あ♥@マブスファン

マブス専門NBAブログ(不定期)

【雑談】PJワシントンとクリスチャン・ウッド

 

 マブスがPJワシントンを獲得したという記事を見た時、管理人は肯定も否定もなくって感じでした。いや、一巡目指名権を出したからどちらかといえば懐疑的だったかな。

 ラメロをドラフトしたシーズンこそ勢いがあり、プレーインにも出場したホーネッツでしたが、それからはずっと下り調子で結局最後にプレーオフに出たのは2015-16シーズン。つまりずっと弱いチームの選手、しかも今年に関してはそのチームのベンチメンバーだったPJを、強豪セルツのローテーションプレイヤーだったグラント+一巡目指名権で獲得したっていうのは、字面だけ見たら釣り合っていないように見える。それがPJを信じにくかった理由です。で、今はどうなのか。それを話す前に数字を見ていきましょう。

PJワシントン

31.8MIN 11.8PTS 5.4REB 1.4AST 1.0STL 0.8BLK

FG 4.4/10.1(43.8%) 3P 1.7/5.6(29.9%) FT 1.3/1.8(71.4%)

 マブスに来てからの12試合で残した数字です。気になるのは得点効率。FG 43.8%っていうのはPJのこれまでのキャリアと比べると特別低いってわけではないんですが、そもそもがちょっと低すぎる感があります。FG%を下げている要因っていうのがスリーの効率の悪さです。

EFG 52.3% TS% 54.5%

 これがPJのEFG%とTS%です。15分以上出場した選手でフィルターを掛けた時、EFG%は486人中309位、TS%は345位と平均以下の数字です。当然どちらもマブスのチームスタッツと比較したら悪い数字で、得点効率の話をするとグラントからグレードダウンしたように思えます。

PJワシントン

オンコートOFF/DEFレーティング 118.8/115.5

オフコートOFF/DEFレーティング 114.6/114.0

 その割にオンコートのOFFレーティングは高いです。オフコートのレーティングが低くなるのはよく分からない。単純にPJがドンチッチと一緒に出ている時間が多いからな気がします。

グラント

オンコートOFF/DEFレーティング 113.5/117.4

オフコートOFF/DEFレーティング 118.4/114.5

 こう見るとまあ合わなかったよね。グラントがいるとオフェンスは困るし、守れないし。グラントはとにかくドライブを止めることが出来ませんでした。そもそもスピード対応よりフィジカル対応に強みのある選手ではあるんですが、にしてもスコ抜きされまくりました。インサイドへの侵入を止めることを基本としているキッドとはあまりに合わないわけです。ただ彼が22-23シーズンにいたらちょっと面白そうだったんだよね。やっぱりマブスに来るのが一年遅かった気がするグラントでした。

 ということでグラントと比較すると攻守に機能しているPJですが、なぜこのようなことが起こっているのか。

 

■ウッドの話

 唐突ですがここでクリスチャン・ウッドの話です。22-23シーズンに獲得し、一シーズン限りでお別れとなった彼ですが、なぜそのようなことになったのか。

クリスチャン・ウッド

25.9MIN 16.6PTS 7.3REB 1.8AST 0.4STL 1.1BLK

FG 5.9/11.5(51.5%) 3P 1.6/4.2(37.6%) FT 3.2/4.2(77.2%)

 PJより少ないミニッツで立派な数字と得点効率を残したウッドですが、数字に残らない部分があまりに酷かった。

オンコートOFF/DEFレーティング 115.4/116.7

オフコートOFF/DEFレーティング 114.6/113.6

 OFFレーティングはウッドがいた方が良かったものの、別にいなくてもそれほど悪くはならず、寧ろディフェンスのマイナスを見るといない方が良かったという悲しい数字です。

