あ♥@マブスファン

マブス専門NBAブログ(不定期)

【23-24 RS-48】バックス戦雑感

 

 オフシーズンにデイミアン・リラードを獲得してオフェンスの強化を図ったバックス。そして長年HCを務めていたマイク・ブーデンフォルツァーから新人HCのエイドリアン・グリフィンに変わり、オフェンス強化という目標は順調に達成しました。その分ディフェンスが酷くなったけど。ということで守れないチーム同士の対決です。こういう試合って純粋な意味で「どっちがスリーをいっぱい決められるか」の勝負なので点差の予想が出来ない。

 ディフェンスがだいぶ酷くなったものの、チームの方針通りの選手を獲得して、方針通りに沿ったHCを引っ張ってきたという意味では普通に成功していたんですが、シーズン半ばを過ぎたところでHCを交代したバックス。グリフィンの代わりにドック・リバースが就任しました。どうやらグリフィンは選手たちに嫌われていた模様。

 戦術に関してはグリフィンが作ったものを継続していけばとりあえずOKなんですが、どうやら雰囲気が違う立ち上がりでした。

 

■第1Q

 今シーズンのバックスは、リラードがボールをコントロールしてシューターとヤニスにボールを供給するオフェンスを採用しています。その意図としてはヤニスの強烈なゴール下の得点力をもっと活かしたいっていう感じ。そして高い位置でボールを持つとゴール下から締め出されるように壁を作られるヤニスなので、ついついフェイダウェイやショートレンジに頼りがちです。だから、

ヤニスにゴール下以外でボールを持たせない

 その為のシューター系選手の獲得に見えます。所謂「3Pとゴール下」という、現代バスケで重視されるシュートをより強く狙ったオフェンス戦術なわけです。そういった理由からフェイダウェイやショートレンジ等、ヤニス的には効率の悪いシュートが減り、ディフェンダーをスピードとフィジカルで破壊する怪物っぽさは薄れています。その代わり残している数字がより怪物的になりました。

 そしてこの第1Qの序盤はそういった雰囲気を感じさせていました。ボールを貰おうとするヤニスに寄るマブスディフェンス、そこで空いたシューターを見逃さずにパスを捌くリラード、クローズアウトしてヤニスが空いてイージーなゴール下を決める。逆にヤニスのゴール下を止めようとし過ぎるとシューターがスリーを打つっていう感じに、極めて分かりやすく効率的に展開していたわけです。

 しかし唐突にヤニスがポストでボールを貰います。まあポストアップするなとは思わないけど、なぜかここをしつこく狙うバックスでした。暇そうに見守るシューターたちと、あんまり決まらないヤニス。

第1Qヤニス FG 4/8

 ヤニスにしては低いFG%。その原因が2本のミドルレンジと3PAです。ミドルに関しては1本決めたものの、スリーを打って豪快に外しました。いや、何してんの。そういう苦手なプレーを減らす為に今シーズンずっと頑張ってきたのに。

第1Qバックス FG 9/27(33.3%) 3P 2/9(22.2%)

 まあ3Pが入らなかったのはしょうがない。あくまでゴール下での得点を増やす為に必要ってだけだから。それなのに2PのFGが38.9%はまずいでしょ。ゴール下を決める為のスペーシングを確保する為に打ち続けた3Pの裏で、2Pがこれじゃあね。そしてこの傾向はリラードがいない時間に強く出ていました。まあそれはそっかって感じ。

 それ以上に問題だったのがディフェンス。やる気あんのかってぐらいマブスにスリーを打たせました。

第1Qマブス 3P 9/14(64.3%)

 ブーデンフォルツァー時代からバックスのディフェンスは3Pを打たせるって感じでした。その分インサイドにブルック・ロペスを置いてペイントエリアの失点を防ぐっていう、分かりやすいコンセプト。勿論スリーに対してもチェックには行くんだけど、ペイントエリアでの失点に比べると優先度は低い。それがプレーオフ裏目に出ることもありました。

 そういった経緯からか、今シーズンはスリーに対しても積極的に顔を出すようになったバックス。ペイントエリアでの失点を犠牲にしてでもスリーを守る方向に動いたのに、そのスリーでめちゃくちゃにされていました。理由のひとつはそもそもアウトサイドのディフェンスが悪いガード陣という個人の問題。まあこれはしょうがない。恐らくその問題を飲み込んだ上で、オフェンスにメリットを見出したかったんだろうから。ただもうひとつの理由である、ヘルプディフェンスをサボるヤニスはちょっとどうなんだと思います。7フッターとは思えないスピードと、長い手足で非常に広い範囲を動き回っていたヤニスですが、どうにもペイントエリア付近から出たがりません。ヤニスが追いかけていたら幾らでもスリー止められただろと思うシーンが頻繁にありました。前はこんな選手じゃなかった気がするけど。

