あ♥@マブスファン

マブス専門NBAブログ(不定期)

【雑談】ドニー・ネルソンからの脱却-2

 

 元強豪チームのマブスを地道に再建して、スター選手――というかドンチッチがいれば強豪に返り咲けるところまで作り上げたドニー。そこでドンチッチを見事に獲得したことで、僅か二年目の選手が中心となった当時歴代最強のオフェンスチームを完成させました。

 ちなみにドンチッチはホークスにドラフトされた後、トレードでマブスにやって来ました。マブスはドンチッチを獲得する代わりに同じ年にドラフト5位で指名したトレイ・ヤングと、翌年キャム・レディッシュになる一巡目指名権をホークスに送っています。再建チームなのに一巡目指名権を売りに出すという、ここだけ見るとよく分からない動きですが、それだけドニーはドンチッチに可能性を感じていたということが伺えます。勿論ドンチッチの獲得には、ホークスがトレードに応じてくれたことや、なぜかキングスが指名しなかったことなど多分に運の要素が絡んでいますが、トレードの交渉をしたのはネルソンだしね。

 ドニーがドンチッチに期待していたことを裏付けるエピソードはまだあって、それがクリスタプス・ポルジンギスの獲得です。マブスはドンチッチのルーキー契約中に一度勝負を仕掛ける為、DSJと2枚の一巡目指名権をニックスに渡しました。また指名権を放出したドニーですが、これは

ドンチッチのキャリア二年目には再建終了を確信した

 というサインに見えます。キャリア二年目の選手を見てプレーオフに行けるって確信するのは普通じゃないよね。ただそれだけドニーはドンチッチを信じていたし、その準備もしてきたってことだと思います。そして思惑通り19-20シーズンには歴代最高のオフェンスチームを作り、プレーオフで爪痕を残しました。

 続く20-21シーズンでは、ディフェンス力の強化にフォーカスしていたマブス。ジョシュ・リチャードソンのようなディフェンスの良いガードの補強からもその方針は伺えました。そういえば試合毎だったかで「今日のDPOY」を決めるっていう取り組みもしていたな。最初の受賞者はウィリー・コーリースタインだった気がします。しかし思うような結果にはなりませんでした。以下はOFF/DEFレーティング。

20-21マブス 114.6/112.3

 前年と比べてオフェンス力は低下し、フォーカスしていたディフェンスは寧ろ悪化しました。この頃からドンチッチとポルジンギスのディフェンスが狙われ出して、それを補えるだけの選手も戦術も用意できなかったマブスでした。Jリッチだけじゃあ足りなかったし、当時ルーキーだったJGはディフェンス以外は何も出来なかったし。ウェス・イワンドゥとかもいたな。

 そしてプレーオフに進出、再びクリッパーズとの対戦になりますが、あと一勝というところまで肉薄するも負けてしまいます。19-20シーズンに対戦した時は純粋な実力不足を痛感させられる内容でしたが、その印象は20-21のシリーズでも変わりません。ロスターに掛かっている金が違うしね。ただこのシリーズで第7戦まで持ち込めた要因はドンチッチのモンスターパフォーマンスと、カーライルの奇策でした。レギュラーシーズンで一度も試したことがないボバンとポルジンギスのゾーンで勝利をもぎ取った試合もありました。だからこの結果を見たら「来シーズンこそ勝てる!」って思いそうなものだけど、カーライルは辞任したんだよね。

 

■ドニー&カーライル辞任

 20-21シーズン終了後にドニーはGMを辞任、それに続くようにしてカーライルもHC辞任を表明しました。ドニー辞任の理由は今でも明かされていませんが、この頃になってボブ・ヴォルガリスとマーク・キューバン中心に劣悪な内情がネットの記事になっていたので、やはり組織内の政治が絡んでいるように見えます。記事の内容を見るに、勝手にトレードの交渉に動いたり、FAとの交渉で選手のマネージャーを怒らせたり、果ては勝手にドラフトで選手を指名したりと、めちゃくちゃなことをしていたようです。こういうのって全部GMがトップに立って指揮するわけですが、ドニーが全く知らない交渉話があったとか。だからキューバンとボルガリスのドニーに対するリスペクトが著しく欠けた行為の数々で嫌気が差したことが原因のように思います。

