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マブス専門NBAブログ(不定期)

【雑談】ドニー・ネルソンからの脱却

 

 2021年にニコ・ハリソンがGMに就任した当時と比較すると、大きくロスターが変化したマブス。ハリソン就任時から在籍している生え抜きの選手はドンチッチ、JG、クリバーしかいません。パウエルは一応セルツでプレーしていたらしいけど、まあ生え抜きでいいか。この変化が良いか悪いかは今後マブスが優勝出来るかどうかで決まるわけですが、今回はハリソン就任前の話、つまりドニー・ネルソンがGMだった時代のマブスを振り返ってみたいと思います。あっちなみにメインは2017-18シーズンからね。

 

■再建に進むマブス

 2010-11シーズンにフランチャイズ初優勝を果たしてからというもの、プレーオフには出場するけど一回戦を突破出来なかったマブス。そして16-17シーズンにとうとうプレーオフ出場を逃しました。その時点でマブスの象徴的な選手であるダーク・ノヴィツキーが39歳ということもあり、翌シーズンの17-18シーズンからは本格的な再建に動き出したネルソンでした。

ドリアン・フィニ―スミス(16-17シーズン契約)

ドワイト・パウエル(15-16シーズン獲得)

マキシ・クリバー(17-18シーズン契約)

 これは2017-18シーズン時に在籍しており、後のコアメンバーとなった選手たち。パウエルはドラフト指名された選手ですが、クリバーとドードーを引っ張ってきたのはどんなセンサーしてるんだって感じです。

 このシーズンは24勝58敗と負けに負けて、ウェスト13位という結果に終わりました。ちなみにマブスより負けていたのはグリズリーズとサンズ。サンズは随分出世したね。

17-18OFF/DEFレーティング 105.4/108.4

 ただレーティングを見ると非常に興味深いものが見えてきます。OFFレーティングは当時リーグ24位、ウェスト12位。これはまあ分かる。ただDEFレーティングはリーグ16位、ウェストでは9位です。

最下位争いのチームとは思えないDEFレーティング

 管理人は当時NBAを見ていなかったのでなぜこういう数字になったのか分かりませんが、数字だけ見るとなんでこのディフェンスで最下位争い出来るんだって思ってしまいます。まあそれだけオフェンス力が足りなかったってことなんだろうけど。

 

■ドンチッチ獲得

 18-19シーズンにルーキーとしてやってきたドンチッチは、新人シーズンからルーキー離れしたパフォーマンスを見せつけました。それによって勝率を33勝49敗と改善を見せましたが、結果としてはウェスト12位と順位はさほど変わりませんでした。勝率4割で12位ってどんだけウェストのレベル高かったんだよ。

18-19OFF/DEFレーティング 108.7/110.1

 ドンチッチの加入により昨年比+3.3と、大きくオフェンスが改善しましたが、同時にディフェンスは+1.7とやや悪化しました。108.7というOFFレーティングはリーグ20位でウェスト12位、DEFレーティングはリーグ18位でウェスト9位。リーグ全体で比較すると改善しているのに、ウェストに限定すると変わらないっていうのは、やっぱり当時のウェストの魔境っぷりを感じます。

 そして翌年の19-20シーズン。キャリア二年目を迎えたドンチッチは大きく飛躍し、チームも43勝32敗と勝率を上げ、昨年まで最下位付近が定位置だったマブスは一気にプレーオフ出場にこぎつけました。ちなみにこのシーズンはコロナの影響でレギュラーシーズンが短縮されています。

19-20OFF/DEFレーティング 115.9/111.2

 馬鹿馬鹿しいぐらいに跳ね上がったOFFレーティング。昨年比+7.2って前例あるのかな? このOFFレーティングはリーグぶっちぎりの1位で、当時歴代最高の数字だったとか。なぜこれほどまでに急上昇したのか、その理由はドンチッチの才能が覚醒したっていうのが大部分です。

18-19→19-20チーム平均得点 108.9→117.0

 平均得点が+8.1と大幅に増えました。そしてドンチッチの平均得点が21.2→28.8と+7.6得点も増えたので、やはりこれが大きい。ドンチッチの得点が増えたのは2Pの成功率が改善したことが大きく、50.0→57.3%まで上昇しています。

18-19→19-20チーム3P% 34.0%→36.7%

 もう一つ面白い数字がこれ。+2.7%は大幅な変化です。どれくらいかっていうと、今シーズンのスパーズが一年でナゲッツぐらいスリーが入るようになるってぐらい。しかも3PAが36.6→41.3と5本近く増やしているっていうのがまた面白いです。アテンプトも大幅に増やしたのに成功率が上がるっていう、普通に考えたら逆じゃね? って現象が起きています。しかもドンチッチのスリーはアテンプトは増えたのに成功率は下がっているという、チームの傾向と反しているのが余計に不可解に見えます。

