あ♥@マブスファン

マブス専門NBAブログ(不定期)

【雑談】ダニエル・ギャフォードの33連続FG

 

 33本連続FG達成という偉業を成し遂げたギャフォード。連続FGの歴代記録はウィルト・チェンバレンの35本だったので本当に惜しかった。記録があるところにはどこにでもいるなこの人。

 連日FGを100%で決めていたギャフォード。一方で彼がコートにいる時のオフェンスはかなり苦しさを感じていました。本人のシュート効率は良いのにね。

直近15試合ギャフォード

オンコートOFF/DEFレーティング 112.7/113.4

オフコートOFF/DEFレーティング 121.4/113.2

 とはいえこんなに苦しいかね。精々下がっても5ぐらいのものかと思っていたけど、レーティング差は8.7でした。直近15試合でフィルターを掛けると、ギャフォードがコートにいる時間のオフェンスはリーグ18位、いない時間はリーグ2位です。その分ディフェンスで強みを作れているかと言われるとそうでもないし。ちなみに15試合っていうのは、ギャフォードがマブスに来てちょうど15試合経ったから。以降の数字は断りがない限り全て直近15試合のものです。

オンコートTOV%/EFG%/TS% 14.7%/55.6%/58.4%

オフコートTOV%/EFG%/TS% 10.7%/59.7%/62.5%

 ギャフォードがいる時間はTOV%、EFG%、TS%のどれもが悪化しています。まあEFG%なんかは「シュートタッチが悪い」で無理やり片付けることが出来なくもないんですが、TOV%に関してはちょっと見過ごせない。元々リーグトップレベルにターンオーバーが少なかったマブスなので、明らかな異変と言えるでしょう。

オンコートFG%/3P% 49.4%/29.8%

オフコートFG%/3P% 51.7%/40.6%

 で、見過ごすつもりだったFG%と3P%。ギャフォードがいる時の2P%は63.4%とさすがの高さですが、割に合わないぐらいスリーを外しまくっています。シュートが外れるからOREBが多いわけだ。これらをまとめると、

・ギャフォードがいる時間はターンオーバーが多い

・ギャフォードがいる時間はスリーが入らない

 これらの要素がOFFレーティングの悪化に繋がっているといえます。なんで? っていうと彼がマブスに来た時からずっとそうだったんですが、ポジショニングの悪さだよね。

 

■ギャフォードのスコアリング能力

 ゴール下のシュート、というかダンクを驚異的な確率で決めることが出来るギャフォード。今シーズン全体での話ですが、ゴール下で平均2本以上シュートを決めている選手の中でギャフォードのFGは75.8%でリーグ5位です。ちなみに1位はジェームズ・ワイズマン、2位はライブリー、ジェイレン・スミス、ケビン・デュラントと続きます。その5選手の中で最もアテンプトが多いので、まあ微々たる差です。

 一方でゴール下のシュート以外に武器になるものがないギャフォード。制限区域内のシュートを今シーズン73.6%で決めているのに対して、ペイントエリアのシュート、所謂プッシュショット系になると47.4%まで確率が落ち込みます。とはいえそんなに悪くはない。だからシュート自体はそこそこ上手いんだけど、問題はそれを活かせていないってこと。

 マブス加入直後のギャフォードはペイントエリアで押し込めずにフックシュートを打って入ったり入らなかったり、みたいな何とも言えない感じでした。だからゴール下のシュートを増やしてほしいと思っていたんですが、それはあくまで自らショットクリエイションして欲しいってことでした。それをパスで解決しようとしているのが今のマブスです。

 スクリーンからのダイブでいち早くゴール下に走って行くギャフォード。そこでパスが通れば楽に点が取れるわけですが、そう簡単にやらせてくれるはずもなく。大抵のチームはハンドラー→ギャフォードへのパスコースを潰すようにポジションするし、パスを通されたとしてもノードリブルでダンク出来るような位置に来させないようにペイントエリアから押し出そうとします。サンダーはガードの機動力と、サイズの割にフィジカルが強いディフェンダー集団でこれを成り立たせていました。ウォリアーズはポジショニングが広すぎてギャフォードにフリーレーンを作りまくっていました。ブルズはハナから無抵抗だった。

