マブスオフェンスの変化について書いてきていますが、その続きです。今日は一人の選手について焦点を当てて見ていきます。その選手がドワイト・パウエル。
22-23シーズンから一気にメンバーが入れ替わり、カンファレンスファイナルに出場した時のメンバーは5人しか残っていないマブス。その中で最も著しく変化したのがパウエルです。
4.4PTS 3.8REB 1.7AST 0.5STL 0.4BLK 0.6TO
70.9%のFGと1.8OREBという注釈がなければ、なぜこれでNBAで生き残れているのかと不思議に思う数字です。平均出場時間はキャリア二番目に短く、平均得点に関してはキャリアワーストと完全に「衰えたベテランセンター」に見えるパウエル。まあ実際、衰えているとは思います。平面のスピードはまだまだありますが、主に跳躍力の部分で「以前のパウエルなら届いていたのにな」みたいなことを特にシーズン序盤は感じました。まあ31歳でアキレス腱断裂の経験がある選手だから、そう考えると寧ろよくあんなに走れるな。そんなパウエルですが、
パウエルOFF/DEFレーティング 119.7/114.5
マブスでは貴重なしっかりミニッツを貰いつつNETレーティングがプラスの選手です。ちなみにプラスの選手はパウエルを除くとエクサム、セス、AJ、ライブリー、カイリー、ドンチッチです。エクサムは+8.3でぶっちぎり。
マブスOFF/DEFレーティング 117.4/117.8
現時点でリーグ10位のOFFレーティングと中々な数字を残しているマブス。そこにパウエルの数字をそのまま当てはめると、彼がいる時間はリーグ4位のオフェンスになります。クリッパーズとタイでウェスト1位。そしてリーグ23位のディフェンスはリーグ14位まで上がります。
ということで、ボックススタッツで判断してはいけない典型例みたいな選手です。記事に載せると無駄にボリュームが増えるので敢えて載せませんが、パウエルとチームのOFF/DEF/NETレーティングを比較してみました。その結果アドバンスドスタッツ的に見るとパウエルは「オフェンスもディフェンスもちょっとずつ良くなる選手」って感じです。そして今シーズンもパウエルがいるとちょっと良くなるオフェンス。良くなった結果ウェスト1位に返り咲くわけですが、彼がいる時のオフェンスについて見てみましょう。
■P&Rロールマン
パウエルといえばP&Rのロールマン。208センチのサイズはセンターとしては大きいと言えないものの、持ち前の身体能力を活かしてタフなスクリーンからのダイブを得意としています。このダイブのスピードと跳躍力で多少無茶なパスでもキャッチしてくれます。その上ハンドラーのドライブコースを作るインサイドのスクリーンもきっちり掛けてくれて、尚且つOREBにも絡んでくれます。その為、パウエルがロールマンとしてプレーした時のPPPはどのシーズンでも概ね1.40代と非常に期待値が高く、有効なオフェンス戦術と言えます。
ただやっぱりターンオーバーは増えている様子で、パウエルロールマン時のTOV%は昨シーズンから6.8→12.9%と大幅に上昇しています。自身の衰えなのか、連携が取れていないのか、ここは微妙なところです。この動画はドンチッチとパウエルのP&R集。ぶっちゃけドンチッチが上手すぎてパウエルの良さが見えにくい感はあるんですが、P&R集ってYouTubeに全然なかった。
■アシスト能力
これがこの記事の本題。今シーズンのパウエルは急激にポイントセンター化しています。まあポイントセンターっていう言葉は完全に造語なのでちゃんとした定義はないんですが、ただの優秀なロールマンだったパウエルが、今シーズンは自身のパスを中心としたオフェンスを展開し始めました。
そんなポイントセンター・パウエルのアシストは1.7でキャリアハイ。ちなみに過去のシーズンでは1.5ASTがキャリアハイでした。だから1.7ASTで何がポイントセンターだって感じですが、36分換算すると印象が変わります。
18-19パウエル 1.5AST →2.5AST(/36)
23-24パウエル 1.7AST →3.9AST(/36)
過去のキャリアハイシーズンから1.4も増やした今シーズンのパウエル。36分換算するとアシスト数はバム・アデバヨやユスフ・ヌルキッチ等、ポイントセンターとして名をはせる選手たちと遜色ない――は言い過ぎだけど似た数字になります。まあ今シーズンのアデバヨはだいぶ役割が変わってるからちょっと比較は難しい。ただ大事なのは他の選手との比較じゃなく、自分との比較です。
マブスの公式チャンネルが良い動画を上げていたので、これで紹介します。ちなみに管理人は英語が全く分からないので、もしかしたら動画中に同じ趣旨のことを話しているかもしれません。多分動画の使い方的にそうだと思います。
04:16辺りからパウエルのパスシーンが切り抜かれています。パウエルはパスの貰い方も上手い。最初の動画はスリップアクションでフリーになってドンチッチからボールを貰い、コーナーのカイリーにすかさずアシスト。ここは一瞬だけフリーになることを見越してパスしたドンチッチの上手さも表れています。次の動画はドンチッチにダブルチームを仕掛けたことでフリーになったパウエルのパス。最後はスクリーンに対してスイッチが起こったタイミング。ミスマッチになったことで一人でダイブしたパウエルは、コーナーからヘルプが寄ってきたところでパスを捌きました。
特徴的なのはパスを捌く判断の早さ。ただ早さを求めた結果なのか、パスコースが基本的にコーナーになりがちです。まあコーナースリーなんて何本打ってもいいので別に良いんですが。ちなみにクリバーも同じことが出来ます。二人ともカーライルにしごかれたんだろうな。
そして04:36辺りから今シーズンの特徴的なパスが切り抜かれます。トップでボールを貰ったパウエルはカットするセスにバウンズパスを合わせて簡単な2点を取らせます。次のプレーではTHJがオフボールスクリーンを仕掛け、それを利用したJGにバウンズパス。次のプレーもDJJとカイリーで同じことをしています。最初の三プレーがドンチッチ→パウエル→他の選手と、パスの中継役になっていたのに対して、今シーズンはパウエル→他の選手と完全に起点として働くことが増えました。パウエル→ドンチッチなんてこともあったしね。
とまあ完全に様変わりしたパウエル。じゃあなんでパウエルにそんなことやらせてるのって話ですが、それは次の記事で書こうと思います。
改めて二個目の動画を見ていると、なんか本当にこの記事と同じこと話してるんじゃないかと思ってしまいます。だって動画の構成がOFF/DEFレーティングの話からP&Rの話、それでパスの話でしょ。パクってんじゃないよと言いたくなるんですが、パクったのはこっちなのか。もし英語が分かる人がいたらこの動画の方が分かりやすいかもしれません。