ドンチッチの歴史的な73点の裏で、今シーズンのテーマは「オフェンス戦術の構築」だと感じた管理人。既に優秀なオフェンスチームであるマブスなのでその必要があるのかって話ではありますが、必要ではあると思います。それがディフェンスよりも優先するべきかは別として。まあ今のロスターじゃどう頑張っても守れそうにない気がするので、本来優先順位の低かったと思われるオフェンスの改善に着手したって具合だと思います。
■マブスオフェンスの弱点
マブス、というかドンチッチの弱点の話です。基本ラインはハンドラーのアイソかP&R、派生してスペインピックの繰り返しです。優先順位としてはP&Rが第一候補で、必要に応じてアイソって感じ。
普通に考えたらP&Rで攻めるのが圧倒的に効率が良いんですが、コンビプレーなのでコミュニケーションミスは即TOに繋がってしまいます。どのタイミングでスクリーナーがダイブするとか、ハンドラーのシュートチョイスとか、そういう判断を一瞬の内に的確にしなければならないので、見た目以上に難しいというか疲れそうなプレーです。ドンチッチは特にスクリーナーにめちゃくちゃ気を遣ってるしね。
そういう複雑な判断が必要ないプレーがアイソレーションなので、P&Rで疲れたり、労力の割に有効じゃない時なんかにアイソを始めるイメージです。だからアイソはある意味休憩プレーにも見える管理人。管理人はP&Rが大好きなのでずっとやって欲しいと思う反面、やり続けるのは精神的な負担が凄そうなのでアイソに頼るのは仕方ないんですが、それはあんまり好きじゃない。
■P&Rとアイソ
アイソレーションオフェンスっていうのは純粋な1on1でディフェンダーと真っ向勝負するってこと。それに必要なスペースを確保する為に、5アウトかセンターがダンカーズスポットにいる形で始まるんですが、前述の通りあまり管理人は好きじゃありません。特に5アウトのアイソの方。センターをダンカーズスポットに置くのはあんまり嫌いじゃないです。
というのも5アウトのアイソっていうのはシュートを外したら終わりのオフェンスだからです。そしてここがP&Rが優れている点で、仮にシュートを外してもダイブするスクリーナーがOREBをケアしてくれます。勿論全てのOREBを取れるわけではありませんが、絡みに行くっていうのが結構重要。
OREBを取られないようにする為どうしても高さ勝負でセンターがDREBを取らざるを得なくなります。ここをPGなんかに取らせることが出来ればそのまま速攻に結び付けられるんですが、センターがDREBを取ると出だしが遅れます。具体的には
PGがDREB確保→そのまま走り出す
これだけで成立する速攻が、
センターがDREB確保→PGを探す→パスする→走り出す
これだけステップが増えるわけです。もっと言えば都合よくPGに渡せるとも限らないので、他のウィングに渡す→PGを探す→パスするっていう風に更にひと手間必要になります。これだけ時間が掛かるとディフェンスも戻れちゃうんだよね。だからOREBに絡みに行くっていうのは単にシュートが外れた時のケアだけじゃなく、必然的にリバウンドに強いセンターに仕事をさせるってことになるのでファストブレイクの予防にもなり得ます。
本筋とは関係ないけど、こういう繋がりがあるからリバウンドに強いガードとか、走れるセンターとかって需要があるんだよね。ラスとか、センターじゃないけどヤニスとか。センターでしかも走らないくせにパスだけで速攻にしちゃうヨキッチとかいう化け物もいるけど。
脱線しましたがP&RはスクリーナーがOREBに絡みに行けるので、シュートを外した時のリスクヘッジに優れています。あと外しても取ってくれるっていう余裕があれば強気なシュートチョイスもしやすいし、それを嫌ってハンドラー側にプレッシャーを掛けたらスクリーナーがフリーになるし。
それに対して5アウトのアイソはハンドラーがシュートを外したら、あとはもうシューターたちが横から掻っ攫うしかないわけです。そしてそれが出来なかったら一瞬で速攻のチャンスになってしまうし、なにより再現性がない。かといってOREBに絡もうとゴール下に寄ったらスペーシングが狭まるし。
アイソ＝シュートミスのリスクが高い
こういうことからあんまり好きじゃない管理人です。ちなみにセンターをダンカーズスポットに置くアイソはどちらかといえば肯定的。比較的センターがOREBに絡みに行きやすい。その分スペーシングが狭くなり、特にゴール下まで侵入するのが難しくなるので、ゴール下に比べて効率の悪いミドルが増えやすいのが難点。だからデローザンみたいにミドルが上手い選手がやるには良い戦術だと思います。