 そういう風に守られてパスが通らないとギャフォードはダンカーズスポットに立つんですが、あまりにもパスを貰いたさそうにしているわけです。そもそもダンカーズスポットにセンターが立つシチュエーションっていうのは、ただでさえ5アウトに比べてドライブしづらいのに、その上でノードリブルでダンク出来る位置に来られると窮屈なんてもんじゃない。必然的に2Pが全体的にタフショット気味になるんですが、それでギャフォード以外の2P%が57.9%なのはエースの強さとしか言いようがないです。

ラインナップOFF/DEFレーティング/TOV%

ドンチッチ&ギャフォード 111.7/107.1/14.2%

カイリー&ギャフォード 108.2/117.7/14.7%

ドンチッチ&カイリー&ギャフォード 107.4/110.2/14.0%

 一番割を食っているのがカイリー。シーズン全体で見るとカイリーのオン/オフコートでのNETレーティングは4.0/-1.2なのでカイリーがいないと苦しいって数字でした。ただギャフォード加入以降は1.9/12.9と、カイリーがいない方が圧倒的に楽っていう数字に。いてもプラスだからまあ悲観するほどではない。インサイドのスペースがなくなって確率の悪いミドル中心になったっていうのはなんとなく分かるんだけど、ディフェンスがどうした? って感じの数字なのが気になります。

 

 ゴール下でボールを貰えれば無双できるけど、そう都合よく渡すことが出来ないのがギャフォードがいる時間の苦しさ。で、ゴール下でボールを貰おうとリングに近いところでもがくから、余計にドライブしづらくなって苦しくなるっていう悪循環。

ライブリー

オンコートOFF/DEFレーティング 121.6/115.8

オフコートOFF/DEFレーティング 114.3/115.6

 一方でFG%でいえばギャフォード以上に優れているライブリー。その彼がいる時間は真逆の数字を残しています。同じセンターなのにこうも違うのか。

ラインナップOFF/DEFレーティング/TOV%

ドンチッチ&ライブリー 131.2/116.0/10.2%

カイリー&ライブリー 121.4/120.2/10.2%

ドンチッチ&カイリー&ライブリー 126.6/121.7/10.9%

 気になるのはTOV%の低さ。ライブリーがいる時間は極めてTOV%が低く、リーグトップに躍り出ます。まあチーム歴の差といえばそうなんですが、11月のドンチッチ&ライブリーは13.1%、カイリー&ライブリーは11.3%。チーム歴どころかリーグ歴が一か月程度の時点でこの数字と考えると、ねえ。

 

■引き出しの多さ

 ライブリーとギャフォード、二人の違いといえばこれ。デビュー戦からワイドにパスを捌ける視野の広さがあったライブリー。スリップアクションからボールを貰ってコーナーにパス→スリーっていう展開は、他チームにとって驚異的ですぐに対策されました。で、今のライブリーは同じシチュエーションから1on1で点を取りに行くことが増えました。

ライブリーのフックシュート 18/33(54.5%)

 これはシーズン通しての数字。サイズと柔らかいシュートタッチを活かしたフックシュートは止められない武器になっています。その上でディフェンダーと駆け引きしながらパスを捌けるので、あまりにも優秀過ぎます。ウェンビーがいなかったら余裕で新人王だろ。じゃあギャフォードはどうなのかというと、

ギャフォードのフックシュート 19/34(55.9%)

 寧ろライブリーより良いんだよね。ということでシュートタッチの柔らかさに有意差はない。ちなみにフックシュートを引き合いに出しているのは、あくまでシュートタッチの比較の為だけで、それ以外の理由は特にないです。

 ペイントエリアでの柔らかいシュートタッチを持っていて、その上でライブリーに及ばないまでもサイズがあるんだから、ここの差がOFFレーティングに影響しているとは考えにくい。というかそれ以前にギャフォードは