 1on1で止める能力はそれなりにありましたが、チームディフェンスとなるとかなりまずかったウッド。ヘルプ&ローテの連続でインサイドとスリーを守るシステムで、ウッドはワンポゼッションでどちらかしか出来ませんでした。ヘルプしてキックアウトパスが出ると追いかけられないし、ローテーションした後は戻らないし。出来なかった理由はアジリティ的な問題か、判断の遅さの問題か。シーズン終盤には多少改善を見せていたので、多分判断力の問題だろうね。

 ディフェンスの穴がウッドだけだったら何とかなったかもしれないけど、ドンチッチと並ぶことでどうにもならなくなりました。シーズンの最後の方でゾーンディフェンスのリムプロテクターにしたら誤魔化せるかと思ったけど、ボールマンに寄りたがって裏のスペースを使われまくっていた気がします。ビッグマンだけどフィジカルが強いわけではないので、ちゃんとしたセンターには力負けするし。

 で、PJの話に戻ります。PJは身長201センチ、体重104キロ、ウィングスパン219センチと、ウィングの身長ですがインサイドでも戦える体重とビッグマン並みのウィングスパンを持った選手です。対するウッドは身長206センチ、体重101キロ、ウィングスパン222センチ。

非常に似たボディフレームの二人

 どちらも純粋なセンターには力負けするものの、ウッドは身長的にビッグマン寄り、PJは体重的にビッグマン寄りなウィングといえます。どちらかといえばっていう話ですが、要は大体同じ体の二人なわけです。にも関わらず二人のオン/オフのDEFレーティング差がPJは-1.5、ウッドは-2.9と約二倍の開きがあるのか。ちなみにどっちもマイナスであることは目を瞑ります。

 二人のディフェンスの差はぶっちゃけヘルプ&ローテが出来るか出来ないかでしかないんですが、これが途轍もなく大きい差なわけです。PJはヘルプディフェンスでドライブコースを絞りつつ、パスが出たらすぐに追いかけられます。

23-24 PJディフェンス移動速度 3.82

22-23 ウッドディフェンス移動速度 3.73

 ということでPJの方がディフェンスでよく動いています。3.82と3.73という数字自体は大きな差ではないんですが、二人の出場時間の違いを考慮すると明確に違いがあるところです。

 ここまではPJとウッドのディフェンスの違い。言い換えると気が利くか利かないってことなんですが、それはオフェンスでも違いを作っているところです。

 

■スリップアクション

 キッドがオフェンス面で重要視しているのがスクリーンからのスリップアクション。ドンチッチ→スクリーナーへパス、スクリーナー→シューターへパスか1on1で点を取るみたいな形のことです。

 このスリップアクションはP&Rのカウンタープレーとして有効に働きます。スクリーンに対してディフェンスがハンドラー側に寄り過ぎると、スリップしたスクリーナーがミスマッチの状態でペイントエリアの1on1に持ち込めるし、数的有利が生まれるのでキックアウトパスでワイドオープンのスリーに繋げることも出来ます。だからといってスリップを警戒し過ぎてハンドラーへのプレッシャーが落ちると、シンプルにスクリーン→プルアップスリーが打ててしまうと、守る側としては一瞬の判断を求められる厄介なプレーです。

 スリップアクションからの展開っていうのはディフェンスにとって判断が難しいプレーであると同時に、オフェンスとしても難しい判断を迫られるプレーでもあります。プルアップで打つか、パスをするかの判断を一瞬で求められるし、スクリーナーはパスを貰える位置にいないといけないし。ただそこはさすがのドンチッチ。スリップアクションでダブルチーム気味にこられても冷静にパスを捌くし、捌く為のパスコースを幾つも用意しています。かといってそっちに気を取られ過ぎていると感じたらプルアップでガンガン打ってくるし。

スリップアクション=ドンチッチの能力と相性が良い

 今となっては割とどのチームもやっているプレーではありますが、ドンチッチほどこのプレーと相性が良いチームもないだろって感じです。で、カーライルがHCだった時はこのプレーが今以上に活発でした。クリバーがパスの中継役になっているシーンは大体この展開の時だったしね。

