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マブス専門NBAブログ(不定期)

【雑談】宙に浮くジョシュ・グリーン-2

 

 リーグトップの運動量で積極的にヘルプディフェンスを仕掛けるJG。時に捨て身の特攻にも見えるほどにボールマンに迫りながら、キックアウトに対しては素早くローテーション出来ることが魅力的です。ということで、今回はJGのローテーションディフェンスの話。

 

 管理人はヘルプ&ローテっていう言葉をよく使うんですが、その理由はこの二つが切っても切り離せない関係だからです。優れたディフェンダーは1on1でもハンドラーに普段通りのオフェンスをさせないぐらいのプレッシャーを与えることが出来ますが、コートにいる5人がそういうディフェンダーのチームなんて早々ありません。それに嫌なディフェンダーはスクリーンで剥がすのが現代NBAの常識。そんでもって、困ったことにそういう「ディフェンスの穴」が大抵オフェンスエースなんだ。

 じゃあ一生そのディフェンスの穴を狙われ続けていいのかって言われるとそんなわけがないので、チームとしてはどうにか対策をしなければなりません。その対策っていうのがチームディフェンス、もっというとヘルプディフェンスなわけです。1on1で狙われると弱いディフェンダーでも1on2の状況なら数的有利で守れます。まあ1on2ってつまるところダブルチームなので、マークマンとの距離感を測って1.5にするか、1.8にするかって具合に調整するんだけど。要するヘルプディフェンスっていうのは、穴を塞ぐディフェンスということです。

 でもってダブルチームを仕掛けられたらオフェンスは成功っていうのもバスケの常識。世界最高のバスケリーグであるNBAなら尚更、例え僅かなヘルプディフェンスであってもフリーになった選手は見逃さないし、目の前にディフェンダーさえいなければ、そして時には目の前にディフェンダーがいても当然のようにスリーを打って決めてきます。ウォリアーズ戦のドンチッチ→PJのパスとかまさにそれ。クレイほぼ動いてなかったし。

 ヘルプディフェンスっていうのは「弱いディフェンダー」という穴を塞ぐと同時に、「ヘルプディフェンダーが見ていたマークマン」という穴を作るわけです。そこで必要になるのがローテーションディフェンス。ボールマンにディフェンスを仕掛けている選手たち以外が、自分のマークマンを捨ててその穴を埋めに走ります。そしたらまた穴が生まれるからローテーション、穴が生まれるからローテーション……というシチュエーションがチームディフェンスに優れたチームでは起こります。だからヘルプとローテは切っても切り離せない。ヘルプするからローテーションが必要になる。

 

■JGのローテーションディフェンス

 なんでここまで基本的なことを書いたかというと、それはJGが積極的にヘルプディフェンスを仕掛ける選手だから。ヘルプを仕掛けて少々ならマークマンの距離が空いても問題なく戻れるJGですが、ダブルチーム気味に仕掛ける事も多い。ということで穴を埋める代わりに、別の穴を作っています。だから必然的に別の選手がローテーションする必要があります。

 で、JGが本領発揮するのはこのローテーションディフェンスだと思っている管理人。JGが捨てたマークマンを他の誰かがローテーションで潰してくれている間、彼は必ずボールと同時にフロアバランスを見ています。それっていうのはフリーになっている選手がいないかどうかを確認しているわけです。同時にドライブした時、効率の良いゴール下でシュートを打たせないようヘルプにいけて、尚且つパスされた時に追いつけるポジションに移動します。ちょうどペイントエリアの線の辺り。で、実際にパスを出されたら即座に反応します。総じてJGのディフェンス能力が異質なところって

ディフェンスでの手数の多さ

 手数っていうか足数か。一回一回は強烈なヘルプディフェンスではないけど、味方と連携してしつこくプレッシャーを掛けてくるし、嫌がってパスで振り回そうとしても中々崩れてくれないし。それでまたボールが戻ってきたらヘルプしてくるし。これを時にワンポゼッションで複数仕掛けてくるのがJGの特徴。それを可能にするパスの予測能力、実際に追いつけるスピード、そして20分以上出場しても仕掛けられるスタミナ。要するに運動量です。これがディフェンスでJGが目立つ理由でもあります。ハンドラーについてると思ったらゴール下にいて、ゴール下にいると思ったら3Pラインにいて、みたいな。あらゆるところに顔を出すし、それだけボールがあるところに動いているから目立つわけだ。ちなみに管理人がJGの能力で一番ヤバいと思っているのはスタミナです。あんなに色々考えながら全力疾走なんて出来る気しないよ。

 だからJGっていうのは「弱いディフェンダー」という穴を埋めながら「捨てたマークマン」という穴を作り、「ローテしたディフェンダーが捨てたマークマン」という穴を埋める選手ということです。ワンセンテンスにするとよく分からんな。まあ一言でまとめるとするなら

現代ディフェンスの申し子

 って感じかな。ヘルプ&ローテが当たり前になった現代バスケで、これを忠実に実行出来る選手は優秀なディフェンダーと言って差し支えないと思います。ただこの能力を発揮する為の前提条件として「三人のディフェンダーがハードワークする」ことが求められます。残りの一人がディフェンスの穴だとした場合ね。全員守れるならオールスイッチの方が良い。