第1Qスコア 20対44(マブス22点リード)

 まるでマブスのディフェンスが良いように見えた第1Qでした。ゴール下を嫌ったヤニスの影響をもろに受けている気がします。ぶっちゃけヤニスってゴール下以外は全然怖くないし、打ち切ってくれないならいたずらにインサイドディフェンダーが集まるだけだから迷惑だよね。パスを捌けるからシューターは活かせるけど、スリーが決まらなかったら意味ないし。バックスの悪いところばかりが目立った第1Qでした。

 一方のマブスはと言うと、良くも悪くもスリーを打ち続けただけ。まあ普通に考えて、あれだけルーズなアウトサイドディフェンスされたら打ちたくなくても打つしかないよね。クリバーの起用もバックスのアウトサイドディフェンスの脆さを突いたってことだと思うけど、にしても打ちまくれました。だってスクリーン一枚でハンドラーはフリーになるし、そこからパスを出そうもんならロビン・ロペスが可哀相なことになってしまう。

 

■第2Q

 5アウトからスリー打ちまくりの第1Qとは打って変わって、ドンチッチのポストアップを狙うマブス。まあ妥当な選択。これだけ点差が離せているなら、あとはペースを下げて大量失点を防ぎつつ、適度に点を取ればいいだけだから。

 ただここでディフェンスの強度を上げたバックス。プレッシャーが強いって印象はないけど、ちゃんとスリーを追うようになりました。何なんだ。ぶっちゃけやる気の問題にしか見えません。そしてスリーをチェックされると急に入らなくなったマブスでした。

第2Qマブス 3P 2/11(18.2%)

 まともにディフェンスし始めたバックスですが、それだけでこんなに変わるものかね。ドンチッチが1/3、THJが1/3、他のメンバーは5本全て外しています。普通にオープンのスリーを展開出来ていたんだけど、尽く外した第2Qでした。そのせいか自分で突っ込んでターンオーバーしたり、珍しいパスミスをしちゃうドンチッチ。

 そしてバックスのオフェンスについても改善を見せました。改善というか、嫌がらずにゴール下を攻め続けたヤニス。

第2Qヤニス FG 5/5

 うち4本がゴール下、もう一本はスリー。スリーは置いといて、こういう攻め方をされるとマブスに限らず止めるのは困難になるわけです。だからこそ第1Qのシュートチョイスが謎過ぎます。ほんと、オフェンスもディフェンスも急にやる気出したみたいな印象です。

 

■第3Q

 相変わらずゴール下では強いヤニス。ポストプレーとかされない限りどうやったって止められないので、その分オフェンスの殴り合いで勝つしかないマブスですが、ちょっと足りなかった。

第3Qマブス FG 11/22(50.0%) 3P 3/8(37.5%)

 ゆるゆるなディフェンスから急にやる気を出されて面食らったような第2Q。そこから平常心を取り戻したようにロールプレイヤーたちは点を重ねていきました。

第3Qドンチッチ FG 2/7(28.6%) 3P 0/3

 割と好調だったロールプレイヤーたちに反して、シュートを外しまくったドンチッチ。「俺が何とかするしかない!」と、第2Qの印象に引っ張られたようなシュートチョイスでした。さすがにタフなスリーを打ち過ぎだ。久しぶりの試合で舞い上がっていたのか、ちょっと自制が足りなかったドンチッチでした。

第3Qリラード 4TO

 相変わらずバックスのオフェンスを止められなかったマブスですが、第2Qほど点が取られなかった理由はリラードのターンオーバー。フリーの選手にきっちりパスを捌くPGっぷりが裏目に出て、「フリーの選手に必ずパスをする」ってところをDJJは狙ってスティールしていました。割とディフェンスでは活躍していたDJJですが、ダンクをめちゃくちゃミスっているのであんまり印象が良くない。カウンタードライブの判断は良かったのにね。

 

■第4Q

 リラードとの連携なしでもゴール下でねじ込むヤニス。凄いね。

第4Qヤニス FG 7/8(87.5%)

 このクォーターだけで16点もぎ取ったヤニスでした。まあ止められないのはしょうがないし、それをオフェンスで上回れたら勝てるんですが、さすがにこのヤニスに確率勝負は通用しないか。