それと完全に余談なんだけど、管理人が唯一好きなアイソがザイオンのプレー。ダンカーズスポットでもなく普通にゴール下にバランチュナスを置いた状態で仕掛けるのがたまらなく面白い。そりゃ外してもバランチュナスがOREB取ってくれるけど、どこにスペースがあるんだよってぐらいの場所からザイオンが1on1を始めるんだから。オフェンスのやりやすさで言えばどう考えても5アウトの方がいいのにね。でもこれはどれだけ狭いスペースでもスピードとフィジカルで無理やりこじ開けるザイオンという才能を最も活かした戦術な気がする。特殊な才能が生み出した特殊な戦術って感じ。飛び抜けた脳筋に見えて奥が深いけど、結局脳筋。こういうのが面白いんだよな。
一方でアイソの方が優れている面もあります。スクリーナーとのコミュニケーションっていうのが必要ないのでターンオーバーが減るし、P&Rに比べて複雑な判断が必要ないので、気持ち的も楽だ。相手エースを狙って徹底的にいじめるセルツみたいな戦い方も出来るしね。ただそれだけに頼るのは危ないし、何より勿体ない。ドンチッチはただアイソに優れただけの選手じゃないんだから。
ドンチッチがアイソをやりたがる原因の一つに、ずっとP&Rをやり続けるのは目に見えない部分の負担が凄いっていうのがありそうだと思う管理人。だからP&Rの代わりの休憩みたいな立ち位置としてアイソをしているという風に見ているわけですが、要は、
アイソ以外に負担が少ないオフェンス
これを作るのがマブスオフェンスの課題に見えます。去年だとポストアップがそれに近い。そしてアイソ以外のオフェンスっていうのは、具体的に言うと概ね二つ。
・ドンチッチ以外のハンドラーのオフェンスパターンを増やす
・ドンチッチからパスを貰った選手のオフェンスパターンを増やす
前者は簡単だしやろうと思えば今すぐ出来ます。実際ブランソンやディンウィディーがいた時はそうしてたし。だから正解っちゃ正解なんだけど、同時に短絡的でもあります。そっちをベースにし過ぎて、後者を疎かにしてしまうと、そのハンドラーが能力的に全く通用しなかった時、結局ドンチッチがボールを持つことになるわけです。まんま21-22シーズンプレーオフのパターン。
だからドンチッチが出ている時間のパターンを増やすのはどの道必要になるわけです。分かりやすいのはナゲッツみたいなオフェンス。そして今シーズンのオフェンスの改善はどういうプランで進んでいるのか、それは次回にします。
■余談
ドンチッチ以外のハンドラーを用意するって話の続きです。個人的には半分賛成、半分反対。安いサラリーで用意出来る&ドンチッチと一緒に出場しても困らないぐらいのディフェンス力があるならいいよって感じです。5年50ミリオンのブランソンはいいけど、MAX契約のブランソンは嫌ってこと。そういう意味でエクサムは割と最適解じゃないかな。
個人的には複数のスターに多額の契約を渡すチーム作りって超ハイリスクだと思っています。数人のスターのサラリーがキャップの大半を占めるってことは、つまりやっすいロールプレイヤーしか雇えないわけで、戦力のバランスが非常に不安定。チームを足し算で作るか、掛け算で作るかって話です。
(スター選手)×ロールプレイヤー
あんまり自信のない例えなので、あくまでイメージの話ですがこんな感じ。簡単に強くなろうとするチームはこのスター選手の部分を足していくわけです。例えばクリッパーズなんかはここにカワイとPG13が入っているわけで、実力的にカワイを1.5、PG13を1とすると(1.5+1)×ロールプレイヤーってイメージ。ただ頻繁にカワイが怪我で欠場するから、いつまで経っても安定しないわけです。
そもそも二人が揃っていた19-20シーズンですらナゲッツに負けて優勝を逃しているのに、カワイが怪我してこの括弧の中が1になったらそりゃ勝てないよって思う管理人。その分ロールプレイヤーが強ければ勝てるんだけど、スター選手によってサラリーが圧迫されているから補強も満足には出来ない。
マブスの場合も例外ではありません。ロールプレイヤーの質を下げてまでスターを補強するのはリスクが高すぎる。「ドンチッチとカイリー両方いれば優勝出来た」っていうチームより「ドンチッチさえいれば優勝出来た」っていうチームを作ってほしい管理人です。スター選手の怪我っていう、言ってしまえばどうしようもないリスクの母数を減らして、代わりにロールプレイヤーの層を厚くするのが正しいと思うんだけどな。ロールプレイヤーは、良くも悪くも替えがきくからロールプレイヤーなんだから。ただでさえ怪我がちなのに、契約初年度の今シーズンから既に半分ちょっとしか出てないカイリーを見て強く思います。スターがドンチッチ一人では優勝出来ないって証明されたならともかくって感じだけど、ポルジンギスというスターを放出してカンファレンスファイナルに行ってるしね。