 だからJGの得意なチームディフェンスって、味方としては迷惑だよね。JGがヘルプしまくるからローテーションで走りまくらないといけないんだから。でもマブスの優秀なディフェンダー陣は、寧ろハードワークが真骨頂みたいな選手ばかりだったのでこれがハマりまくったわけです。

21-22シーズン OFF/DEFレーティング

オンコート 107.5/103.8

オフコート 112.9/109.6

 当時のマブスのOFF/DEFレーティングが112.5/109.1。DEFレーティングはリーグ7位と非常に良かったんですが、そこにJGが加わると劇的に向上します。103.8っていうのは当時だと1位のセルツと2.4も差をつけてぶっちぎりのトップ。ただオフェンス能力の問題でNETレーティングは変わらず。

21-22シーズン OFF/DEFレーティング

ドンチッチ 113.8/110.3

ドンチッチ&JG 110.9/104.8

 で、JGのディフェンス能力っていうのはドンチッチと相性が良かった。JGと並ぶとOFFレーティングは下がるものの、5.5もDEFレーティングが下がり、NETレーティングは大きなプラス。

 ドンチッチはサボりたがりなディフェンダーで、他の四人は彼の分までハードワークする必要があるんですが、ヘルプ&ローテ、言い換えるとハードワークに特化したディフェンダーであるJGがいるとその負担が解消されました。ところで、よく「ドンチッチがサボる」って話をするけど、具体的にいうとドンチッチがゴール下辺りに立って動かない時のことです。一応コーナー担当ってことになっているんですが、コーナーにパスが回ってからクローズアウトするので当然スリーを打たせてしまいます。まあジョシュ・オコギーみたいなシュート力のないコーナーシューターを担当させたり工夫はしている。じゃあ右も左も優秀なコーナーシューターだったらどうなのってなるとやっぱりきついです。そこを埋めてくれるJG。

 JGがハードワークを請け負ってくれることのメリットは、ドンチッチがゴール下に居座り続けられること。そしてドンチッチがゴール下に居座ることのメリットが主に二つ。ひとつはドンチッチがリバウンドを回収しやすいということ。リバウンドを回収してそのままトランジションオフェンスに繋げやすい。あと単純にドンチッチはリバウンド強いしね。スピード対応は苦手なものの、フィジカルが強くインサイドではクレバーに守れるドンチッチのディフェンスの強みを活かすという意味でも、彼の代わりにJGに動き回って貰うっていうのは理にかなっています。

 で、もうひとつのメリットはドンチッチがサボれるっていうこと。管理人はドンチッチがサボることは全く問題ないと思っていて、寧ろサボれるなら出来るだけサボって欲しいぐらいに思っています。ロケッツ時代のハーデンとかはめちゃくちゃサボっていましたが、そこでディフェンスの負担を強いてオフェンスが出来なくなったら、いよいよハーデンを使う意味って何? ってなるし。

 ディフェンスに弱点を抱えるエースがいるチームは、時としてゴールを守る以上にエースを守らなければならない事があります。オフェンスの流れを止めたくない時とか、エースがファウルトラブルになりそうな時とかね。それを可能にするのがヘルプディフェンスであり、JGはその「エースを守る」という点で文句なしの働きをしていました。ぶっちゃけ21-22シーズンのリーグ7位のディフェンスっていうのは出来過ぎなぐらい。半分より上なら問題ないと思っています。

 ゴール下に居座れるってことはそれだけ動き回らなくて済むってことなので、よりオフェンスでエネルギッシュに戦うことが出来ます。そんでもってこれはデータには出ない部分だけど、データ以上に大事だと思う管理人。ドンチッチは疲れるとパスもドライブもせずにプルアップで打ちまくり、そこからカウンターをよく貰うのでドンチッチのスタミナ管理は攻守に重要なファクター。

 そしてシュート力を大きく向上させた22-23シーズンは、

22-23シーズン OFF/DEFレーティング

チーム 115.9/116.1

JGオンコート 115.3/112.8

JGオフコート 114.6/116.4

 前シーズンから7.8もOFFレーティングを向上させました。DEFレーティングが9も上がっているんだけど、負け越しのシーズンで貴重なプラスのNETレーティングとなりました。このシーズンはハードワーク不足で守れなくなったシーズン。主にウッドのハードワークが足りなかったんですが、

ドンチッチ&ウッド&JG 121.1/107.2

 実はウッドとも相性が良かったJGでした。まあウッドがゴール下から動かなくていいならリムプロテクションがあるウィングっていうディフェンスの長所が活きるしね。これがあったからウッドと契約しても良かったと思っていたけど、まあ契約しなかったからといってそれを咎めるのも違う気はする。

ドンチッチ&JG 117.5/111.0 

 ドンチッチとJGの組み合わせだとこの通り。チームディフェンスの負担を請け負いながら、オフェンスでも貢献したことで負け越しチームとは思えないNETレーティングとなりました。ということでボックススタッツ以上に貢献しているJG。そこから同等レベルのシュート効率を残しているJGの今シーズンのレーティングは、

23-24シーズン OFF/DEFレーティング

チーム 117.8/114.8

JGオンコート 118.2/118.7

JGオフコート 116.0/110.6

 あれ?

ドンチッチ&JG 120.2/119.8

 あれ?