 カーライルが辞任を選んだ理由も、自分とドニーの意向とは違う選手を連れてくるフロントの元で働きたくないというのがありそうです。まあカーライルはドンチッチとの関係が悪かったらしく、ドンチッチ側の要求により退団した説もあるので、実際は分かりません。

 

 まあ退団の理由については一旦置いといて、ここまでの動きをまとめると

17-18 スター選手がいれば強くなるチームを作る

18-19 ドンチッチを獲得

19-20 最強のオフェンスチームになり、プレーオフで負ける

20-21 プレーオフで進歩を見せるも、負ける

 ぶっちゃけドンチッチを獲得した時点でとんでもない有能なんですが、その前からドンチッチをサポート出来る選手を揃えていたことは評価したいところです。ポルジンギスに賭けたのは明確に負けって感じですが、一緒に来たTHJは活躍したしね。

 

■ニコ・ハリソンGM就任

 ドニーの後釜として2021年にハリソンがGMに就任します。キッドがHCに就任したのはその前だったかな?

 21-22シーズンは、昨シーズンの課題だったディフェンスに焦点を当てたキッド。しかしポルジンギスの機動力がディフェンスシステムと噛み合わず、トレードでスペンサー・ディンウィディーとダビス・ベルタンスを獲得しました。結果的にこれがハマってディンウィディーは怪我で離脱したTHJに代わるスコアラー兼ハンドラーとしてプレーオフでも活躍しました。

 ただキッドがHCに就任したことで最も恩恵を受けたのは、実はマブスのウィング陣だったように思います。ボールマンへのディフェンスに人数を掛け過ぎて、フリーの選手を作ってしまいがちなキッドのディフェンスシステムに、豊富な運動量とディフェンスで高いIQを持つマブスのウィングディフェンダーは適性がありました。ウィークサイドにパスが出る前にローテーションするIQと運動量で、ボールマンを止めつつフリーの選手もケアするディフェンスが成立しました。JGは明確にこのシーズンからディフェンスが目立ち始めたしね。

21-22マブス 112.5/109.1

 オフェンスレーティングの低下はペースダウンによるところが大きいです。そのペースダウンをディフェンスでのメリットにしているので、ここはトレードオフの関係。

スターデュオ→ワンマンチームへ方向転換

 ポルジンギスをロールプレイヤー二人に変えたことで、一見するとよりドンチッチのワンマンチーム感が強まりました。ただサイズはあるもののスリーを追う脚がなかったポルジンギスから、サイズの代わりにウィング並みに動けるクリバーとパウエルが中心センターになったことで結果的にキッドのディフェンスシステムに上手くハマりました。まずここがドニー・ネルソンからの第一の脱却。ハリソンとキッド就任後のマブスはカンファレンスファイナルに出場と、大きく飛躍しました。

 そしてウォリアーズとのカンファレンスファイナル。ウォリアーズは巧みにマブスのディフェンスを解体、ディフェンスではドンチッチを潰すことに注力しながら連携を消したことでマブスは敗北を喫しました。このシリーズは特にケボン・ルーニーのOREBが目立っていて、それが後のビッグマン大補強作戦に繋がっているように思います。だからある意味22-23シーズンにマブスを破壊した張本人とも言えるルーニー。ほんま許さんぞ。シリーズ見ている当時は「許して❤」って思っていたけど。

 ということでドニーGM時代に獲得したスター選手を放出したことでカンファレンスファイナルに出場したマブス。こう書くと「ドニーってダメだったんだな」と思うんですが、一方でプレーオフで輝いていたのはそのドニーが再建期に獲得してきた選手たちでした。ドードーはディフェンスだけでなく、オフボールスクリーンからの連携を生んだり、スピードでOREBを搔っ攫うことが出来る選手でもあり、実はオフェンスでもかなり貢献していました。クリバーもドンチッチがいないジャズ戦でスリーを8本決めて勝った試合なんかがあったし。

ドニーの置き土産で掴んだ勝利

 勿論それだけではないですが、彼が残したものは確実にマブスというチームの前進に繋がりました。ただそれだけでは優勝出来ないということを見せつけられたウォリアーズ戦でもあったので、更なる前進の為、翌シーズンは何が必要になるのか。そしてハリソンは何が必要と判断したのか。次回に続く。