そもそも1on1を仕掛けたがらない

 ギャフォードはそもそもハイポスト近辺のプレーを避けている印象です。最初の数試合、妙にハイポストでボールを要求しないし、貰ってもゴール下まで押し込むことなくフックを打ってしまう。そんでもってドンチッチを置き去りにしてダイブしてパスを貰おうとしている場面が目立ちました。自分のゴール下での得点力に自信があるのは良いんだけど、それに固執し過ぎているのがオフェンスのリズムを崩しています。ゴール下で貰いたがるっていうのは自分の得点力への自信からか、ゴール下以外でのプレーに自信がないことの裏返しなのか。誰でも自分の得意分野で戦いたいっていうのは理解できるし、それがずっと出来るのが理想なんだけどね。

 で、ここがライブリーを評価できるところでもあります。ライブリーはゴール下での確率がギャフォードと遜色ないレベルですが、それに固執せずにあらゆる役割をこなそうとしています。若いし、自分の力を誇示したがってもおかしくないのにね。出来るけどやり過ぎないライブリーと、出来るけどやり過ぎなギャフォード。言い換えるとエゴのないライブリーとエゴイストなギャフォード。

 今のマブスは「ゴール下のギャフォードにパスを通す」オフェンスなんですが、これが簡単にはいかなくて困っています。トップからゴール下にパスを通すのと、ハイポストに通すのでは単純にパスの長さが違うし、パスが長くなればなるほどカットされやすくなるし。カットされないパスを出す為には精密さと確実なポジショニングが必要になるので、ギャフォードの得点っていうのはパサーの能力に依存します。サンダー戦とか何回ギャフォードへのパスのところでターンオーバーしたかって感じです。

ドンチッチからのパス FG 2.1/2.8(74.4%)

カイリーからのパス FG 0.5/0.9(58.3%)

THJからのパス FG 0.6/0.8(72.7%)

 ここでもドンチッチのアシスト能力が冴えるわけです。THJはどうしたって感じ。ギャフォードのスコアリングを上手く活かしているドンチッチですが、活かした上でこのOFFレーティングだから、まあ苦しいよね。

 

■スリーの不調

 ギャフォードがいる時間はスリーが入らないという数字を「シュートタッチが悪い」で片付けるのは簡単ですが、それもおかしな話ではあります。いない時間の3P%は40%を超えているからね。特定の選手が入るだけでシュートタッチが悪くなるってちょっと考えにくい。ということでそれ以外の理由がありそう、というかあります。

 ギャフォードがゴール下にポジションすることでハンドラーのドライブスペースがなくなると、いざドライブを仕掛けた時にゴール下まで侵入出来ず、ペイントタッチ出来るかどうかぐらいの場所で止められます。そうなると十分にディフェンスを収縮出来ず、キックアウトパスを出しづらくなります。出せたとしてもワイドオープンを作れないので、無理やり打って外してしまう。

ゴール下→3Pの連動を生めていない

 最近はスリーを有効に打つ為に、ギャフォードをスクリーナー兼OREB役にしてシューターに打たせるセットなんかを使っています。これがTHJのパスがギャフォードに対して有効に働いている……かはよく分からない。何なんだ君は。ただこれも結局3Pラインでボールを回し続けているってことなので、それこそシュートタッチの要素が強くなりがちです。外れた時のケアをギャフォードのOREBで補おうとしていますが、毎回取れるわけでもないしね。付け焼刃って感じのセットです。

 ここでちょっと視点を変えてみましょう。ハンドラーがドライブするスペースがないなら、最初からギャフォードに使わせればいいじゃん。ゴール下に渡すのは難しいけど、ハイポストになら比較的安全に捌けるから、

ハイポストでギャフォードに渡して、突っ込ませればいいじゃん

 そしたら今みたいなターンオーバーは減るし、ギャフォードのゴール下は強いし、ハンドラーは楽できるし、一石三鳥じゃん……とは思うんですが、そこが上手くいっていません。ハイポストでパスを中継する時の判断がちょっと遅く、中々ワイドオープンを作れず時間がなくなってしまいます。まあウッドの二倍ぐらいは早いけど。でもウッドみたいに個人でガンガン点は取ってくれない。こう書くとPJと悩みの種は似ているんですが、PJは物足りないのに対し、ギャフォードはそもそも仕掛けられないので全く違う悩みです。