第4Qマブス FG 7/15(46.7%) 3P 2/6(33.3%)

 これに加えてフリースローが9/9なので、まあ上出来だと思います。だからちゃんと攻められたけどそれ以上に点を取られただけ、そんなバックス戦でした。

 個人的にだけど、マブスがオフェンス全振りのチームと戦う試合ってあんまり好きじゃないんだよね。新しいオフェンスを試そうにも、試す前に相手が勝手に崩壊してるし、こっちもこっちでどうやっても守れないし。多分クリバーを試合を通して引っ張ったのって、彼のオフボールスクリーンからの展開を試すっていうのと、ウィングでボールを貰った時のプレーメイク能力のデベロップが目的なんだと思うけど、第1Qとかクリバーマジでスクリーンしかしてないじゃん。

クリバー FG 8/11(72.7%) 3P 4/7(57.1%)

 シーズンハイの21得点を記録したクリバー。今日の試合で特徴的だったのはミドルレンジシュートを打ったこと。ドンチッチがマブスに来てからはシーズン通して20本以上ミドルレンジシュートのアテンプトがなかったクリバー。意地でも打たないってぐらいにミドルを打たない彼が今日は積極的に打っていました。今シーズンのキッドっぽい変化でした。

リラード 30PTS 3REB 8AST

 FG 10/11とヤニス以上に高確率でシュートを沈め、その上で8ASTと文句なしの活躍でした。フリーの選手にパスを捌いて、チャンスがあれば自分で決めるというPGの鑑。強い時代のブレイザーズをあまり知らない管理人なので、リラードってこんなにPGっぽい選手なんだと驚きました。スコアラーのイメージしかなかった。

 気になるのは6TO。フリーの選手に捌くのはいいけど、きっちり捌きすぎた感があります。だからあえてフリーの選手を無視して自らスコアリングするみたいなことがもっと必要そうに見えました。いかにもイーストのPGって感じで、いやらしさが足りない。まあそのいやらしさを追求しすぎると自己中って呼ばれるようになるんだけど、ここのバランスは難しい。でもリラードってずっとウェストのトップPGだったよな。

ヤニス 48PTS 6REB 10AST

 この試合だけで今シーズンのハイライトフィルムを賄えそうなぐらいに個人で奮闘したヤニス。でもそれでいいの? と思ってしまいます。もうレギュラーシーズンで証明することは何もないバックスなので、プレーオフに向けて戦術を作らないといけないはずなのにさ。ヤニスの個人技だけで勝てなかったからディフェンスを捨ててまでリラードを取ってきたのに、レギュラーシーズンからヤニスに独力で点を取らせてどうするんだ。それこそディフェンスの悪いマブス相手にリラードが6TOっていう課題がまだ残っているのに。今日の試合でいえば、リラードのスコアリングとパスのバランスを整えるのに使うべきだったと思うのに、そういった課題をぜーんぶ放置してヤニスが好き放題暴れちゃった。

 

 ヤニスのことは優勝したシーズンからめちゃくちゃリスペクトしていた管理人。ノビツキーみたいに絶対的チームのリーダーとしてフランチャイズ史上初の優勝を成し遂げたってところがね。しかしどうも今日の試合でちょっと……って感じました。

 グリフィン元HCとの折り合いがつかずに不満を口にしていたヤニス。実際にグリフィンの性格が最悪だったとしたらヤニスもお気の毒にって感じなんですが、少なくとも戦術面では求められていたことをたった半年できっちりチームに落とし込んだ有能HCです。バックスの革命的なオフェンス力に大きく貢献していました。だからドックがHCになってもこのオフェンスシステムを育て続けるものだと思っていたんですが、今日の試合に関してはそんなことを忘れてしまったかのようにヤニスの個人技大作戦でしょ?

将来的なオフェンス力向上より、自分が気持ちよくプレーできるHCを選んだヤニス

 こう見えて仕方ないんだよね。気の毒なのはリラード。ただでさえ外様のスター選手で肩身が狭かっただろうに、これで優勝出来なかったら「リラードじゃ優勝出来ない」ってレッテルを貼られそうです。ヤニスとグリフィンの関係が良くないってのはニュースになっていたけど、リラードとグリフィンの関係はどうだったんだろうね。もしかしたら残って欲しかったけど、生え抜きスターのヤニスには意見出来なかったのかなぁとか邪推してしまう管理人。リラードもグリフィン解雇しろって言っていたなら自業自得。