この記事は2/5に書いた記事です。投稿するタイミングをちょっと見失っていたんですが、今日は記事を書く時間がないので代わりに公開します。今とは細かい数字が多少変わっているかもしれませんが、そういうことです。
4回に渡ってマブスのオフェンスを考察してきましたが、今回はそのまとめです。
・ドンチッチ以外のハンドラーのオフェンスパターンを増やす
・ドンチッチからパスを貰った選手のオフェンスパターンを増やす
この二つの軸の内、後者の方を重視してオフェンスの改善を試みたキッド。シーズンもがっつり後半戦に差し掛かったところで、マブスがどう変化しているのか見てみましょう。ちなみに基本は21-22シーズンと比較していきますが、参考としてちょくちょく他のシーズンの数字も混ぜていきます。
■平均得点
21-22 108.0(リーグ24位)
22-23 114.2(リーグ16位)
23-24 118.2(リーグ10位)
たった2年で+10.2と大幅に伸びた平均得点。まあこれに関してはそもそも21-22シーズンが低過ぎるってのがあります。ただオフェンスの改善を目標にしてちゃんと得点が増えているっていうのがポイント。目標と方向性が合致しているってわけです。
■ターンオーバーからの得点
21-22 14.9(リーグ26位)
23-24 16.4(リーグ13位)
ペースを落とすことを意識していた為か、ターンオーバーからの得点もリーグ最低レベルだったマブス。別に16.4って数字は多いってわけじゃないですが、極端に遅いペース→そこそこ早いペースになっただけで+1.5増となりました。
■セカンドチャンスポイント
21-22 11.0(リーグ29位)
23-24 13.4(リーグ21位)
ここも改善と言うよりは普通になっただけ。よっぽど良いところにロングリバウンドが転がってこない限りは、OREBを取りに行くよりハリーバックして失点を防ぐことに注力していた結果の29位という数字でした。それがリーグ21位になっただけで+2.4。
■ファストブレイクポイント
21-22 10.0(リーグ28位)
23-24 14.9(リーグ11位)
ここは明確に変化した部分。ここだけで+4.9増、比較するとざっと1.5倍になっています。詳しくは「ペースアップは正解なのか」の記事を見て欲しいんですが、ドンチッチが動かずにペースを上げて得点力を底上げしたっていうのが好印象です。
ここまでの数字を合計すると1.5+2.4+4.9=8.8となり、これらが平均得点アップの要因になっていることが分かります。ターンオーバーからの得点、及びセカンドチャンスポイントが少なかった理由が走り合いになっての大量失点を防ぐ為だと考えると、やっぱり平均得点アップの最大の要因はディフェンスを捨てたっていう見方が妥当に思えます。
いよいよオフェンスの変化をプレーパターン毎に見ていきましょう。ちなみにポゼッション/freq%という形で表記します。
21-22 9.0/8.6%
22-23 13.0/12.2%
23-24 11.4/10.2%
管理人的には減らしてほしかったアイソレーションですが、うーん、なんとも言えない。昨シーズンに比べれば格段に減ったけど依然として多い。ポゼッションの数で言えばクリッパーズに次いで2位だからね。方向性としては正しいけど物足りない感があります。特にカーライルがHCだった20-21シーズンはアイソレーションのポゼッションが6.7/6.2%だし。
■P&Rハンドラー
21-22 20.4/19.3%
22-23 16.3/15.3%
23-24 18.9/16.9%
P&Rを増やして欲しい管理人なので、昨シーズンに比べればしっかり増えているのは好印象。
■P&Rロールマン
21-22 6.8/6.4%
22-23 6.5/6.2%
23-24 5.9/5.3%
ここは寧ろ減ってしまったマブス。なんでたよって感じですが、要因のひとつは得点効率の悪さ。21-22シーズンからPPPが1.19→1.28→1.06と悪化しており、これがロールマンのプレーを増やせない理由な気がします。いやーウッドが恋しい。
21-22 27.2/25.7%
22-23 22.3/21.5%
23-24 24.8/22.2%
これがハンドラーとロールマンのポゼッションを足した数字です。比率で見ると昨シーズンとあんまり変わってないんですが、ポゼッションは+2.5なので良しとしよう。