 で、キッドはこのスクリーナー役にウッドを使っていました。そして全然上手くいきませんでした。スリップアクションを成立させる要素には「パスの貰い方」と「貰った後の判断」があり、前者はドンチッチの個人技で解決してくれました。ただ貰った後の判断が遅いし悪かったウッド。目の前にディフェンスがいない時は気持ちよく飛び込みますが、一人でも誰かついていると途端に困り出しました。困りに困ってキックアウトパスを出すけど、判断が遅すぎて数的有利が解消されていたり、何ならウッド自体にヘルプが来てボールをもぎ取られたり。

オンコートTOV% 12.8%

オフコートTOV% 11.9%

 そういう事情からか、ウッドがいる時はターンオーバーがやや多くなりました。ディフェンスでもそうでしたが、総じて頭を使うプレーが軒並みダメそうなウッドと、オフェンスでもディフェンスでも素早く的確な判断を求めるキッドなので、まあ相性は最悪と言っていいでしょう。救いがあったのは困っても個人技でギリギリ誤魔化せたことと、スリーはちゃんと上手かったことかな。

 

 なぜここまでウッドの話をしているかというと、PJを見ているとウッドを思い出したからです。背格好が似ているし。背格好は似ているのにやっていることは真逆だから面白い。

 PJが加入してから、徐々にスリップアクションからボールを渡す形を増やしたキッド。同じ形でボールを渡すと迷わず1on1を仕掛けるし、キックアウトパスの判断も早い。ボールを貰ってから平気で3秒ぐらいぼっ立ちして、そこからドリブルを突いて1on1を仕掛けだすこともあったウッドなので、ギャップが凄いです。その1on1もフィジカルの強さ以上に多彩なステップワークとシュートで駆け引きするタイプなのでここもウッドと違うところです。ウッドは無理やり突っ込んで無理やり決めるのでシューティングファウルも多かったのに対し、PJはフックシュートを駆け引きの道具にして自分のシュートを打ち切ることを大事にしている印象です。そのフックシュートを左手でも打てるから器用だよね。こう書くとPJの方が明確に優れているように見えるんですが、そうとは言い切れないのが難しいところです。

ウッド2P 4.3/7.3(58.9%)

PJ2P 2.7/4.5(60.0%)

 連携というところでは最悪だったウッドですが、連携が上手いPJと2Pの確率はそれほど変わりません。フリースローを加味すると寧ろウッドの方がちょっと良いようにも思います。つまり個人技でどうにかしていたってことです。それを考えるとちょっと物足りない気がするPJ。ちなみにPJの数字はマブスに来てからの数字。

ウッド3P 1.6/4.2(37.6%)

PJ3P 1.7/5.6(29.9%)

 スリーに関しては明確にウッドの方が上手いと言えます。というかPJの3P%が年々下がっているのが謎。謎っていうか、起こっていることはアテンプトは年々増えているけど成功数は変わっていないっていう現象なんだけど、なぜそうなっているのかが分からない。入らない時は平気で横にズレまくるので、そもそも技術として確立しきれていないのかなーって印象です。

 ボディフレームはほぼ一緒、なのに色々な意味で真逆のウッドとPJ。ウッドは総じて判断力が伴うプレーはダメダメだけど、それを誤魔化せるぐらいの個人技とスリーの上手さがあります。対するPJは判断の早いプレーと多彩さが持ち味だけど、個人技っていう部分ではちょっと物足りなさがあるし、スリーは入らない。

 ウッドを見ていた時は「もっと判断が早ければなー」と思っていました。で、いざPJが入ると「ウッドみたいな強引さがあればなー」と思うわけです。管理人的にはPJはかなり期待しているし、キッドも相当気に入ってそうです。ただやっぱりスリーの確率が気になるところで、PJ+センターの形にした時にスペーシングがかなり不安。そのセンターをクリバーにして解消させようとしていますが、クリバーも入らないからな。ある意味オフェンス面ではウッド以上に采配の難しさを感じる選手です。