 ただこれはリック・カーライルHCの手腕によるもの。カーライルはドンチッチが使う為のスペースをシューターで確保しました。このスペーシングの確保をかなり徹底していたのが印象的です。カーライルはシューターにはとにかくスリーを打ち切ることを求めていて、それは時に不調でスリーが入らない時でも打ち切ることを要求していました。大事なのはスリーが入るかどうかよりも、スペーシングを確保すること。それが3PAの増加に繋がったように思います。

 そして広いインサイドのスペースで暴れ回ったドンチッチ。多彩なスキルを存分に活用出来る環境が手に入ったことで、2P%が大幅に向上しました。そして卓越したパスセンスを持つドンチッチなので、ディフェンダーを引き付けてからのキックアウトパスでシューターにワイドオープンを作り、これがチーム全体の3P%向上に寄与、更にそのパスをフェイクとして利用することで自身の2P%をより高めることになりました。そのスペーシングに大きく貢献したのが、このシーズンに加入したTHJ。

 やっていることはジェームズ・ハーデンがいたロケッツと大体同じですが、キャリア二年目で当時MVPクラスの選手だったハーデンと同じ役割が出来るっていうのは異常だよね。ということで、なんだかんだでこのシーズンの爆発的なオフェンス力はドンチッチ自身の能力によるところが大きいんですが、ここでちょっと思うわけです。

マブス以外でドンチッチはここまで活躍していたのだろうか?

 例えばサンズ。もしもディアンドレ・エイトンではなくドンチッチをドラフトしていたらここまでの活躍をしていたのか。まあ活躍はしていたんだろうけど、既に若いスターのデビン・ブッカーがいたからあくまでエースデュオみたいな認識になっていたと思います。「ドンチッチ凄いけど、やっぱブッカーも凄いんだね」みたいな。

 例えばキングス。よく分からない理由でマービン・バグリーをドラフトしたわけですが、当時のキングスはガードが飽和状態でした。しかもディアロン・フォックス、ボグダン・ボグダノビッチ、バディ・ヒールドと若くてこれから成長させたいガードがね。だから仮にドンチッチが入っても、その若いガードのうちの一人という扱いになっていた可能性が高いです。

 例えばホークス。まあホークスでは普通に活躍してそう。

 とまあ各々のチーム事情から、ドンチッチが最大限活躍するにはマブスかホークスしかないって感じでした。そしてディフェンスは悪くないけど、オフェンス力が決定的に足りないっていうマブスの事情が偶然ハマったわけです。ただそれは本当に偶然なのかって話。以下は17-18シーズンのホークスのOFF/DEFレーティング。

17-18ホークス 104.4/110.1

 当時のホークスもマブスと同じくオフェンスで困っていましたが、マブスと違うのはDEFレーティング。当時マブスがリーグ16位のDEFレーティングだったのに対し、ホークスはリーグ24位と、ディフェンスでも困っているチームでした。この事から、

ネルソンは「ドンチッチがいれば強くなるチーム」を作った

 19-20シーズンのマブスのDEFレーティングは111.2と、前年と比べたら若干悪化したもののリーグ18位に留まっています。これがホークスだとそう上手く行っていたのか? と思います。実際19-20シーズンのホークスのDEFレーティングは113.1でマブスとは比較にならないほど悪化しているし。

 実はラメロ・ボールがキャリア二年目を迎えたホーネッツでも、マブスと同様急激にOFFレーティングが向上するという現象は起きていました。それでも彼らがプレーオフに出られなかった原因のひとつに、DEFレーティングの悪さがあったと思います。何気に改善はしていたんだけどね。ドンチッチの加入でプレーオフに出られる準備が出来ていたマブスと、プレーオフに出られる準備が出来ていなかったホーネッツ。

 歴史的なソフォモアシーズンを過ごしたドンチッチでしたが、その裏にはスター選手さえいれば勝てるチームを作ったネルソンとカーライルの先見の明があったことは見逃せません。クリバーやドードーの獲得はその最たるものです。二人ともスター選手をサポートする選手としては優秀なものの、オフェンスでの個人技は少なくともNBAレベルでは通用しない選手でした。だからドラフトされてないわけだし。だから当時のマブスファンもクリバーとドードーを見て「ディフェンス以外何が出来るの」って思ったんだろうな。

 ということでスター選手を迎え入れる準備を着々と進め、見事ドンチッチという希少な才能の獲得に成功したドニー・ネルソンの話でした。次の記事が本編、「ドニー・ネルソンからの脱却」についてです。