余談ですが、21-22シーズン明確にP&Rが多かった理由は恐らくブランソンがいたからなんだと思います。それが全てってわけではないと思うけど、ブランソンがいなくなって4.9も減った22-23シーズンからドンチッチの独力で1.5増やしたわけだから、やっぱどちらかと言うとポジティブな変化に見えます。
■ドンチッチのタッチ
しばしばボールを持ちすぎだと言われるドンチッチですが、今シーズンはそこにも変化がありました。表記はボールを持っている平均秒数/平均ドリブル数です。
21-22 6.19/5.37
22-23 6.12/5.30
23-24 5.65/5.08
ボールを持つ秒数が顕著に減りました。なんと今シーズンのブランソンより短いです。ブランソンが長すぎるだけか。
仕事をしなくなったドンチッチ
元々味方へのパスをクリエイトする為にボールを持つ時間が長くなっていたドンチッチ。今シーズンは自分の力でクリエイトするのではなく、その仕事を他の選手に任せることが増えました。
だからある意味今までのように仕事をしていないとも言えます。昨シーズンまではドンチッチがドライブで引き付けてキックアウトして、パスを貰った選手はもうシュートするだけってシチュエーションが多かったのに対し、今シーズンはドライブフェイクからのパス、もっと言うとドライブすらせずパスすることもあります。そうするとパスを貰った選手は自分の力でショットクリエイトする必要が迫られるわけです。
そうは言ってもドンチッチという選手自体に引力があり、ロールプレイヤーのアタック中もディフェンスとしては目を離したくない。それに以前に比べて仕事をしていないものの、あくまで比較的って話。フェイクに反応した瞬間に素早くパスを捌いてくれるドンチッチなので、ロールプレイヤーとしては常に先手を取った状態から自分のプレーが出来ます。そしてパスを捌いたドンチッチはコートを眺めています。
良い意味で仕事をしなくなったドンチッチ。仲間を信じてよりパサーの雰囲気を強めた結果、今シーズンはロールプレイヤーたちにプレーを促しつつ、自分のオフェンスの負担も減らすことに成功しました。それがファストブレイクポイントが増加したのに平均移動速度が下がったからくりです。
ドンチッチAST TO PASS% ADJ 21.0%
この数字が上手く行ってるのを物語っているよね。20%超えはキャリア初、トレイ・ヤングに次いでリーグ2位の数字です。ちなみにヤングは二年目シーズンからAST TO PASS% ADJで常に20%超え、リーグ1位か2位を争っている選手なので、
ヤングに近づいたドンチッチと、ホークスに近づいたマブス
に見えます。パスセンスがずば抜けていながら個人のスコアリングではドンチッチに劣るヤング。そのヤングの分の得点を、彼のパスとロールプレイヤーの得点力で補っていたホークスです。ボグダン・ボグダノビッチやケビン・ハーター、ジョン・コリンズでカンファレンスファイナルまで行ったシーズンのことね。だからヤングより遥かにスコアラーとして優れているドンチッチ擁するマブスで同じことが出来れば、まあいいよねって感じです。
21-22シーズンに成功したディフェンスをかなぐり捨ててまでキッドが取り組んだオフェンスの改善は、今シーズンの成績を見ても成功と言えるかは微妙です。ただこの傾向自体はポジティブに見ていいんじゃないかな。
40分以上のヘビーミニッツを与えられることもあるドンチッチですが、見方を変えればオフェンスでの負担が減ったから出ていられるようにも見えます。あとディフェンスサボるから。
ドンチッチがもっとオフェンスでサボれるように、他の選手のレベルアップも狙いたいところです。オフェンスが上手く行った選手を早々に下げるのもそういう意図に見えます。上手く行くことが分かったなら使う必要ないしね。
管理人は基本的にインタビューの内容っていうのを信じていません。言葉では幾らでも取り繕えるからね。だからコートで起こったことだけが真実だと思っているわけですが、今シーズンのキッドの起用法を見るとオフェンスの改善に取り組んでいることが伺えます。っていうか数字見たらどう見てもそうでしかないし。
ドンチッチのヘビーミニッツ→
ドンチッチからパスを貰った時の、各選手のオフェンスパターンを開発する為
上手く行った選手を下げる→
何が出来るのか、その見極めが出来た
ヘビーミニッツによってドンチッチのディフェンスはかなり酷くなっていますが、それでも下げないキッド。それは暗にディフェンスは頑張らなくていいよってメッセージにも見えます。こういうところからも今シーズンはディフェンスのことを気にしてない感じが出ていますね。
これが真実かは知りませんが、コートで起こっていることを見ると、こういうことも読み取れるよって話でした。