・ゴール下へのパスでミスが多い

・ワイドオープンを作れない

・ドライブが出来ない

 ここら辺がギャフォードがいる時間のオフェンスの課題。これら全てに「ゴール下で貰いたがり過ぎる」ギャフォードのポジショニングが関わっているので、プレーエリアの整理が必要だと感じます。現状ハンドラーとギャフォードでゴール下のエリアを奪い合う形になっているし。

 ドライブコースを確保してからのダイブ、又はドライブコースを作るスクリーナーになるようなプレーがオフェンスの伸び代って感じです。スクリーンの分厚さはペイサーズ戦でネムハードに効きまくっていたから、充分強力な武器になります。

 もしくはゴール下よりも安全にパスを貰えるハイポストでのプレーを増やすか。これが管理人的には本命です。増やすっていうか、

ハイポスト→ゴール下に自分で運ぶ

 言い換えると「ハイポストで1on1しろ」ってことです。この距離をパスでどうにかしようとしているから上手く行っていないわけで、ギャフォードが自分で何とかしてくれたら何の問題もありません。幸いその駆け引きに使えるぐらいには柔らかいシュートタッチがあるわけだし。ドンチッチもパスを捌くだけでいいから楽できるしね。

 現状ギャフォードのハイポストでのプレーは①ワンドリブルからのダンク②フックショット③パスの概ね3つ。ワンドリブルからのダンクはフリーレーンになっていたら気持ちよくやってくれるんだけど、一人でもディフェンダーがいたら途端に消極的になります。そうなるとフックショットを打ちがちだし、駆け引きせずに打とうとするからヘルプも来ない。来ても適切には捌けていない。

 多少強引でもいいから自分で突っ込んで思い切りダンクしてほしいんだけど、そうやってドリブルをつくとポロッと落としちゃうこともあるギャフォード。上手くいかないね。

もっと自分で頑張れ

 言いたいことはこれです。超単純。もっと自分から駆け引きに持ち込め、もっと積極的に1on1しろって感じ。難しいのはドンチッチが凄すぎて、ロールプレイヤーは時に何もしなくても簡単に点が取れちゃうんだ。それが所謂ドンチッチ依存に繋がるわけです。ドンチッチも自分で何でもやりすぎてしまうフシがあるし。

 おそらくウィザーズでは自分の1on1で駆け引きするようなプレーをやってこなかったんだろうね。PJとかはマブスに来た時からやっていたし。だからそもそも慣れてなさそうなギャフォードです。ただ1on1で駆け引きする能力ってあと一ヶ月かそこらで解決できる課題なのかね。

 そういう経緯から、今のパスと苦しいドライブ中心のオフェンスを展開していそうなギャフォードの時間です。これで懲りずにゴール下に籠もり続けられたら困るんだけど、ここ数試合はハイポストでボールを貰ってシューターへパスを出そうとキョロキョロしているシーンが多いです。ということで向上心は感じます。それがいいよね。口先だけならなんとでも言えるけど、プレーにちゃんと表れているから。毎年のように進化し続けるNBAで、一番必要なのは向上心だと思っている管理人なので、それが伺えるギャフォードにはそこそこ期待しています。オフにどのぐらいレベルアップ出来るかが、一巡目指名権を出すに値したかの評価基準かな。

 

 

■余談

 余談ですが、管理人がドンチッチと最も相性が良いと思うビッグマンはバム・アデバヨ。オフェンス面もそうですが、ビッグマンのサイズで広い範囲をカバーできる守備範囲の広さが、動きたがらないドンチッチと上手く補完出来そうって意味で。

 ただ「オフェンスでの相性の良さ」って考えると、モントレズ・ハレルが凄く気になります。1on1のスコアリングが特徴というレアなビッグマンで、そのスコアリングっていうのが正面からのドライブっていうのが魅力的です。ロールマン+1on1能力、このどっちかしかないのが普通なんですが、どっちもあるのが良いんだよね。ただリーグにはもういないっていう。今だと近いのは八村とかなのかな。P&R出来るかは知らないけど。