェンス戦術を導入したけど結局改善はせず、そのままずるずると貯金を溶かしている現状です。もうすぐ勝率は5割、それはイコールでプレーイン当落線上になるってことです。そこでこのままだとまずいと思ったのかどうかっていう今日の起用法でした。

 多分だけど今までホームズを使いたがらず頑なにグラントを起用していたのって、グラントを戦術の一部として取り込む為だったんじゃないかな。そしてキッドの中である程度形になったのか、それとも諦めたのかは分かりませんが、グラントをセンターにしたスモールをやめたっていうストーリーも見える気がする。ホームズとドンチッチの相性が良いのなんてぶっちゃけプレーしなくても分かりきってるし、分かりきってることを試すっていうのは正しいレギュラーシーズンの使い方じゃないよね。

オフェンス戦術の熟成

 具体的には「ドンチッチに適したオフェンス戦術」の熟成って感じかな。ドンチッチがプレーしやすいオフェンスのプレーモデルを作る、このシーズンにはそんなテーマが隠されているんじゃないかと思い始めた管理人です。そう考えると戦術の核となり、適した戦術かを判断する為にドンチッチのプレータイムが長くなったことにも一応合点はいくし、フィニッシュ力が低い若手を使わないのも納得出来るっちゃ出来る。今シーズンはあくまで「選手」ではなく「戦術」を育てる期間って意味ではね。ドンチッチの73点は、今後のマブスのチーム方針が強く打ち出されたようなゲームプランでしたとさ。

 

 しかし切ないね。とうとうキッドに見放されたマブスディフェンス。見放されたというか、後回しって感じか。一応キッドの全部を守るディフェンス戦術は継続しているっぽいし。良くも悪くも、シーズン後半に強く影響を与えそうな試合でした。